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42. アートフォーオール 1

変わらないでいるためには変わり続けなければいけない。そんな禅問答のようなことを、最近考えている。
それは前回、変わっていくことと変わらないこと、そして変わらない人への憧れについて触れたが、ちょうど岡本仁さんの展示「編集とそれにまつわる何やかや」を見に行き、それに合わせて発行された「ART FOR ALL 20」を購めると同時に、「続々果てしのない本の話」を買っていなかったと思い手に取り、岡本仁さんのことや本のなかで触れていたことについて考えを巡らせていたからだった。

本の雑誌社から出た最初の「果てしのない本の話」はすぐに買って読んでいたが、話題としては岡本さん入門編といったところで、あまり印象に残らず手放していた。また「続・果てしのない本の話」はパピエラボからの小部数での発行だったため買う機会がなく、それに続く「続々果てしのない本の話」も出たことは知っていたが何となく買いそびれてしまっていた。それであらためて読むと、本を主題とした話を数珠繋ぎに続けていく方式に加えて、最近の関心事に過去の出来事を混ぜる書き方が増え、円熟味を感じた。自分でもそうだが、いま興味を持って調べていることが、過去に繋がるほど嬉しいことはない。
そのなかでも頷きながら読んだのが、須賀敦子からモランディに行き、モランディから河原温やドナルド・ジャッド、そしてモネの共通点を見出すところで、つまるところそれが、東京ステーションギャラリーでのモランディの展覧会名である「終わりなき変奏」ということなのかと感じ、色々と考えていたことが腑に落ちていく想いだった。
岡本さんはそれについて深掘っていくわけでも、結論を出そうとするわけでもなく次の話題に移っていくが、書かれていないところで、自分なりには答に近いものを得ているのだろう。そんなふうな疑問や発見をそのままのかたちで提示しつつ、自身でも考えながら動き、また次の事柄に出会っていくというスタンスが、岡本仁という存在を知ってからというもの、全く変わっていないことを再確認したのだった。

今回の「ART FOR ALL」は20号目で、大切に取ってある1号目を見ると2009年10月25日発行となっている。岡本さんの鹿児島についてのエッセイと、どうして人はアートを買うのか、と題するインタビューの第一回として松浦弥太郎さんに話を聞いていて、まさしく疑問から発した連載になっている。ここ最近は手に入れられていなかったけれど、この連載は続いているのだろうか。ただその20号も、いい絵って何だ?、というテーマになっており、ART FOR ALLという言葉がrelaxのアートページのタイトルだったころから、絵やアートにまつわる疑問を今でも持ち続けているのだろう。

自分のことでいうと相変わらず本のことで、ここ一年の本棚の経過を見ると、30冊くらいがあらたに並んだ。単行本と文庫本合わせて600冊ほど入る本棚のため、二十分の一が入れ替わったことになる。並んでいた本は選りすぐりのものではなかったのかと思うけれど、あらためて点検すると、好きな作者だけれど読まない本を揃えていたり、何となく珍しい本を置いてあったりするので、あらたな読み返したい本と比べると、思い切って脱落させるものもあった。
そのような変化は傍目から見ると、ほとんど変わりなく思えるかも知れないが、変わり続けているからこそ、新陳代謝のように生き続けられていて、その本棚というのはまさに自分自身とさえ言い換えられるものだと感じている。

#本  #古本 #岡本仁

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