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ブランディングとは何か、そしてそれがサービスの成長にもたらすものは何か

この数年悩みに悩んだ「ブランディング」という言葉について書いていきます!(いまだに悩んでいる)

■ なぜこれを書き始めたのか
「ブランディング」と「数値的成長」は相反するものとして語られることが割とある気がしています。でもそこにはなんとなくの違和感がありました。普通に自分が良いブランドだと思うもの買いたいですもんね。
そしてCreemaへジョインする際、ブランディングに課題があると考えいろいろ取り組んでみました。けれどここまで成果の出た施策は僕が入社当初に思い描いていたブランディング施策ではありませんでした。
走りながらいろいろと考える中で、ブランド関連の本もいろいろと読み漁り、特に「ブランディングの科学」が参考になり、だんだんと定義がクリアになってきました。そのあたりを踏まえて、ブランディングの個人的定義、そして事業成長との相関性について整理していきたいと思った次第です!

■ 先に結論を言うと・・・
・ブランドとは、競合サービスの存在を前提においた「独自性」のこと。
・踏まえてブランディングとは「ユーザー課題にヒットする独自性を作るためのあらゆる活動」。
・ブランディングの成果を明確に数値化することは難しい施策もあるが、「どの指標にヒットするか」はわかる。そこから逃げてはいけない。

■ まず「ブランド」とは何か
ブランドという言葉の語源を紐解くと、もともと古代ケルト語のbrandor(焼印をつけるという意味)に由来しているとのこと。家畜につける焼き印、個体識別子のようなものです。つまりユーザーがどのように認識しているかという「認知形成」そのものと言い換えることもできます。
当たり前ですが「良い感じのデザインのものを出す」「共感を生む発信をする」というのはそのための手段でしかないということです。(僕は広告会社出身だったのでここに目が行きがちだったんですが・・・)
例えば良いデザインでなくてもユーザーにとって「お得」という確固たるブランドを作っている楽天やドンキホーテのような事例も存在していますね。

■ ブランディングの定義とその事例
ブランドが独自性であればブランディングは「独自性を生み出すための活動」だとします。そうするとあらゆる手段がありますが、切り口を一旦4つにわけて整理してみました。3つ目に記載する「コミュニケーション」に目が行きがちですが、前提となるビジネスモデルやプロダクトの部分もユーザーにとってみるととっても大きな「独自性」になりますね。(例は僕が今いるIT業界を中心に、自社の話は抜いて...)

1. 経営戦略
・ポイント経済圏の構築により、圧倒的なコストメリットを享受できるようなサービス構築している楽天。
・物流網の構築により、圧倒的なスピードメリットを享受できるようなサービス構築をしているAmazon。

2. プロダクト
・痒いところに手がとどく販売者向け機能設計により、利便性を提供しているBASE。
・綿密なセキュリティ対策により、圧倒的安心感を構築しているBitFlyer。

3. コミュニケーション(世界観的な考え方も含む)
・企業の独自性を謳ったメッセージ「Think Diffrent」を、企業の正念場で大規模に発信し、アーリーアダプターを獲得したApple。
・共感性の高い生産者のこだわりやストーリーを軸にユーザーを増やす北欧暮らしの道具店。
・その他世界観で人を惹きつけるさまざまなD2Cブランド

4. ビジネスモデル
・「その手があったか!」というビジネスモデルやマネタイズ手法は、それだけでブランドになることがあるかなと。
・僕が好きなのはテレビに孫の動画や写真を写すことができるプロダクトを提供し、その通信料で儲けるまごチャンネル。古いですがグルーポンとかもそういう感じでしたよね。

つまり、ブランディングに本気で取り組もうとすると、その手段となるものを経営の視点で俯瞰的に網羅し選択肢を洗い出し、市場を冷静に見極め、独自性が構築できるファクトを探し、そこにフォーカスを当てて本気で突っ込んでいくことが必要なわけですね。
もちろん手段はひとつではないのと、積み上がりも存在するはずなので、いろいろと手を出したくなってはきますが。スタートアップとなれば尚更選択と集中が物理的に求められてくるはずです。


■ コミュニケーション領域のブランディングにおける成果指標
経営戦略やプロダクトは特にオンラインだと一定成果指標が出しやすいので割愛しますが、手段として「かっこいいものをつくる」とか「良いことを言う」みたいなコミュニケーション領域のブランディングになると、どうしても効果が測りづらいので悩ましいところですよね〜。なのでビジョンだとか文化だとか長期的成長だとかそういう言葉を盾にあまり気にせずやるというのもまぁ往々にして起きることとしてあるような気がします。しかし成長を志す会社が何かしらのコストをかけてやる時点でそれは間違っていると考えています。

例えば僕のTLでは議論になっていたそごう西武の広告。もはや1年以上前ですが、これは「良い」と「悪い」が真っ向からぶつかっていました。この広告でどのような指標が上がるか考えてみましょう。

●広告そのもの
-- オフライン
 ・広告接触者数
 ・来訪意向の変化
 ・経由来訪者数
 ・来訪者の買上率、単価、LTV予測値
-- オンライン
 ・SNSの各種指標
 ・ECサイトへの来訪者数
 ・指名検索数推移

●その他事業への影響(やったことないんで超想像ですが)
 ・バイヤーの商談成約率
 ・離職率、内定受諾率の変化とそれに伴う採用コストの改善
 ・テナント店舗の継続率

独自性の担保によって上がるであろうこれらの指標の前後比を網羅的に見ておく、ということが必要です。当然いろんな外部環境の変化で変わるでしょうから正確な数値算出は不可能ですが、良いブランディングコミュニケーション施策であればこれらが前後比で多少は上がるはずです。で、かけたコストや他の候補施策と比較すると。

1年前のそごうの話でいうと、正月の新聞広告で朝日+地方紙+店舗内展開とのことなんでおそらく数千万以上はかけている中、あらゆる指標に一気にアプローチできるというスピードは良いかもしれませんが、どうなんでしょうね。繰り返しやる体力がないのであれば、他にも選択肢がいろいろとあったんじゃないかな、という気はします。

■ そうなったときの前提
計測可能である状態であることは大事ですね。これを整理してからブランディングに取り組むのが理想なのかなと。
言い換えるとこれからDXが進めば進むほど、ブランディングもやりやすくなる、逆に変なブランディング施策は淘汰されていくということかなぁと思ったりしています。住み良い世界ですね。

■ 最後に
僕がこの記事を通して何が言いたかったかというと、「ブランディング」を独自性を生み出すためのあらゆる活動という定義とすると、その手段はコミュニケーションだけではない。きちんと市場や事業を俯瞰した上で打ち手を選び、その効果を粒度粗くても可視化することから逃げずに頑張ろう、ということです。当たり前のことですが、なんとなく僕のTLにはこの認識に断絶がある気がしていたので、書いてみました!(断絶をなんとかしたいってわけではないw)

ちなみにこれ、めちゃくちゃ企業フェーズや業態によるので一般化するの結構むずかったんですが、
我々のようなプラットフォーム型のビジネスだと二方向に気を使わないといけずもっと難しくなる(=やりがいがある)と思っていて、その話は長くなるのでまたの機会に...


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