「タモリステーション」監修後記
2024年8月17日(土)、テレビ朝日系の番組「タモリステーション」で、「時代をつくった!昭和のCMソング50」という特集が放送されました。
わたしは、この番組に企画段階から関わっていました。
制作会社から最初に連絡が来たのは、ゴールデンウィーク明けのことでした。そこから約3か月、スタッフのみなさんに、CMソングの歴史をレクチャーするところから始まり、企画書の吟味、改善の提案、使えそうな資料の探索と報告、いくつもの作業を繰り返して、少しずつかたちにしていきました。
制作会社のみなさんは、番組づくりに対して非常に誠実で、ていねいに作業を積み重ねていく方々でした。私も彼らを信頼して、できるかぎりのアドバイスと協力をおこなったつもりです。
いろいろと大人の事情があるようで、あと一歩で実現しなかった切り口や、ギリギリで却下されたCMソングもありましたが、おおむね、思い描いていたとおりの番組ができあがったと感じています。
ご覧になったみなさま、いかがだったでしょうか。
期待していたCMソングが取り上げられずに、ガッカリしたこともあったかもしれません。どうかご容赦ください。私も、企画書段階では入っていたおススメの曲が、最終的に落ちたと知ったときはかなりヘコみました。
SNSで感想を検索すると、この種の番組の中ではちゃんとしているほうだったとか、新鮮味のある切り口だったとか、ポジティブな言葉がチラホラと確認できて、とてもうれしかったです。
視聴率も高く、若年層にも届いたとのことでした。めでたし。
わたしがこの番組を監修するうえで、とくにこだわったことが4つありました。
1.三木鶏郎を紹介するコーナーで、とびきり珍しい映像を使う。
これは、私がデータベース化に関わった、老舗プロダクション・TCJの映像からリクエストを出しました。具体的には「ポポンS」「明るいナショナル」「キリン・キリン」の3つです。放送を終えてから60年以上、倉庫に眠ったままだった映像を、今回ふたたび放送電波にのせることができました。
初代の「ハウスバーモントカレー」の映像もTCJで、これも珍しいと思ってリクエストしたのですが、既出でしたか?
TCJのデータベースについては、拙著『発掘!歴史に埋もれたテレビCM』に詳しく書いたので、ぜひご参照ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4334044263
2.1960年代を、大物作曲家の参入という切り口で整理する。そのさい、越部信義を含める。
3.1970年代前半のCMソングに、「ケンとメリー」(スカイライン)と「男の世界」(マンダム)を入れる。
このふたつは、完全に個人的な趣味ですが・・・ボツにならずに、オンエアまでたどりついて本当に良かったです。
マンダム「男の世界」は、この種の番組で取り上げられる機会は多いですが、CMソングという観点から取り上げるのは珍しいと思い、リクエストを出しました。
まさかのスタジオゲストがいとうせいこうさんで、ブロンソンファンのみうらじゅんさんを思ってニヤニヤしたかなあ、などと想像して、私がニヤニヤしていました。
4.小林亜星のコーナーで取りあげるレナウンは、「ワンサカ娘」ではなく「イエイエ」にする。
これは、マニアの方にしか通じない隠しネタをひとつ仕込みたい、という思いからです。
「イエイエ」はこれまで、ポップアート的な映像美ばかりが注目されてきましたが、あえて曲に注目するという、けっこうな変化球を投げました。「そっちかよ!」という、マニアからのツッコミをいただければ幸いです。
この番組をつうじて、ひとりでも多くの視聴者にCM史の魅力が届いていれば、これ以上の幸せはありません。
画面上とはいえ、タモリさんと共演できたのは一生の思い出です。なんだか、人生の目的を半分くらい達成してしまったような気分です。
ご視聴ほんとうにありがとうございました。