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心理的安全性の総量は増やせない、最適に配分できるだけだ。(追記あり)

*2020/10/26追記*
本稿で「心理的安全性」と書かれているのは「安心」のことなんじゃないか?定義が間違ってるんじゃないか?というような指摘をtwitter等で頂いてるのを散見して「なるほど確かに。。」と思っています。なんとなく響きで言葉を使ってしまったところや、思慮が足りない部分がありました。こうやってたくさんの人に読んでもらうと一人で悶々と考えてるだけでは詰め切れてないところを詰めていけるのがありがたいです。いつかもうちょっとよく考えた上で改稿したいです。

タイトルが本稿の結論で、これから書くのはなぜそう思うのか?ということなので、タイトルを読んで「うんそうだよね。そう思ってたよ」という人はここで読むのをやめて大丈夫!

心理的安全性という言葉の定義もなんとなくあやふやなんだが、ざっくりと「良いと思うことを良いと言い、悪いと思うことを悪いと言い、やりたいことをやりたいと言い、やりたくないことをやりたくないと言うことに躊躇が少ない状態」と言うことにする。

さて組織の中で上記の定義での心理的安全性を感じれてる人が少ない!やばい!心理的安全性を増やさなきゃ!と思ったりするんだけど、実は「組織」全体に心理的安全性を感じている人が誰もいないと言うことは少なかったりする。多くの場合には組織の中で心理的安全性が偏ってしまっている。もっと言うと安全じゃない状態、不安や予測不可能性があるところに偏ってしまい、そこがもたなくなって問題が顕在化していることが多い。

よくあるのは「中間管理職の悲哀」みたいな語られ方をするが、現場と経営層が不安や予測不可能性を「ミドルマネージャ」層に押し付けているせいで、ミドルマネージャの心理的安全性が著しく低くなっているが案外現場や経営層は安全性を享受していたりする。

また全ての不安や予測不可能性が現場に押しつけられている組織もあれば、すごく天真爛漫な雰囲気が会社を覆ってるが、実は経営層が全ての不安と予測不可能性を引き受けて絶望的な孤独と不安に苛まれている場合だってある。

社内のどこを見回しても全員が心理的安全性を感じられてない場合にはおそらく本来ステークホルダーのところにあるべき不安や予測不可能性が自社に押しつけられている。取引先、株主、顧客などを優先しすぎることによって、ステークホルダーを身の丈以上に安心させすぎていることによって、社内で吸収し切れないほどの不安と予測不可能性を抱え込んでたりする。

またもう一つあるのが事業がイケてなさすぎて「競合他社」を安心させすぎていることで本来競合他社が感じる分の不安や予測不可能性を自社が抱え込む羽目になっていることも多い。

何が言いたいのかと言うと「心理的安全性」を増やそう!と思っても、配分の偏りを直さなければ構造的に心理的安全性が低いところだけにアプローチしたところであまり効果は期待できないと言うことだ。

社会全体にある「心理的安全性」の総量は増やせない。だけどみんなで適切に分担すればなんとかやっていける。だからまず自社内でせめて特定のレイヤーや部署だけにそれが偏る構造を見直したい。

アメリカの有名な漫画「Peanuts」 ピーナッツ(スヌーピーが出てくるあの漫画ですね)の中のセリフで下のようなものがあります。

「安心って言うのは車の後部座席で眠ることさ。前の席には両親がいて、心配事はなにもない。でもある時突然その安心は消え去ってしまうんだ。君が前の席にいかなきゃならなくなるんだよ。君が誰かを安心させる側になるために。」

僕はこのセリフが大好きです。誰かの心理的安全性は誰かがささやかに不安や予測不可能性を引き受けていることで成立している。そして誰かを安心させる側に回ろうという気概を持つ人が組織に増えたら、きっと適切な配分が実現してなんとか機嫌よくやっていけるぐらいの心理的安全性が社内の多くの人に分配できるかもしれません。

その上で、ステークホルダーや競合他社と適切に不安や予測不可能性を分け合えるように事業を磨き、力をつけ、責任感ある交渉を重ねることで、そもそも社内に必要な心理的安全性の分配を増やす努力をする必要があります。

よく「成長は全てを癒す」と言うようなことを言われることがありますが、これもある意味ではステークホルダーや競合他社から適切に心理的安全性を取り戻して多少社内の分配が偏っていてもまあまあみんな持ち堪えられるくらいはそれが感じられる状態のことを言ってるんだと思います。

だらだらと書いてきましたが、社内でもステークホルダーや競合他社と限られた資源である「心理的安全性」を奪い合うのではなくて、どうやったらフェアに分けあえるのか、みんながお互いに「誰かを安心させる側」になれるのかを長い時間間かけて考えていきたいなと思います。

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