#41 科学的説明とは何か ~創造の方法学より~(2024/02/20)
創造の方法学、第3章「理論と経験とをつなぐ」では、個々人の頭の中の映像と現実とのギャップがなぜ生まれるのか、そして、そのギャップの埋め方について解説されていました。
第4章のテーマは「科学的説明とは何か」です。
原因と結果の因果関係を科学的に説明するための方法について理解できます。
〇ローソクの実験
燃えるローソクを逆さにしたフラスコで覆ってやると、間もなく焔が消える。驚くことに、焔が消えるとほとんど同時に、逆さにしたフラスコの管を水が急速に上昇する。
みなさんもこの実験をご存じでしょうか?
この簡単な実験には、科学的実験というものの基本的な条件がそろっています。
ローソクの焔が消えるという現象を「結果」とすれば、ローソクをフラスコで覆うという事実は「原因」です。
つまり、フラスコでローソクを覆うという行為があり、それに続いて今まで燃えていたローソクの焔が消えるという現象が生じます。
このような因果関係のモデルにおいて、「結果」を「従属変数」そしてこのモデルで何にも影響を受けず独立している「原因」を「独立変数」と呼びます。
ただの「結果」でなくわざわざ従属変数と呼ぶのは、因果関係を構成するモデルの要素を変数と考えることで、フラスコが無→有に変わることで、焔が有→無に変わるという関係を正確に表現できるからです。
〇因果法則を満足させる3つの条件
フラスコという独立変数の「無」が焔という従属変数の「有」と結びつくような実験によって示された関係を「因果法則」と呼びます。
この因果法則には重要な3つの原則(条件)があります。
1と2の原則はローソクの実験から明らかに出来ました。
3はフラスコの有無がローソクの焔の存在を決定する唯一の原因であることを証明するには、焔の存在に影響を与える他の条件に変化のないことを証明する必要があります。
この図のように温度、湿度、外気の性質に急激な変化が生じると、焔の存在に影響がある可能性を考えるなら、実験者はフラスコ以外の条件には変化が起こらないような工夫をする必要があります。
つまり、従属変数に影響を与える可能性を持つ他の変数の値が変化しないように統制する。あるいは他の条件が変化しないと仮定をおかなければなりません。
そのような変数はパラメターと呼ばれます。
このパラメターを含めて、因果法則を確定する条件を繰り返すと
という3つの条件を確立する必要があるということです。
ローソクの実験のような単純な実験では、この3つの条件を満足させることは比較的容易ですが、人間社会の研究においては非常に困難であることは想像に易いかと思います。
〇無作為化とマッチング
ここでは、2章で紹介された「イギリスの闘い」の話に戻って、人間社会の研究において3つの条件を満足させる方法を学びます。
という関係があり、映画を見せた後で新兵の態度の変化を測定することですることで2つの条件を確定することができます。
さて、問題は従属、独立の2つの変数を除いた第三の変数群が新兵の態度の変化という従属変数に影響を与えていないのをどのように保証するかです。
実験法で普通使用するのは、「実験群」「統制群」という出来る限り等質な集団をつくり、図のように事件群だけを独立変数の影響下におく方法です。
この場合、2つに集団を等質にするための方法として、無作為に被験者を選ぶ「無作為化」、重要な変数(例えば知能指数と年齢)を考慮して人為的に等質な集団をつくる「マッチング」があります。
この2つを組み合わせればより確実に等質な集団をつくれるでしょう。
このような実験群的方法を「状況操作の方法」と呼びます。
原理的には完璧な方法ですが、2つの理由で社会科学の方法としてはきわめて限られた方法となることには注意が必要です。
例えば近代化の流れなどの歴史的変化を対象とした問題には無力となります。
もちろん、実験法には論理的厳密性と人間の心理的研究に適しているという長所があります。
ということで、原因と結果の因果関係を論理的に説明する具体的な方法がよくわかりました。
科学的な実験に限らず、独立変数・従属変数・パラメターの関係を整理することで説得力のある主張に繋げることが出来そうです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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