文学探偵
3年A組探偵社の諸君。
本日はたまたま、たまたま他に案件がないので、
全員で一つの案件に取り組んでもらうことにした。
依頼は、
魯迅の『故郷』を読み解き、
皿を隠した犯人を特定してほしいというものだ。
依頼人は、
ヤンおばさんの子孫と、ルントウの子孫のお二人だ。
「自分たちはこの小説のせいで、
肩身の狭い思いをしてきたが、
真実を受け止める覚悟ができた。
いかなる真実であっても受け止めるので、
文学探偵として名高い、
3年A組探偵社に依頼することにした」
というのだ。
プロの探偵である君たちに、
改めて言うことではないが、
捜査のイロハを確認しておこう。
という形で始まるのが、
文学探偵という授業です。
科学捜査ができないこの案件では、
Aアリバイ
B動機
C状況証拠
について、複数の容疑者について調べ上げ、
捜査会議で、結論を出す。
ということで、下調べをし、
授業の最後に、容疑者を確認し、
最低2人について調書を書くことを宿題にします。
次の授業で、
捜査会議です。
今日は捜査の結果をすり合わせ、
依頼人に報告できる結論を出す。
Aアリバイ
B動機
C状況証拠
に加え、
D反証
がある場合は、遠慮なく発言するように。
と確認した後、
時系列を押さえ、
①ルントウ
②ヤンおばさん
③こどもたち
④「私」
の順で検討していきます。
容疑者は、
子どもたちから募り、捜査してもらうのですが、
⑤母親は、辻褄が合わないので割愛します。
①ルントウは、
A1人で厨房に立つ時間があり、
B生活が困窮していたので、
C生活苦のあまり行った可能性があります。
隔絶を感じる、筋通りの読み取りですが、
D「私」に対する裏切りをしないのでは?
D全部もらえるのになぜ隠したの?
など、議論が盛り上がります。
②ヤンおばさんは、
A毎日大きな家に来ているので、
いつでも隠す隙はあり、
B金持ちの物を盗むことに躊躇が無いので、
C手袋を盗んだ前科があり、
犬じらしを掴んで、走って逃げたことなどから、
可能性はあります。
D手袋の話は証拠にもなるが、
逆に、
皿を隠さず、盗んでしまえばいい、
などの反証にもなります。
こうして、
一つずつ検証していくと、
③「私」の可能性に気づいてきます。
そこでさらに盛り上がる授業になるのですが、
それはぜひ、
授業で生徒と議論を深めてほしいところです。
絶対の答えは出せないかもしれませんが、
話し合うことの意味を感じられるテーマです。
子どもたちは、
自分の仮説を証明するため、
改めて作品を精読します。
このテーマの議論自体は、
ありふれた授業かもしれませんが、
設定、雰囲気作りで、
子どもたちがのめり込んでくるのが楽しいので、
オススメです。
ちなみにイメージは
井上真偽さんの、
『その可能性はすでに考えた』です。
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