意味が分かると怖くない話

三人はすっかり暗くなった夜の学校の門を静かにくぐった。


明るいうちは生徒たちの声でにぎわう校庭もこの時間帯となっては物音ひとつせず、たまに吹いた風によって枯れ葉がカサカサと地面に引きずられるような音がしているだけだった。


「ねえ、やっぱりこわいよう、暗いもん」


洋平はあまりの怖さに腰が引けているようなそぶりを見せた。受験に失敗し心を病んだ過去を持つ彼は、そのデリケートさゆえ暗い道があまり好きではないのかもしれない。


「いまさらなに言ってんだよ」

「そうだよ洋平。ビビるような暗さじゃないだろう」


そういって駿一と佑都は笑った。




3人はひどく不気味な雰囲気を醸し出す校舎の中に入っていった。靴を履き替えていると、下駄箱の奥、誰もいない教室の中が少し見える。電気がつけっぱなしのようだ。


「ひゃあ、誰かいるぞ!」


中をのぞいた洋平は腰を抜かす格好をした。ところが駿一と佑都は全く驚くそぶりを見せず、洋平にこう言う。


「そりゃあ、そうだろう」

「いつものことじゃないか」


二人は、まるで夜の教室に人がいるのは当然だといった対応をし、また声をあげて笑った。静かな校舎内に二人の不気味な笑い声が響き渡る。


「そんなことより今日の俺のシゴトは、とっても大変だったんだ…」


佑都が言ったその時、授業開始を告げるチャイムが急に校内に鳴り響いた。どんよりとした真っ暗な廊下に数秒間の余韻が残る。


「いっけねえ、始まっちまう」

駿一は作業服のまま廊下を走りだした。佑都と洋平も慌てて付いていく。



深夜九時。今日も授業が始まる。


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