第18球 プロ野球選手の少年時代 内野手編1

 皆さま、こんにちは。北海道レインディアの岩川 恵流(いわかわ めぐる)です。戸山さんからのご指名で、今回のエッセイは僕が担当します。
 戸山さんとは、僕の姉と戸山さんのお兄さんが夫婦という繋がりがあり、プロ入りする前から家族ぐるみでの親交がありました。戸山さんとはリーグが違うので、なかなか対戦する機会はありませんが、塁に出たときは盗塁を刺されないようにしたいですね。あの肩はすさまじいですから。

 それでは、僕の少年時代のお話をしていきたいと思います。僕は、父がサッカー選手だったこともあり、小さなころはサッカーをしていました。しばらくは楽しくやっていたのですが、ある時気づいたんです。僕って、シュートが下手くそだなと。子供なんだから下手くそでも、ずっと続けていれば上手くなるはず。そういう考えもなくはなかったのですが、父のシュートをたびたび見ていて、僕には無理だと思っちゃったんですよね。元プロのシュート見たらそりゃそうだって話なんですが、そこで父より上手くなってやる! という思いには至らず、僕は次第にサッカー以外のスポーツもするようになっていきました。

 父は、野球をするのは苦手だと言っていましたが、見ることは好きで、たまに球場に連れて行ってもらっていました。そうして気づいたら家にグラブとボールがあって、キャッチボールをするようになっていったんです。そこで僕は気づいたんです。サッカーよりうまくできる、と。キャッチボールだけでなに言ってんだって話ですが、自分のイメージしたとおりに投げられてる感じがすごくあったんですよね。父は僕にあれしろこれしろという強制はいっさいなくて、やりたいことをやりたいだけやれと言ってくれる人でした。なので、サッカー選手の息子だからサッカーをする、という選択ではなく、僕はうまくできると感じた野球に傾いていきました。

 でも、子供のころはまだ、プロ野球選手というのはなるものではなく、見るものというイメージが強くて、将来の夢はカッコいい人になるみたいな漠然としたものでした。いやでも、カッコいい人になるってすごく難しいことですよね……。

 僕は結局、高校3年生のときにドラフト5位指名をいただいてプロ入りすることができたのですが、ドラフト注目選手、みたいな特集で写真が載ったことがほとんどないんです。スカウトさんっぽい方がなんか見てるなーとは思っていたのですが、こんな田舎の小さな学校にスカウトさんなんて本当に来るのかな、というのが正直な気持ちでした。なので、指名があったときは声がでるほど驚きました。いや、まぁ、プロ志望届を出してはいたので、心のどこかでまさかのまさかが起こって指名されたり……なんて夢心地でいたのも事実なのですが。指名される前に夢心地ってなんやねんって突っ込まれそうですが、やっぱり当日はドキドキしました。

 練習を終えて、そろそろ帰るか、ドラフト会議は今何位指名のあたりかなーなんて考えていたとき、パソコンが置いてある教室から誰かが「岩川! 指名されたぞ!」と叫び声が聞こえてきたんです。「マジかよ!?」「どこに!?」「何位で!?」僕だけでなく、周りにいた部員たちもみんなテンションあがっちゃってそのままパソコン教室に走りました。

 サッカーのシュートが下手くそだと思って、そこから野球に傾いていって、気づいたらそのままずっと続けていた野球で、プロの球団から指名される。実は今でも指名された日のことを思い出すことがあるんです。それは、試合で悔しいことがあったり、思うようにできなかったことが続いて苦しくなったときだったりするのですが、あの日の感情を思い出すと自然と、よし頑張ろうと思えるんです。

 小学生のときも、中学生のときも、僕は部活動として野球をやっていたという感じでした。大人になったらそれを仕事にするなんてこれっぽっちも思っていなかった。ただ、野球が楽しくて続けていて、高校に入っても同じでした。こんなこと言ったら、小さな頃からプロ野球選手を目指している人に怒られるかな。でも、そういう人でも、こうやってプロになることはあるのだと、知ってもらえたらと思います。入ったあとにめちゃくちゃ苦労するよ……とはこっそり言っておきます。いやもう、すっごい運動量で、一に体力二に体力、三四がなくて五に体力です! あああ……ルーキー時代のことを思い出すと冷や汗が……。

 なんて、脅したあとでアレですが、言いたいことはまだあります。どんな田舎でも、スカウトさんは見に来るときは見に来てくださいます! あのとき見かけた背広姿の人がレインディアのスカウトさんだったことを僕が確認済みです。
 なので、どこで野球をしていても、し続けていれば、きっと誰かが見てくれます。あの人もしかして……そうです、その人はきっと、もしかしなくてもスカウトさんかもしれません!

 以上、僕の少年時代のお話でした。……内野手の一人として、ということでしたが、内野について全然書いてないことに今気づきました。ごめんなさい。

 次回のエッセイをお楽しみに!
 北海道レインディアの岩川恵流でした。


◇岩川恵流プロフィール◇
北海道レインディアの内野手として今季46試合に出場。主に代走、守備固めでの出場だったが、確実な走塁と堅実な守備が光り、シーズン終盤にはスタメンも経験。来季以降のレギュラー穫りを狙う。

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