第23球 メモリアル

 皆さま、こんにちは。ミルカウズの投手、須崎 亘(すざき あたる)です。氷口の指名で今回のエッセイは僕が担当します。
 氷口とは、田ノ原と一緒にご飯を食べたとき、氷口も一緒についてきていて、噂には聞いていたけど、本当に小さいなと思ったのが第一印象でした。氷口が一軍の試合に出るようになり、僕も彼と対戦しましたが、イメージ通り、ちょこまか動いてきてやっかいだなぁと思いました。

 今回のエッセイテーマは「メモリアル」です。メモリアル……いろいろありますね、プロ初勝利、プロ初ヒット、プロ初ホームラン、通算100号ホームラン、通算100勝目……etc。
 実は……僕は、こういったメモリアルによく絡むピッチャーなのです。あまり……いや、かなり、おめでたくない話なんですけど、一部界隈では有名なようで、なにかしらのメモリアルがあると「また須崎か」「須崎かと思ったら本当に須崎だった」「須崎だとなんか安心する」「須崎なら仕方ない」とか、みんな言いたい放題。こっちの身にもなってくれよ、と言いたくもなります。僕だって、真剣に投げているんですよ、たまたま僕が投げたときに節目の何かに至っただけで、僕だけが原因ではないんですよ!
 と言いつつも、今季もなんだかんだでメモリアルを献上してしまったので、ひとつ一つ振り返ってみたいと思います。

☆プロ初ヒット
 はい、これはですね、3選手に献上いたしました。投げる前にチェックはしていました。今日のベンチ入りにまだヒットを打っていない若手がいるな、気をつけようと。一軍でヒットを打っていないからといって、なめてかかるなんてことはしません。何度も対戦しているバッターとはまた違った難しさがあります。ギラギラしている選手だったり、ちょっと不安そうな選手だったり、案外、不安そうにしている選手の方がしれっとヒットを打ってしまったりするんですよね。

☆プロ初ホームラン
 はい、これはですね、2選手に献上いたしました。うち一人は上にあげたプロ初ヒットも含まれています。プロ初ヒットが初ホームランは話題になりますよね。スポーツニュースでも取り上げられる率が高いので、このときは僕もよく映りこみました。打たれた僕がいうのもなんですが、2選手とも初とは思えないすばらしいホームランでしたね。でも、僕以外からはホームラン打ってないんだよなぁ……。

☆プロ初勝利
 厳密には僕が献上したわけではないですが、僕が先発した試合の対戦チームの投手がプロ初勝利したという試合がなぜか2試合もありました。プロ初勝利のインタビューを聞いていたんですが、やっぱり初々しいですよね。僕もかつてはプロ初勝利した試合があったわけで、そのときのことを思い出すと、まだまだ頑張ろう、上を目指していこうと思えます。

☆通算100勝目
 相手ピッチャーが通算99勝だったことを登板前にチェック済みでした。そうです、僕、ホントにこういうの気になって、事前に調べるようになっちゃったんですよね。調べないほうが変に意識せずに投げられるんじゃ……と思われるかもしれませんが、調べないとむずむずもやもやしちゃって、集中できないんですよ……なので、開き直って調べることにしました。

☆通算150勝目
 僕はまだ通算で100勝もしていないので、150勝というのは恐れ多い記録です。相手ピッチャーは10年以上プロで投げ続けている大先輩でした。めちゃくちゃいい球投げてて、なかなか点は取れないだろう、1点2点の勝負になるなと、僕もより気合いが入りましたが……力及ばず……。

☆通算100号ホームラン
 これは相手チームのホーム球場で打たれてしまった記念のホームランです。なので、お客さんの盛り上がりもすごかったし、ビジョンに通算100号本塁打の演出まであって、この試合に負けたらこのシーンばかりテレビに映るぞ、と自分にプレッシャーを与えて、なんとかそのあとをゼロに抑えてミルカウズが勝ったんです。なのに、なのに、その日のプロ野球ニュースではこのホームランのところばかり映ってて、勝ったのはこっちなのに~そりゃないよ~と脱力したことを覚えています。

☆通算150号ホームラン
 これまた相手チームのホーム球場で打たれました。このときも盛り上がり、ビジョンにも演出あり、これはもしかしなくとも、負けたらこのシーンばかりが……と思いました。だからこのとき(100号ホームランを打たれてから2ヶ月後くらい)もチームが勝てばそれでいいんだ! と、踏ん張りまして、なんとか7回3失点でチームは5-3で勝ったんです。勝ったんですよ。でも、はい、おわかりですね、このときもなぜか、150号ホームランのシーンばかりで打たれた僕も映り込み、勝ったのはこっちなのに~そりゃないよ~でした。とほほ。

☆1,500本安打
 ヒットを1,499本積み重ねてきた、というのは本当にすばらしい記録だと思います。1本打つのだって大変なのに、それを10本とか100本じゃなくて1,000本以上ですよ? 気が遠くなる数です。僕がバッティングが苦手というのもありますが(なので、パリーグのピッチャーで良かったと正直思っています)、投手から見てもリスペクトです。だからといって、打たれてもいいということにはならないわけで、全力で立ち向かいましたが……打たれました。。甘い球じゃなかったんですよ……でも、無理に引っ張らず、うまく逆方向へ運ばれまして……。

☆1,000投球回
 はい、これ僕です! やられているだけじゃありません! 僕も一応これだけ投げ続けてきましたというメモリアルを今季記録することができました。この日に、1,500本安打の記録ヒットを打たれているというオチまでありますが……。

 というわけでお送りしました数々のメモリアル記録。いかがでしたでしょうか。これで来季、僕が投げるときに何か記録のかかった選手いないかな、なんて調べないように。僕が登板前に調べてますから!


 それでは、次回のエッセイもお楽しみに。
 ミルカウズの須崎亘でした。


☆須崎亘プロフィール☆
ミルカウズの先発投手として今季23試合に登板。12勝5敗、防御率2.75という成績でチームトップの勝利数を記録。1,000投球回も達成し、来季も先発陣の柱として期待がかかる。

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