第11球 球種

 皆さま、こんにちは。広島アビーズの投手・成崎 翔(なりさき しょう)です。佐和山(さわやま)さんのご指名で、今回のエッセイは僕が担当します。どうぞよろしくお願いします。
 佐和山さんとはシーズン中に何度か対戦したことがあるのですが、僕が今季唯一ホームランを打たれた選手です。あのときは本当に悔しくて、次に対戦するときは絶対に抑えてやると思ったのですが、なんとそのあと一度も対戦がないままシーズンが終わってしまいました。
 なので、そんな佐和山さんから指名されるなんて思ってもいなかったのですが、佐和山さんのエッセイを読んだら力が抜けちゃいました。おにぎり、おいしいですよね。でも、来季は必ず抑えます。

 僕はオーバーハンドの右投げ投手です。フォームも変則ではなく、至ってオーソドックスな形だと思っています。今回はそんな僕の投げる球種について書いてみたいと思います。商売道具をそんな簡単にさらけ出していいのか、と思われるかもしれませんが、手の内がわかってもそれを攻略できるとは限りません。
 こうすれば抑えられると考えていても、実際に投げてみたら打たれてしまった、ということは何度もあります。ということは、その逆もあるということです。なので、正直に書いていきたいと思います。

 野球雑誌でもたまに球種の特集をしていますよね? それの延長戦といったらあれですが、僕に取材がきたらこう答えるみたいな感じでいってみたいと思います。

『ストレート』
 多くのピッチャーがこの球種を軸に投球を組み立てると思います。僕もこのストレートが生命線だと考えています。ストレートを生かすために、いろんな変化球を投げている、というイメージです。
 僕のストレートの最速は149キロです。最速ですよ。だいたい常時144~146キロぐらいです。振りかぶって投げるときとセットで投げるときとではどうしても後者のほうは球速が落ちてしまいます。いつでもセットで投げる、ということも考えましたが、何度か試してみて、振りかぶれるときは振りかぶって投げたほうがいいという結論に落ち着きました。

『スライダー』
 僕が投げる変化球で一番多いのはスライダーです。ストレートの軌道で、打者の近くでスライドする球です。縦にスライド、左右にスライド、僕は3種類のスライダーを投げています。
 バッターに、ストレートだ、と思わせて振らせて打ち損じを狙ったり、タイミングをずらして空振りをとりたい球種です。

『チェンジアップ』
 ほぼストレートと同じ軌道なのですが、握り方を変えることで球速が変わる球種です。投げる意味合いとしてはスライダーと同じです。ストレートと思わせといてスピードが違うのでバッターのタイミングを狂わせる球です。

『フォーク』
 僕はフォークボールを投げます、と言えるくらいのフォークボールが投げられるようになったのはプロに入ってからです。やはり、落ちるボールを投げられるのは投球の幅も広がりますし、決め球として自信を持って投げられるようにしようと、練習で投げ続けました。
 現役時代にフォークボールを得意としていたコーチが身近にいたことも心強かったです。

『カーブ』
 僕はあまり投げない球種なのですが、ごくたまに投げるときがあります。おそらく選手名鑑の僕の紹介欄を見ていただくとわかると思うのですが、投げる球種割合でこのカーブが一番パーセンテージが少ないと思います。
 どうしてカーブをあまり投げないかというと、変化球の中で今のところ、一番コントロールしづらい球種だからです。うーん、正直に言ってしまった。緩い球というのは投げるときになかなか勇気がいるものなのです。遅いボールって打たれそうなイメージがありませんか? そのイメージが僕にはあって、投げるのをためらうときがあります。

 以上が、僕の持っている球種です。

 ストレートを投げてビシッと抑えるのも気持ちよいですが、僕はそれだけでは抑えられません。
 どうしたら抑えられるかと考えたとき、逆にバッターだったらどう考えるだろうと、チームの野手に聞いたことがあります。いろいろな話を聞き、そこに僕の考えや実際の試合映像を見て感じたことを僕の中で吟味して一つの結論を出しました。

 バッティングはタイミングだということです。タイミングが合っていれば、多少無理なフォームになってもフェアゾーンに飛ばされてしまいます。ドンピシャで振られたらスタンドインまでされてしまいます。 
 なので、僕はいかに打者のタイミングを外させるかを考えてピッチングしています。
 タイミングを外す、ずらす、狂わせる。そうすることで、うまく打ったはずなのにあれ? というような打ち損じになったり、合わせたはずなのにバットが空を切った、という結果になったら、ピッチャーの僕としてはよし、となります。

 僕は三振をバッタバッタとれるタイプではないので、ゴロを打たせて捕ることを調子のバロメータにしています。ゴロ、ということは野手の皆さまの協力なくしては成り立たないので、いつも登板前にはよろしくお願いしますと挨拶にいっています。なので、いつもに比べて三振が多いときはどうした、調子悪いのか、と逆に言われることもあります。
 三振もとれるのならとりたいんですけどね……(苦笑)。

 僕が投げている球種について話してきましたが、いかがでしたでしょうか。握りの写真も載せられたらもうちょっとわかりやすかったかなと、思うのですが、今回は文章のみで失礼しました。

 いつか野球雑誌の変化球特集で取材してもらえるような、これぞという変化球を磨いていきたいなと思っています。

 それでは次回のエッセイもお楽しみに。
 広島アビーズの成崎翔でした。


◇成崎翔プロフィール◇
広島アビーズの投手として先発として10試合、中継ぎとして20試合登板。チーム事情により7月より先発から中継ぎに転向したが、そこでも多彩な変化球を駆使し、打者を翻弄した。来季も任された場所で思いっきり腕を振っていく。

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