第4球 ピッチャーが打席に立つということ

 皆さま、こんにちは。横浜シーガルスターズの投手・青葉 匠海(あおば たくみ)です。
 グリフォンズの本山(もとやま)さんのご指名で4回目のエッセイは私が担当させていただきます。
 本山さんとは同郷出身というつながりから大変お世話になっています。シーズンオフになると地元での野球教室でご一緒することも多く、いつも楽しい本山さんの指導に私もつられて笑ってしまい、突っ込まれたことが何度もあります。
 そんな本山さんの書かれたエッセイは人柄がとても出ていて、楽しく読むことができました。いい枕といい睡眠は大事ですよね。

 私は今シーズン、シーガルスターズの投手として18試合先発させていただきました。結果は7勝4敗でした。貯金を3つ作ることができたのは良かったですが、勝ち負けがつかなかった試合、負けのついた試合では私が降板したあとに投げた投手や、守って下さっていた野手の方々に、負担を強いる結果となってしまったことが反省点です。
 来シーズンは与えられた場所で、ファンの皆さまが安心して見ていられるようなピッチングができるよう、しっかり休んだあとはしっかり切り替えてトレーニングしていきます。

 さて、今回のエッセイテーマですが、投手ならではというか、セリーグの投手視点のお話をしたいと思います。
 それは、“投手が打席に入る”というセリーグ限定の決まりです。交流戦の特別ルールでパリーグのピッチャーが打席に立った年もありましたが、基本的にパリーグはDH制なので、ピッチャーは打順の中に入りません。でも、セリーグはDH制ではないので、ピッチャーも打順の中に入ります。8番か9番目になることがほとんどです。

 シーガルスターズは原則、ピッチャーを8番に入れています。この打順にピッチャーを入れるのはいろいろな戦略ゆえですが、私個人としてはおもしろいなと思っています。と言っても、試合になるとサイン通りのバッティングに集中するので、その打順がおもしろいと思えるのは自分が試合で投げていないときですね。
 
 私は右投げですが、打つほうは左なので、左打席に入ります。右投げで左打ちだと、利き腕がピッチャー側になるので、球が当たった場合に危険だと言われることがあります。でも私は野球を始めたころから左で打っていたので、逆に右打席に立つほうが危険というか怖いなと感じるのでこれからも左打ちでいくと思います。

 私は今シーズン、18試合の先発で35回打席に立ちました。そのうち、犠打7回、安打5本という成績でした。また初めてタイムリーという打点のつくヒットも打つことができました。その日は初めて9回を1人で投げきった試合でもあったので印象に残っています。

 ピッチャーの打席で大事なのはバント(犠打)をしっかり決めることだと思っています。もちろん、バント以外のサインが出たらチームにとって一番いい結果になるよう努力しますが、バントは10割の成功率を求められます。成功して当然、失敗したらチームにとっても痛手になりますし、見ているお客さんの士気も下がります。なので、通常のヒッティングでアウトになるより、バント失敗でアウトになるほうがダメージは大きいです。
 
 私は去年、一軍の試合で初めてバントをしたとき、失敗しました。ピッチング以上にそれがすごくショックで、そのあとの投球に支障が出てしまうくらいでした。切り替えていけと先輩がたに声をかけていただきましたが、切り替えられませんでしたね……。
 なので、その日以降はよりバント練習に時間を割きました。実は、初ヒットより、犠打を初めて決めたときのほうが安堵感がありました。バントを決めてベンチに戻ったとき、みなさんが笑顔で出迎えてくれて、少し泣きそうになりました。
 今シーズンは犠打成功率100%を達成できたので(回数は少ないですが)、その点では満足しています。これからも青葉はバントを必ず決めてくれる、という信頼を壊さないよう、しっかり練習をしていきたいと思っています。

 バントをしっかり決めているとピッチングにも余裕と言ったらあれですが、気持ちの上で落ち着いて投げられるので、勝ち星がついている試合はおそらくバントをしている試合が多いのではないかと思います。私が打席でバントをするのは試合の流れや塁上のランナーの有無、アウトカウント等々で、しないときも当然ありますから、バントがなくてもちゃんと勝てるピッチャーになっていかないといけません。

 私は身長が185センチで体重が86キロあるからか、ランナーがいないときはホームラン狙っていけよ、と言われたりします。プロに入るまではピッチャーでもホームランを打てたらいいなと思っていましたが、今は、ランナーがいなくてもセーフティバントをしてみようかなと思うくらい、打席=バントみたいな思考になっています。うーん、少し危険かもしれませんね。
 もちろん普通に打つことも好きです。バッティングの練習もありますし、遠くに飛ばしたときは気持ちいいのも確かです。でも、バントを決めるのも同じくらい気持ちいいんですよ。

 私のエッセイはここで終わります。雰囲気が変わるかなと、“私”と書いてきたのですが、慣れないことはするものじゃないですね。

 次回のエッセイもどうぞお楽しみに。
 横浜シーガルスターズの青葉匠海でした。


◇青葉匠海プロフィール◇
昨シーズンプロ初勝利をあげ、今季はほぼ一年間先発ローテを守り7勝。完投も2度記録し、来季は初の二桁勝利を期待される若手右腕。

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