ナマケモノとマーケット1
青いお皿って、ちょっと珍しいね。
そんな声が聞こえて、ナマケモノは、そういわれてみたら、と思い浮かべてみました。 白か黒か、フチにお花とか葉っぱとか、そういう模様も浮かびます。
レストランならあるかもしれないけど。
最近は、ニライカナイのことを思い出しても、涙は出ません、ドキドキしたり、焦ってぐるぐるした気持ちも、大変少なくなりました。
青い食器の話をしていた人たちは、大きな公園の方から来たようでした。そうして周りを見てみるとこれから向かう人や、もう帰る人が入り混じっていました。
公園ではマーケットをやるようで、何週間も前からポスターが貼られていたことは知っていました。その頃はまだ、行く気持ちも、興味もなくて、なんとなく見ていたポスターでした。
マーケットが始まった時間からはずいぶん時間が経っています、あんまり混んでいなければ…見てみたいな、とナマケモノは思いました。人がわいわい、賑やかに混んでいる場所は、チカチカ、キラキラ、バクンバクンと落ち着かなくて、苦手はなかなか克服出来ません。
しかし、青い食器、ってどんなものなのか、想像するより実物を見に行こうと思ったのでした。
マーケットには、一つ一つ、タープを張ったキャンプをしている人がいるみたいでした。
混んで人がぶつからないように、充分考えられて、一つ一つのキャンプ地に、ゆったりお店を構えるようなマーケットでした。
「青いお皿ってこれかな。」
お皿…お皿かな?ちょっと小さめでした、青一色なのかなと思っていたけれど、空に一線雲が流れているような模様がありました。白、というよりベージュの様な、もう少し濃いなら茶色のような…。絵画のようでした。お皿かなと思ったのは、手作りクッキーが並べられていたからです。一杯分の珈琲の入った小袋やチョコレートも売られています。
「青いお皿も売り物ですか?」
ナマケモノは他の青い食器があれば見てみたいな、と思って店主に訊ねました。
「あぁ、それはね、このマーケットで買ったんだ。
焼き物としての青色は、生け花の器に使われるのは見た事あるんだ。華の色を引き立ててより魅力的にするってことでしょう?だからわたし達のクッキーをより魅力的になるかな、と思って並べてみたんだ。どう?美味しそうに見えるといいんだけど。」
「はい、クッキーも可愛いです。…でもあの、僕の好みで言うと、クッキーは、白いお皿にある方が好きかもしれません。」
クッキーは青いお皿の他、白いお皿、あとお花が飾られた籐籠にも入っていて、それも印象的でしたが、食べようと手を伸ばすならお皿は白かな、と思いました。
ナマケモノは最近、自分の意見はしっかり言うようになりました。そうしたほうが、気持ちが良いことに気付いたからです。そして、相手の意見や気持ちも、落ち着いて聞けることに気付きました。
梟やネズミが言ったことも今なら理解出来ました。
「そうなんだ、ご意見、ありがとう」
店主は笑ってくれました。
「これね、クッキー見てくれる?手作りだから結構いろんな顔やカタチがあるでしょう?不揃いって、お店にしたら良くないこと、って多いじゃない?
でもね、わたし達は、その不揃いであることに、そのままの良さもあると思ってるんだ。なるべく揃えるけど揃わないから売れないなんて事はない。
だからね、きみが、わたし達に、こう思うよ、ってしっかり伝えてくれたことは嬉しいし、その意見を参考にみんなと相談して、まだやれる事があってもっと楽しくなりそうって思えたよ。」
ナマケモノはその言葉を聞いて、ブワッと舞い上がった気持ちが、ストンと収まったのを感じました。不揃い、カッコいい、手作り、いろんな顔、ひとつひとつの言葉がこの店主さんによって、収まるべきところに落ち着いた、そんな感じです。
店主さんが、わたし達と言うあたりから店主さんの周りには色々な人がいてみんなでこのクッキーを作ったり袋に入れたり、パッケージを考えたりしているそういう風景が見えました。きっと色々な工夫をして、美味しいお菓子は、バリエーションも豊富なのでしょう。
とても不思議な体験でした。
店主さんから溢れた気持ちとかそういうものが、具現化したのかもしれません。
クッキー食べてみたいな、手紙に添えてみようかな、と思って、5枚包んでもらいました。
「籠のお花も素敵ですね。お花の飾り、その中にクッキーはよく似合っています。」お会計の時にそう言うと、店主さんはなんと、そのお花付きの籠に入れ直してナマケモノに渡してくれました。
びっくりして返そうとすると、「君が持って歩いてくれたらなんかさらに似合いそう!」と言うのです。
それならば!とナマケモノは店主さんのご好意を受け取りました。
もちろん、次のかたへ、お渡しする気持ちを込めながら持って歩きます。今、ナマケモノが出来るクッキー作りへの参加方法です。
それはなんですか?と聞かれたら
手作り、だれもが花マルなクッキーです、お一つどうぞ、と渡してみたいのです。
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