【短編小説】Drops of tears
【利用規約(無料版)】2021/12/16 作成
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作者名:こはる
note:https://note.com/koharu20180909
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[本文]985文字
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短編小説『Drops of tears』
雫型のピアスを付けた彼女は、私の好きな人の好きな人。誰にでも優しくて、いつも笑顔で、こんな天使のような人が本当に存在するのかとわが目を疑った。
彼女は天使だ。先輩が好きになるのも納得の天使だ。嫌いになりたかったのに、私も好きになってしまった。もちろん、尊敬という意味でだけれど。
ある日うっかり、彼女とふたりきりになった。できるだけ避けてきたから、少し戸惑う。
放課後の教室で私は友達を待っていて、彼女は多分、先輩を待っている。
「私もピアスあけようかな」
ピアスひとつで彼女のようになれるなら、と思って、軽い気持ちで口にした。
「使ってないピアスあるから、あげようか」
隣りから覗き込むように言われて、初めて彼女の笑顔を間近で見る。可愛らしい顔に、同性ながらドキッとなった。
「ピアス、いつも同じのしてるよね」
高鳴る鼓動を押さえながら何気ない風を装って聞くと、彼女は珍しく笑顔以外の表情を見せた。憂い顔、と言うのだろうか。
「外せなくなっちゃったから」
外せないって、どういう事だろう。ケガしたみたいに、肉にくっついてしまったり……と考えると、ちょっと怖くなる。
私が何を考えたのか想像がついたのか、彼女はまたいつもの笑顔を取り戻して言った。
「このピアス以外、使う気分じゃなくなっちゃったってことね?」
なんだ、そっか。
彼女は雫型のピアスを指でいじりながら、遠くを見るような顔をする。笑顔がまた少し陰った。
「そのピアス、可愛いよね」
何があるのか聞きたかったけれど、彼女の表情を見たら聞けなくて、当たり障りのない言葉を紡ぐ。
「うん。気に入ってる」
いつもとは違う笑顔を見せて、それから視線を窓の外へ送る彼女。何をしても絵になる天使は、まるで今にも飛び立ってしまいそうで。
私も窓の外に目をやると、ぽつぽつと雨が降り出してきていた。
しばらく、ふたりで黙ってしとしと降る雨を見つめていた。
ふと横を見ると、彼女のピアスが夕日を受けて不思議な色に輝いている。頬を伝う涙は、見なかったことにした。
(ねぇ、先輩。これは手ごわいと思うよ)
私は心の中で先輩にエールを送る。
たぶん、彼女の心には私たちの知らない誰かが大きく存在していて、きっとまだまだ敵わない。
私は彼女にも、先輩にも幸せになってほしいから。
(先輩、頑張ってね。幸せになって、幸せにしてね)
雨は当分止みそうもない。
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