見出し画像

拙作語り⑦~扶桑奇伝

はじめの概説

近世日本風伝奇ファンタジー『扶桑奇伝ふ そう き でん』は、
1994年夏、当時華やかだったRPGの多くが「中世西洋風剣と魔法のFT世界」だったので、「なぜ自分らは東洋人なのに、東洋風でコレをやらないのか?」という思いで構想を始め。当初は漫画形式でダイジェストというかハイライト的な描き方をしており。
紆余曲折があって現在の形にまとまったのが2000年前後。小説版を書いてたのもこの頃で、まだ一人称。
その後、仕事・結婚・出産などでなおざりになっていたが、産後、書きかけの一人称を発掘して執筆を再開。当時ネットに存在していた「自筆小説感想交換コミュニティ」にて説明不足を指摘されたのを機に、説明を追加しながら三人称メインへの改稿に着手したのが2008年。
改稿さらに続きを休み休み書いて、2013年春、何とか最終話までたどり着き。
2017年、極小部数自費出版@同人誌印刷所のため、更に改稿。
という経緯で完結した創作物語です。
それまで二次創作をしていた自身が初めて本格的に取り組んだ一次創作作品でもあり、色々「若いなあ、浅いなあ」と思う箇所もありますが、思い入れも強いです。
始まりは『奇伝』だけだったのが、あれこれ説明をつけてるうちに、物語の時代より更に昔の出来事をいくつか語ることになり、実際は『扶桑国三部作』の最終章みたいな位置づけです(爆)
第一部は古代『神代末伝承』、第二部が中世『扶桑国内乱伝』、そして第三部にあたる本作が近世『扶桑奇伝』、となります。
古代と中世にもそれなりにドラマはあるのですが、相応に細部まで書いたのは第三部『扶桑奇伝』のみで、その中で過去の出来事も語られる形式です。

「その封印解かれし時  封じられし災いは 光の下に現れん。
 世は乱れ 人と人とが殺し合い
 悲鳴と慟哭の声が 天に響き
 廃墟と骸の山が 地を覆はん。」

 我が子を奪われ、気がふれた一人の女。女は、その封印を解いてしまった。
 結果として世は乱れ、戦火の飛び交う所と化した。
 女は、己のしたことのあまりの恐ろしさに自ら命を絶った。しかし、争いは止まる事を知らない。

 だが、その争乱を平定しようと戦いの中に身を投じた者たちがいた。
 過去と宿命を背負い、不思議な運命の糸に手繰り寄せられた、十一人の戦士たち。彼らは「災い」の根源をも倒し、地上には平和が戻った。
 それは、真の平和であり、また天つ国と中つ国…神々と人々との訣別をもはらんでいた。

――その軌跡が、今 ひも解かれる―――

主要登場人物

「序」にあるように、この物語は争乱平定を志す者達の戦記なので、旅の仲間も皆相応の戦闘能力をそなえており。

2017年発行の表紙絵。メインキャラ(旅の仲間)総出演イラスト。

・旅の仲間(同士)

兵衛 ひょうえ
 本編の主人公。占い師・白菊(後掲)は、彼を「交錯する光と闇の申し子」と呼んだ。実直生真面目、勤勉な努力家だが、翳りというか物暗さが漂うのは、秘められた出生ゆえである。
 クラスは、刀剣・槍を扱う、騎兵・歩兵。十六歳。霊母(≒守護霊)・命。

三位 さんみ
 官吏家の長男で、生粋のお坊ちゃま育ち。気まぐれでわがままだが、イザというときには冷静な物の考え方と判断が出来るので、意外に頼れる存在。愛馬・白隼はくじゅんとは長い付き合い。
 刀剣・槍を扱う騎兵・歩兵。十五歳。霊母・慧。

茜 あかね
 伊賀出身の少女忍者。但し、性格が非常に人間くさく、機械的に冷静な「忍者」とは違った印象を受ける。明るく大らかだが、一方で少々ずる賢く、見栄っ張り。
 忍び刀ほか忍者独自の武器や道具、忍術を操る。十四歳。霊母・火。

愛鶴 まなづる
 浪速なにわの刀工の娘で、自身も刀工としての技量を備える。職務上の必要性のみならず護身と趣味でやっていたらしい剣術の腕前も光る。我慢強く、正義感・責任感もまた強く、思いやりと優しさあふれる性格。王都で出会ったときから兵衛に惹かれているようだが…
 徒歩の剣士として戦う。十七歳。霊母・地。

紫檀 したん
 幼少の時に出家し、以降ずっと学問と修行、救済活動に生きてきた、大和やまとの老僧侶。たまに厳しいが、普段は大らかで寛容。自身には子も孫もないが、一行の良き父・祖父的役割を果たす重鎮。「紫檀」は愛称みたいなもので、本来の名は慈命僧正じみょうそうじょうというが、そう呼ぶ者はごく少数。
 錫杖や真言を武器に戦うお坊さん。六十九歳。霊母・命。

白菊 しらぎく
 今回の争乱を予言して殺されかけた占者。愛鶴に助けられたので、彼女を恩人と慕っている。年齢に不釣合いな落ち着きと容貌を持つが、時として慌てたり落ち込んだりもし、やはり年端もゆかぬ少女ではある。
 呪術師としての優れた才能を持つ。十二歳。霊母・木。

十郎 じゅうろう
 丹波たんばで一行の前に現れる、自称は義賊の華奢な盗賊。気丈で、感情の起伏も激しいが、優しいところも有ることには有る。決断力と意思の強さは誰にも負けない。
 短刀・鞭・弩など、使える武器の多い、素早さが売りの戦士。十八歳。霊母・音。

眞楯 またて
 由緒正しき九州武家の出で、「文武両道」を絵に描いたような、ちょっとガンコで、いかつい紳士。頑固なんだが人情味あふれる人柄で、周囲の評判も上々。しかし人付き合いに不器用で、実はまだ独身。
 兵法の知識も、薙刀の腕前も大したもの。徒歩で、重厚な大鎧に身を固めた将軍として参加。三十二歳。霊母・光。

早矢 はや
 閉鎖的な下野しもつけの一村に生まれ育った、優柔不断な青年狩人。純粋で誠実、穏やかな性格と、外見、弓矢の腕前は一級だが、いかんせん決断力には欠ける。
 徒歩・騎馬双方をこなす弓兵。十九歳。霊母・風。

稜威 いつ 
 陸奥むつの山村で気ままに暮らしていたが、話を聞いて興味を覚え、突如戦線参加する青年。勝気で強気な自信家、かなりの現実主義者でもある。身分やしきたりなど堅苦しいものが大嫌いで口も悪い。
 徒歩・騎馬共にこなす、斧・まさかりを使う戦士。二十歳。霊母・水。

賢木 さかき
 淡路の村で、戦火により家族を失い、一行に助けられた少年。親しい人を失いながらも、周囲に心配をかけまいと明るく振舞うという気丈で優しい面もあるが、まだ子供。悪ガキな顔も持っている。
 架空の生物を呼び出してその力を得る召喚士としての能力を持つ。六歳。霊母・水。

瑞樹 みずき
 伊勢大宮大宮司・文佐あやさ(故人)の息女。十数年前の伊勢大宮での事件以来行方不明であったが…。
 神職としての能力は高く、神聖系呪術を得意とする。宝鏡・クスビを持ち、使いこなす希少な存在。十八歳。霊母・音。

<補足説明>
いろんなところに史実的にムリがあるのは、さておき…
(愛鶴なら女が刀鍛冶とか、眞楯だと生粋の武士だから乗れないはずじゃない上に大鎧なのに騎馬じゃないとか、賢木がいたいけなお子様すぎる年齢なのがオニだなとか…以下略)

霊母というのは『マントラ2』(前田 和慧 著)にあった、確か「自然守護霊的な存在」で、各キャラのイメージで割り振っており。大体は自然物で想像もしやすいのだが、加えて「命:見守り系リーダータイプ」「慧:引っ張り系リーダータイプ」と、ざっくり説明をしておく。。

物語の中で何かと関わってくる、長い歴史をもつ家系と宮社について。
国を統べる国王の王家と、尾張大社おわりのおおやしろの大神官家、伊勢大宮いせのおおみやの大宮司家、出雲大宮いずものおおみやの大宮司家とは、ほぼ同時期に創始された。
これら四家は神代と言われた時代の神々ゆかりの宝物を祀り(≒所有しており)、
・王家(創始者・秀束ホツカ):「水」の勾玉・ハノメ
・尾張大神官家(創始者・眞木マキ):宝剣・サヅチ(属性は「地」)
・伊勢大宮司家(創始者・御杖ミツエ):宝鏡・クスビ
・出雲大宮司家(創始者・豊秀トヨホ:秀束の娘):十種霊器(二枚の鏡、一振の剣、三枚の比礼〈ひれ※古代の女性が肩からかけた布で、呪力を持つとされた〉、四つの宝珠の総称だが、出雲大宮には比礼1・宝珠2を除く七つしかない)
あぁ元ネタがありありと…ですが深くは語らず(逃げやん;)
これ以外に、タケルが月神ユヅクから授かった月の天弓・ナオビが、この世界の神宝として伝わっている。
秀束・眞木・御杖・建、さらに宝剣・サヅチの使い手として心身を消耗しながら「災禍さいか」と戦い続けた秀束の弟・多彦タヒコの5名が第一部の「旅の同士」である。

出雲の大宮司家は初代が王女なので追加の説明は要らないだろうが。
伊勢の大宮司家でも、初代大宮司・御杖が初代王・秀束を「大姐ダイシャ」と慕い、王家と姻戚関係をもつことを願い、自身の孫娘である三代目大宮司の夫として二代目の王・豊彦トヨヒコの子息たる王子(すなわち秀束の孫)を迎えた。ゆえに、伊勢の大宮司も王家と連なっている。
尾張の大神官家は王家と姻戚関係を結ばずに物語開始時へと至る。
初代が女性で始まった王家・伊勢大宮司家・出雲大宮司家では、王・大宮司は男女交互につとめるのが慣例となり、尾張大神官家では大神官は代々男子がつとめている。
建は天弓・ナオビを持って東国へと下り、消息は途絶えてしまうが、この全国規模の兵乱という「扶桑国の一大事」に際し、彼の子孫たちが暮らす村が登場してくる。

共に旅をし戦いに加わるわけではないが、物語上深く関わる重要人物としては、

巴 ともえ
当代の王の息女であり、王太子。勾玉・ハノメを持つ。

彬良 あきら
当代の尾張大社大神官。

斉璽 せいじ
当代の出雲大宮大宮司。兵衛や三位と同年代の、まだ年若い男子。

奈緒 なお
出雲大宮大宮司・斉璽の叔母で後見人。叔母といっても二十代前半。

柾 まさき
茜が生まれ育った、伊賀にある忍の里の里長。

千尋 ちひろ
『奇伝』の物語開始時には既に故人だが、よく当たると多くの人々から信頼されていた占い師。白菊の育ての親であり師匠。

物語の流れ

古代【神代末伝承】
地上に降り来た災禍神とその同胞により、中つ国(=扶桑国)は大いに乱れる。災禍に対抗しうる能力をもった若者たちは、これと戦い、陸奥の北方まで追い詰めるも、完全に打ち倒すことは叶わず、決着を後世へと託すことを決める。そして彼らは「塚となるために」神宝を奉じて各地へと去っていく。

中世【扶桑国内乱伝】
災禍神を崇めきた蔭の呪術師により、東国での反乱の鎮圧へ向かった王女が誘拐されて反乱軍の旗印に担がれ、国を二分する内乱へと発展する。
反乱軍は瀬戸の西海に沈み、蔭の呪術師も陸奥の最果て・「封印の地」で倒したことで、災禍神に施された封印は辛うじて守られた。

近世【扶桑奇伝】
甲斐の一村で父を知らず育った兵衛は、自身の父親を知りたい思いで都へやって来る。都の市場で、のちに旅の同士となる三位・茜・愛鶴・白菊らと出会う。
都に着いた翌日、各地から争乱勃発の報がもたらされ、都に動揺が広がる。
「争乱の元凶を、この目で確かめる」
その思いで、兵衛は郷里に帰ることも父親探しも止めて、休む間もなく旅に出ると決めるが、そこに先日市場で出会った三位・茜・愛鶴も加わる。
以降、各地での兵乱を聞くたび当地へ向かい、収拾すべく活動する彼らに、行く先々で各々の思いと共に更に同士が加わる。
大和では老僧侶・紫檀。
都のある山城やましろで白菊。
西へと向かう途中、丹波で十郎。
九州に上陸し、眞楯。
九州を南下、廻船で一気に関東へ移動し、下野にて早矢。
北上し、陸奥で稜威。
都へと戻りながら、紀伊を回って摂津、淡路へと入り、そこでは賢木との出会いがあった。
旅の仲間が11人となってから、王女・巴との出会い、尾張大社への訪問(偽姫一行として;)などがあり。

王女・巴に扮した主人公・兵衛、違和感が無いすぎる16歳男子。これぞ女装の才子(え)

播磨はりまでは城廓の女妖により窮地に立たされる。紫檀の決死の呪術により命拾いするも、仲間たちは各地へ散り散りとなる。
(スーファミ世代には、どこかで見たような展開…orz)

「皆よ…再びちて、必ずや『災禍』を倒すのだ」
その紫檀の言葉を胸に、同士は再集結。
出雲大宮を訪ねて大宮司・斉璽と対面し、また神代末から所在不明だった神代末の戦士・建の末裔と彼が所持していた天弓・ナオビも現れる。
播磨での戦いで心身に多大な傷を負い戦線離脱していた紫檀も、体力を回復して再び加わる。
「敵は災禍大神で、陸奥の最果てに封印されている」
各地の神宝を借り受け、一行は「最後の戦い」へと向かう。
長い死闘の末に災禍大神は黒き塵となって散り、これをもって天つ国と中つ国、神々と人々との訣別がなされる。
そして、扶桑国の新たな歴史が始まるのである。

筆者による総括

我ながら王道感です、他に言うことがありません(自爆)
いろんな神話伝承を、まるっと下敷きにしてます(さらに爆)
ダイジェストなので、あまりにネタバレなところは伏せてます。
封印を解いた女って何者なの?とか、
じゃあ災禍大神は封印の地から出ちゃってるの?違うみたいだけど…とか、
旅の仲間(同士)では12人分書いてあるのに、序では11人と言ってるし集合画は11人だよね?とか・・・
いやあ筆者的には苦しい(墓穴)

PC閲覧用のファイルしか無い(スマホ非対応)ので、現在はネット上での公開はしておらず、2017年発行のブ厚い小説本を自家通販にて無料配布してるだけの状況です(本自体は無料だが、送料はかかる設定;)。
在庫が無くなったら、スマホ閲覧を意識した工事を行って再公開、というのも考えるかも・・・というところです。。

【後日追記】・・・そんなこんなで、在庫が全て捌けたわけではないのですが、色々あって(;)PDFダウンロードという形で再公開に踏み切りました。↓
扶桑奇伝【PDF版】 | pictSPACE - 創作活動を支援する同人専用自家通販サービス

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?