桜湯の思い出
今から十数年まえ。祖母の葬儀で徳島に行った。
徳島空港で叔父が出迎えてくれた。
叔父の運転するワゴン車で葬儀場へ向かう。
外の景色を眺めていると、遠くの方で美しい稜線が見えた。
眉山。
さだまさしが本に書いたやつやろ、
今度、映画になるねん、松嶋菜々子。
まるで親戚の近況を語るように叔父は教えてくれた。
なるほど、眉山はこの土地に住む人にとっては
親戚みたいなものなのかもしれない。
葬儀場に着く。
亡くなった祖母と面会する。
うたた寝をしているような。おだやかな表情。
対面を終えると、葬儀場の方が桜湯を提供してくれた。
熱い湯に、花びらの浮かぶ。
三月。祖母が亡くなったのは桜の季節だった。
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