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すべる人【夢日記】

 こんな夢をみた。
 傾斜のきつい坂道を歩いている。うしろを見ると、かまいたちの山内(ボケの方)がいた。こんなところで芸能人と出会うのも中々ないことだと思い、僕はミーハーな気持ちをおさえながら、
 ――最近、お仕事の調子はどうですか?
 などと世間話っぽく尋ねる。彼は「えぇ、まぁ、まずまずです」とそれとなく調子を合わせて応えた。テレビの映ってない場所ではフツーの人、常識人といった風情である。そのフツーの風情がかえって僕には好ましく感じられた。

 ふと、僕はかまいたちの芸を讃えたい衝動に駆られて、
 ――かまいたちの芸には「すべる」という概念がないですよね!
 とお笑い芸人にとっては歯の浮くような褒め言葉を云った。藪から棒に素人の僕にこんな台詞を云われた山内は俯きながら「こそばゆい」という態度をみせた。
 彼は明らかに返答に困っている様子である。もちろん僕も悪気があって云ったわけではないが、過剰な褒め言葉だったかもしれないと申し訳ない気分となった。

 このギクシャクした空気を何とか取り戻そうと、
 ――やっぱり濱家(ツッコミの方)ですよ。濱家が全てのボケを拾ってくれるから、かまいたちのコンビ芸が成立しているのかもしれませんね。
 と、今度は相方の方を褒めちぎった。だが、返事がまったく聞こえてこない。うしろを振り返って見ると、山内がサーッと坂道を急降下していった。

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