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片想いの代償 ASDの恋愛作法3

その人は時間をかけて

手紙を読み終えると

ありがとう、と小さくつぶやいた。

困惑や拒絶を期待していた私は

やや拍子抜けした。

とても嬉しかったです

とも書いてくれた。

好きではない相手に思いを告げられたことは

私にも何度かあった。

そのとき私はありがたいとはまったく思わず

迷惑にすら感じていた。

片想いが習慣になり

好きな相手に好かれないつらさを

知ってるはずなのに

ありがたいとは思わなかった。

おそらく手紙をもらっていても

素早く読み終えて机に置きっぱなしにし

食べ物のシミさえつけていたかもしれない。

人に愛されることの有り難さを

私はまるで知らなかった。

自分がどれだけ傷ついても

人の感情には無関心だった。

私の片想いの感情をその人は

生まれたての生きもののように

両手で丁寧に扱ってくれた。

そして決して笑わなかった。

それを見て

今までどれほど

無頓着に人を傷つけてきたかを

知ったのだ。

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