✍️ ②「日本の種苗業者がバイエル含む種苗メジャーに買収され市場が寡占化される可能性について」の見解

前記事「✍️『種苗法改正案』に関する誤解を解いておきたい」で唯一、父が「書こうとしたんだけれど書ききれなかったと…。」と告白した内容が、今回の表題です。
「やはり、その質問がきたかぁー。ちょっと自分の知識も、調べも足りなくて、書ききれないからやめたんだよね。少し書いてから、実は削除した(泣)でも、せっかくご質問いただいたから、自分なりの考えは表明しておきたい」ということで、またまた長くなりますが、父の見解をnoteにまとめました。

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質問は前記事の赤11部分です。
「海外企業が日本をコントロール」→前回の父の反論は 「日本の種苗会社の独立性は高い。興味があるなら、是非調べてみてほしい。わかるし、安心するから」でした。

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また、そう書く前に、前記事赤④部分に関連して以下のように。
「離農する農家が増え、地方自治体の種苗企業が運営できなくなる」→これに対する前回の父の反論は「世界の種苗会社ベスト10に日本の民間種苗会社は2社ランクインしている。共にシェア5%。シェア22%のモンサント社が世界を独占するとかありえない」、「農家は色々自分で調べて、(中略)色々な種苗会社から厳選して購入している、(中略)つまり、どこかの民間種苗会社が独り勝ちすることなど考えられない」とも言っていました。
がっ、そうなのです「可能性は0(ゼロ)ではない。だから書ききれなかった。でも、そんなに恐れなくても大丈夫だよということは伝えておきたい」ということで、まとめてもらいました。

まず初めに、資本主義の世界で生きているので「寡占の可能性は間違い無く0(ゼロ)%だから安心して!」などとは口が裂けても言えない。それは理解してほしい。でも、常識的に判断して、可能性は限りなく0(ゼロ)に近いと言ってよい。
「その理由となるポイントは4つある」と。

①日本における野菜種子の市場規模は世界の全種子市場の中では小さい:野菜種子の市場規模で、世界の中において日本の占める割合は意外に高い。野菜種子の市場は世界で約5,000億円と言われており、耕地面積が少ないのにもかかわらず、「タキイ種苗」さんのホームページ(後述:参考資料参照)によれば、なんと日本は17%(約850億円)を占める。その理由は「四季の気候変化に対応し、限られた耕地面積において生産効率を高めるために、様々な特性を備えた品質の高い種子の需要が大きいため」とのこと。この事実は大きい。日本以外の誰にも真似できない種子開発の極意がそこにあるということだから。そのニーズと技術に海外企業は応えられるのか?
否。だけど「買収しちゃいたいよねー!」って言い出す可能性はある。
だけどここで、(野菜以外の全ての)種そのものの市場を見てみる。なんとその規模世界で約3兆円。ほとんど穀物種子であることがわかる。当たり前だよね、生命線だもの。野菜なんて脇役よ(涙)。
この市場規模で、日本における野菜種子の市場(計算すると世界の種苗市場のたった2〜3%)を狙って海外企業が買収する?
するとしたら、かなり無茶だよね。マーケティングを勉強したことがある人には明白。魅力がないし、おそらく投資対効果が合わない。
「改正に反対する方々が、何かと目の敵にしている合理主義の権化みたいな企業がそんなことする?しないでしょ」と。
それに、日本国内の多種多様なニーズに応えて、長い年月と費用をかけ苦労に苦労を重ねて開発した種苗の権利や会社そのものを、日本企業が簡単に海外企業に売り渡すとは正直とても思えない。
「いや、売る奴は売るでしょ。売国奴かもしんないし、困ったらお金には変えられないし…。」
なら、買収を心配している人達は、まず日本の種苗会社の株主になればいいよね。そうすれば、自分が株主として参加している企業が、海外企業に売却してしまう可能性がある時に、全力で反対できるから。
「いや、私一人みたいな小口の株主が意見なんて言えない。だけど絶対守りたい!」
ならば、仲間でお金集めて種苗会社作るなり、絶対グローバル企業に売り渡さない血判状みたいなの作っておいて、日本の種苗会社を買い取っておけばよいよね。それこそが、唯一海外企業に絶対買収されない方策だから。
「いや、お金が無くても意見を言う権利はある。改正法がおかしいのだから、それに反対して何がおかしい(怒)」
いや、買収される危険性は法改正しなくてもありますけどね。←これ大事❗️
つまり、法改正してもしなくても、買収される可能性は0(ゼロ)ではない。でも、安心して。
「先程、理由の一つを述べた通り、日本における野菜種子の市場規模は世界の全種子市場から見ると小さく、その可能性は低いから」と。

②日本における種苗会社の数は多く、その独立性は高い:「日本種苗新聞」さんのホームページ(後述:参考資料参照)によれば、日本には130社超の種苗会社がある。それを全て買収する⁉︎ ないなぁー、普通は。前述の市場規模から見て、考えにくい。ただ、日本における種苗会社の再編が進み、ある程度まとまったところで、海外メジャー会社が買い取る。それが絶対に無いとは言えない。でも、それが実現するには途方も無い時間がかかるだろうし、この答えは可能性の問題だから誰にも回答できないよね。歴史のみが証明できることになると思う。
ただ、注目してほしい。世界のマーケットでトップ10入りしていて、そのシェア5%を誇る日本の種苗会社「タキイ種苗」さんは、なんと上場(株式公開)していない!(後述:参考資料参照)
大学を卒業してサラリーマンになり、上場を目指していたベンチャー会社に長年勤めていた自分は、「上場こそ全て」と思って生きてきた。でも、上場こそが企業が目指す全てではないことに最終的には気が付いた。なぜなら、上場していないということは、他者から数によって買収される恐れが皆無だということだから。株式が市場に売りに出されていないから、他者は絶対にその会社に手を出せない。まぁ逆に悲観的に見れば、経営者(陣)の独自判断ですぐに売り渡す危険性が無いとは言えないけれど…。
これ(非上場)をどう解釈するか?
「自分は『タキイ種苗』さんを信じる。買収されない為、防衛の為の非上場なのだ」と。
普通に考えて、ここまで大きな企業になったら上場する。キャピタルゲインが半端ないから。それでもしない理由は「絶対に他人に売り渡したくない」からという理由以外に考えられない。日本の民間種苗会社の矜恃を感じる。
「ちなみに、現在までに日本国内の種苗会社が海外の企業に買収された例は1社のみ。ただし、その会社には三菱商事さんが出資しているので、『外資に買われた!』と純粋には言い切れない」(後述:参考資料参照)と。

③ 海外の世界的な企業に全く負けていない日本の種苗会社(世界で売れている日本の種):「モンサントによる寡占」の危険性を叫ぶのは別に構わないのだが、日本の種苗会社による「海外における寡占に近い状態」は叫ばなくてよいの?
種苗市場において世界シェア5%を誇る「サカタの種」さんの、ブロッコリーにおける世界シェアは、なんと65%(後述:参考資料参照)!前述の「タキイ種苗」さんのキャベツにおけるインドネシアでのシェアは75%。これらの日本企業、叩かれてる?叩かれてないよね。むしろ、感謝されてる。「病気に強い、収穫量の多い、味の良い種をありがとう」と。これこそが、民間の種苗会社さんがマーケットで凌ぎを削っている理由。
日本の民間種苗会社が世界でそれだけのシェアを誇っているのに、その権利を海外企業に売り渡す?
「普通は売らないよね」と。
結局「適地適作」である。ピンポイントで、そこに適合した品種を作り出せるかに種苗会社さんは、命をかけている。あるいはフック(世の中の興味を引くもの)を作るとか、業界で生き残る手段としての、「この野菜(品目)にかける」みたいなドフェチが生き延びる世界(笑)
餅は餅屋でも、さらに特別な餅に特化した餅屋はいる。それこそが、企業の生き延びる道。種屋さんもしかり。
「だから、世界規模で同時並行で一社が寡占して種苗開発をやるなんて絶対に無理」と。
しかし、農業界における最大の問題は「近い将来、農産物は世界中の農家がフル稼働して供給しても、需要に追いつかない可能性が高くなるであろう」ということ。それを補う為に、種苗会社の合併や再編、買収という流れは加速するだろうという予想はつく。そんな中、多くの敵を作りかねない「買収」より「クロスライセンス(契約によって特許や技術を他社に提供すること)」が一般的になりうることは容易に想像できる。
「わざわざ世界的な大問題になりそうな『買収』なんて、リスクを背負ってまで無理にやる必要は全くない」と。
事実、モンサントを買収したバイエルが、モンサントの抱える訴訟問題などで、人員削減などの構造改革をせざるを得ない状況に苦しんでいることからも、買収はリスクを伴うことは明白。

④モンサントでさえオーガニック:実は今、モンサントでさえオーガニックに注力している(後述:参考資料参照)。要は、経済活動を行なっている企業は、どんな大企業であってもマーケットの声は無視できないということ。
「モンサントならモンサントらしくGMO(遺伝子組換え)種子だけ作ってろよ!」というのは、あまりにも傲慢で的外れ。企業活動だから、儲からないと次に繋がらない。アメリカではオーガニック市場が年間4兆円規模になると言われている(後述:参考資料参照)。これを種苗マーケットに換算すると、種苗費が成果の(1粒から1個しか採れないようなキャベツなどの野菜は約3%、きゅうりなどのように1粒からたくさん採れるのは約1%なので、無理矢理平均して)約2%として800億円。①で述べた日本における野菜の種子市場の規模とほぼ同じ。
「モンサントがどちらに投資するかなんて明白だよね」と。

長くなったが、要は① 日本における野菜種子の市場規模は、世界の全種子市場から見ると小さいので買収する魅力は低い。② 日本における種苗会社の数は多く、また独立性が高く全てが買収される可能性は低い。③ 海外の世界的な企業に全く負けていない日本の種苗会社は、おそらく身売りなどしない。④ モンサントでさえオーガニック市場に注視していて、そのマーケットは日本における野菜種子の市場規模と同じぐらい。
「という説明で、普通に考えれば日本の優秀な民間種苗会社が世界的な企業一社に全て買い取られ、寡占されることなど『限りなく0(ゼロ)に近い』という結論だ」と。
最後に、資本主義の歴史の中で、どんなマーケットにおいても、一社寡占という状態になったことは、無かったと言っても過言ではない。
「実は、このことこそが、皆が一番安心できるのではないかなぁ」とも。娘ながら正直、今回の話は理解できたが、農業の話じゃなくて経済の話なので、つまらなかった(苦笑)

ここから先は、マーケットの話しを少し。興味の無い方は読み飛ばしてね。
「寡占」とは、どういう状態なのか?一般的には、そのシェアが40%を超えた時に「寡占状態」と言われる。
ちなみに、その市場における上位複数社で40%を超す「複占」となっているマーケットは少なくない。例えば世界的には、コーラ・航空機・パソコンのオペレーティングシステムなど。日本においては、携帯電話のキャリア・ビール・宅配便など。
さて、マーケティングの世界で有名な「ランチェスターの法則(ランチェスター戦略)」の中に「クープマンモデル」というのがある。企業はマーケット戦略を立案する上で、その目標値を設定する(後述:参考資料参照)。そこには、75%・40%・25%(わかりやすくする為に数字は丸めてある)という「三大目標数値」がある。これを自社の現在のシェアと比較して、短期・中期・長期のシェアアップ目標を策定する基準値とするのが常識。
シェア75%は、ほぼ独り勝ち状態。大きなマーケットでこれを達成しているのは、ハンバーガーにおける「マクドナルド」さんぐらい。なぜなら、大きなマーケットでは独占禁止法があり、現実的な目標になりえないので、ここまで目指す企業は無いから。
ただこれが、ニッチな市場なら、かなりある(後述:参考資料参照)。身近なところでは、日本のお茶漬け市場の「永谷園」さん。そのシェアは76%。ちなみに2位のシェアは5%。
そこまできたのに、何故シェア100%を狙わないのか?
それは、一社寡占は必ずしも成長性・収益性・安全性が高いとはいえないから。シェア100%とはライバルがいない無競争。そういう市場は縮小する宿命にあり、成長性が高いとはいえない。
「競争があるから、各社が製品開発や営業活動などを積極的に行い、需要が活性化され、市場が拡大することになる」と。
次に収益性の面から見ても、残る25%のマーケットは、一般的に需要規模が小さすぎる相手や、移動効率が悪い相手。そのような相手を顧客にする為に、開発・販促・営業コストをかける必要があるか?
「無いなっ!」と。
最後に安全性の点で、企業にとって100%寡占の状態が良いとは言い切れない。例えば、農家が野菜の種を購入する場合、1社からしか購入できないとなると、農家にとってはリスクになる。極端な話し、値段が10倍で、美味しくもない野菜の種苗を買いたいなんて絶対思わない。遺伝子組換えなんてなおさら!そういう場合、普通農家は他の種苗会社を探す。つまり一社寡占は、市場原理に合わないし、逆にマーケットそのものを失う恐れがあるということ。
「浮気する人、多いよねー」と。娘ながら、ふざけんな!(怒)
そして、「ランチェスターの法則(ランチェスター戦略)」では「弱者は一騎討ちで市場参入せよ」というセオリーがある。一社寡占マーケットならライバルは一社。つまり、勝率五割の勝負になる。弱者にとっては、最高の狙い目ということ。
以上のことから、100%寡占は決して良い状態とはいえない。むしろ、普通の会社は恐れる。
つまり、100%にはならないし、普通は狙わない。なので、一社寡占は基本的にはありえない。さらに、種苗という大市場で、人の生命にかかわる産業である限り、ほぼ有り得ないと言っても過言ではない。
ところで、色々と噂のモンサントの世界シェアは何%だった?
「わずか、22%だよね(前回記事:参考資料参照)。それでも不安ですか?」と。
「それでも心配。他人がなにを考えているかなど誰にもわからない。あの会社なら100%狙うかもしれないよね…。」
その気持ちはわからないでもない。人の恐怖心につけ込んだ、種苗法改正反対派の主張があまりにも多いから。
なら、自分はこうとしか言えない。
「合理主義の権化のような会社は、そんな目標設定しない!万が一狙ってくるとして、やるならやってみろ!絶対に無理だから!」と。娘ながら、「おーっ、難しかったし、最後は勢いだけの精神論だけれど、なんだか腑に落ちた」ヽ(´▽`)/

参考資料(以下参照)
・「サカタのタネ」さんのホームページにある種子市場の規模

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・「日本種苗新聞」さんの日本の種苗会社一覧→面白いから是非お時間のある時に、各種苗会社さんのホームページを是非見てみてね(きちんとリンクを貼ってくれているので、各会社さんのホームページに飛べます)!
https://www.seed-news.co.jp/link2/

・「タキイ種苗」さんの会社概要

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・フランスの企業に買収された「みかど協和」さんの会社概要及び「三菱商事」さんの話

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・「サカタのタネ」さんのホームページにある野菜種子のシェア

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・モンサントの動き(2016.12.30.)

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・ランチェスターの法則(ランチェスター戦略)における「7つの市場シェア目標値(クープマンモデル)」→シェア22%のモンサントでさえ、「並列的上位シェア」のレベル♪

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・世界シェアトップの日本企業(世界の企業を探したのですが、無かったのでとりあえず…。)→見てわかる通り、これだけのシェアを獲得できるのは、基本的にほぼニッチ市場のみですね(笑)
世界シェアトップの日本企業一覧 – 日本の技術と世界シェア・国内シェア

http://share.j-treasure.com/sekaisyeaitiran/

引用文献
「ランチェスターの法則(ランチェスター戦略)」

今回も長くなりましたが、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました♪
父に代わって御礼申し上げます。
「あくまでも、皆様のご参考になれば」とのことです。

追伸:今国会での成立は見送りになるようですね…。「散々危険性は低いと述べてきたけれど、正直法案成立までの間は日本の種苗会社の権利が守られなくなるから、結果として体力が弱まる方向に進み、逆にモンサントに買収される可能性が高くなるってことに、反対派の人達は何故気が付かないのかなぁー。農家が苦しめられてかわいそうってことなんかより、実はそこを一番懸念してるんだよね⁇ 正直改正された方が、農家は苦しくなんてならないのにね(苦笑)」とポツリ。
さらに、「最近のコウのTwitterのTL見ていて気が付いたんだけど、種苗法改正案に反対している人達は、日本の種苗会社が強くなったりグローバル化することにも、おそらく反対なんだね…。極論すると『江戸時代以前の農業に農家は戻れっ!』て言われているようで、かなりショック(泣)それこそ日本の農業崩壊に繋がるのにね(涙)」と。


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