不便は手間だが役に立つ
皆さん、「甘栗むいちゃいました☆」食べたことありますか?
あれいいですよね。
栗の皮を剥く手間が無いのでバクバク食べちゃいます。
対して「ねるねるねるね」は食べたことありますか?
味はともかく、自分で材料を入れて、ねって食べるあの楽しさ。
子供の頃はよく食べたものです。
一見、なんの関係もなさそうなこの2つの商品ですが、実は真逆の商品価値を持っている商品なんです。
それが
・手間を省いているか(甘栗)
・あえて手間を加えているか(ねるね)
ということです。
世の中はどんどん便利な方向に進んでいて、様々なめんどくさいこと、手間を無くした商品が生まれています。
そう考えると「甘栗むいちゃいました」は時代の流れに沿った商品ですが、「ねるねるねるね」はどうでしょう。
あえて手間を増やしていますよね?
時代の流れ的に考えるとねるねるねるねは
「ねるねるねるね練っときました☆チェケラ」
(誰?)
じゃないとおかしいはずなんですが、なぜかあえて手間をかけさせる商品が人気で、売れています。
この不思議な現象には名前がありまして、それが「不便益」というものです。
今回の記事は、あえて不便にすることで価値が生まれる「不便益」という考え方を、私が読んだ本を元に簡単に解説していきます。
よろしければ最後まで見ていってください。
参考文献↓
初めに
皆さんこんにちは。元損害保険会社員のKoh+です。
今回は私が以前に読んだ本に、とても面白い考え方があったので、そちらをご紹介いたします。
それがこちら
「タイトルが長いんじゃあ」と心の中のノブが言っとります。
しかし、作者いわく、この長いタイトルにも「不便益」の効果が入っているとのことのようです。
それは、あえて長過ぎるタイトルをつけることで、お客さんの興味を引き、手にとってもらうようにするとのこと。
確かに本で溢れ返っている世の中では、表紙のデザインや帯、タイトルのキャッチーさで手に取るか否かというのは大切な要素ですね。
こんな感じでこの本には
・あえて不便さを取り入れた商品の実例
・便利にしすぎた結果、価値を失ってしまったもの
・不便益を実装したシステムの紹介
という非常に興味深い内容が書かれています。
それでは「不便益」のおもしろさを一緒に見ていきましょう。
【実例】不便益を使ったもの
冒頭で「不便益」使った代表的な実例「ねるねるねるね」をご紹介しましたが、世の中にはあえて不便さを取り入れたものが存在します。
それがこちら
あえてウォーリーを見つけさせるという不便さを実装することが、この本の価値になっていますね。
時代の流れに沿うのであれば
「ウォーリー探しときました☆」
じゃないとおかしいんですが(暴論)
この本は、読者にウォーリーを探させることで、その探す行為が楽しいという付加価値を与えています。
こんな感じで考えると他にも
・ダメージジーンズ
(あえてダメージを与えることで自分だけ感を生み出す)
・紙の辞書
(電子辞書があるのにあえて紙を使わせることで、単語を調べた時に他の単語も知れる)
・おやつ300円まで
(おやつに制限を与えることで、制限内で買ったおやつは家で食べるよりも特別感が出る)
こんな感じで、実は私達の身の回りにもあえて「不便さ」を取り入れたものは、たくさんあるんです。
良かったら考えてみてください。
便利にした結果、価値を失った物たち
次に、世の中の流れを汲み取りすぎた結果、本来の価値を失ってしまったものを紹介します。
そんな物あるのか?と思うかも知れませんが、あるんです!
それがこれら↓
・富士山エレベーター
あくまで仮定ですが、富士山にエレベーターが実装されたとすると、富士山に登る人はおそらく激減するでしょう。それは山登りというもの自体が「自分の足で苦労して時間をかけて登る」という不便なプロセスを楽しむという行為だからです。
・絶対ヒットが打てるバット(野球)
野球のおもしろさゼロ
・レーザーレーサー(水着)
早すぎた結果使用禁止
・厚底シューズ(マラソン)
記録出過ぎた結果、大きな大会で使用禁止
こんな感じで、プロセス自体に価値があるものはそこをカットした瞬間何の意味もなくなりますね。
スポーツも似ていて、便利過ぎる道具はスポーツのおもしろさを奪ってしまいます。
スポーツってそう考えると制限の中で戦うから面白いことに気付かされます。
不便益をあえて狙った実例
ここからは、作者が「これ、不便益を狙って取り入れとるな」と思った商品、というよりはシステムに近いものを紹介します。
【バリアアリー 夢のみずうみ村(介護)】
あえて小さな段差、急すぎる階段を残す。
日常に小さな障害をあえて残す、設けることで老化、認知症を遅らせる。
誰の目から見ても明らかに危険な階段は、みんなが必ず慎重になるため、一度も怪我人がない。
※ただし危険かそうじゃないかを見極める人員が必要になってしまうのがネック
バリアフリーが叫ばれている世の中で、あえてバリアアリーにします。
これは世の中的になんとも塩梅が難しいところなんですが、介護施設等の限られた空間であれば実現可能です。
【田中さんツアー すごろくツアー】
・「田中さん」しか参加できないツアー
運転手もガイドもお客さんも田中、行き先も田中関連
・碁盤のマスのように区切られた京都の街を、「すごろく」に見立ててサイコロで行き先を決める
一見馬鹿みたいな企画ですが、こういう制限を付けられて参加した企画は、おそらく一生記憶に残ると思いますし、人に話したくなるおもしろさがあります。
ツアー旅行自体が、自分で探すという旅の醍醐味である「プロセス」を除外してしまっているので、そこにプラスする新しい価値はなにかないか、ということで生み出された企画なんだと思います。
その他
・文章の中にあえて漢字の間違いがあるワープロ
(漢字形状記憶の強化)
・ゴミを拾わないロボット
(ゴミを見つけてその周りをぐるぐるまわり、こっちを見つめてくる)
・あえて詳細なルートを表示しないナビ
(ざっくりとした場所しか表示しないことで、自分の足で探すという体験を思い出にする)
・いきづらいリゾート、星野リゾート
(陸路では行けなく、小舟でしか行けない。特別感)
個人的にはゴミを拾わないロボットがツボです。
最後に
こんな感じでこの本には
・不便益の概念
・実例
・便利過ぎる世の中への警鐘
などの要素が書かれています。
※注意点として、この作者はパソコンも使うし車も乗る。懐古主義に戻ろうというわけではありません。
京大工学部の教授の方なので、意外と難しい話がありますが、実例や図なども散りばめられているので結構サクッと読めます。
無駄なことを削ぎ落としどんどん便利になっていく社会ですが、気が付かないうちに失ってしまったものも数多くあります。
この本をきっかけに、不便さの中にあった本当の価値に気づいてみてはいかがでしょうか。
というわけで今回は以上になります。
最後まで見ていただきありがとうございました。
それではまた次回お会いいたしましょう。
余談ですが、冒頭の「甘栗むいちゃいました」と「ねるねるねるね」は、実は同じ会社が出している商品なんです。おもろいですね。
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