れいわ新選組さようなら

今年の初めからFBの「れいわ新撰組を国会へ」という会員数1万2千人のグループに入っていましたが、今日で退会します。れいわに見切りを付けたのです。



れいわ新選組は、現在の日本でもっとも貧困層の利益を代弁する政党であることは承知しています。私は、そもそも亡くなった父が米軍横田基地訴訟弁護団初代事務局長の岩崎修であったし、私自身石巻という今の日本の矛盾が集約されたような地方都市で「心療内科」を掲げながら多くの労働問題で心身を病んだ人々を何とかして救おうとする医者ですから、貧困層の利益を代表するれいわ新選組は社会に必要な集団であり、政党だと考えてきました。



しかしFBグループ「れいわ新撰組を国会へ」に投稿したりグループの会員とやりとりしている内に、れいわ新選組というのはどうやら非常に危険な存在になり得るものだと感じるようになりました。



れいわ新撰組を支持する人々は主に貧困層ですが、貧困層であるが故に勉学の機会が少なく、きちんとした知識や情報判断力を身につける方法を学べなかった人々です。多くの貧困層は、知的にも貧困なのです。それは貧困層にとって知性や知識を身につけるチャンスが限られているからなのですが、そういう人々でも今ネットは利用出来るのです。


ネットに転がっている様々な情報は、まさにピンキリです。しかし「ネット情報に於いては嘘、デマ、金儲けを目的とする危険な情報ほど人々を説得する力が強く、事実、真実、信憑性の高い情報ほどその逆である」という法則が成り立ちます。そして、貧困であり、そのために知的にも貧困になってしまった人々は、そう言う「情報を擦り込む技に長けている嘘、デマ、金儲けのための危険な情報」にいともたやすく引き込まれます。そうなるとその人達は、本当の検証された知識を持つ専門家を馬鹿にしたり、無視したり、はては敵視し始めるのです。



お前は医者で医療の専門家と言うが、俺たちはYouTubeやXやインスタグラムでいくらでも医学情報を知ることが出来る、という呆然とする主張をしてしまいます。いくら「医学というものは、背景になる生物学、化学などを学び、その上で解剖学、組織学、薬理学、病理学、免疫学など基礎医学を学び、さらに臨床医学を学んだ上で臨床研修をし、それからさらに医学研究に携わって医学情報の探し方や見分け方から実際にエビデンスを作るやり方を学んで初め出来るものなんです」と説明しても、「そんな考えはもう古い。今はYouTubeやインスタグラムで医学情報が手に入る時代だ。お前の医療リテラシーは低いから、山本太郎にきけ」と主張してしまいます。山本太郎という人がどの様な人であれ、30年の臨床経験があり、医学英論文を48本書いて、JAMAにコメントが採用される私が山本太郎より医学リテラシーが低いという事はあり得ませんと言ったのですが、その人はそもそもJAMAが何か理解出来ませんでした。



専門家に対してはどう接すべきかいう事も、そういう人々は理解していないし、むしろ敢えて理解することを拒否します。



高血圧や糖尿病の基準値が変わったのは医者が製薬会社と癒着して金儲けをするために変えたのだと主張する人に、「製薬会社とガイドラインを作るようなレベルの医者の癒着が強かったのはむしろ昔です。今はそういうバイアスを排除するために世界的にガイドライン作成法が標準化され、昔よりずっとガイドラインの信憑性は増しています」と説明したら、そのひとは「じゃあそれで病人は減ったんですか」と返してきました。



それで、私は「ああ、この人の知識や理解力は極めて低いんだな」と気がつき、「病人というものが減ったかどうかというのは質問として無意味です。一生に一度も病気をしない人はいませんから、病人の数はつまり人口と同じです。ですから世界の病人は増えたか減ったかと言われたらそれは増えました。世界人口が増えたからです。一方日本の病人はどうかと言われたらそれは減りました。日本の人口が減りましたから。でもそういうやりとりって意味が無いですよね。病人と言わずに、例えば高血圧は減ったか、糖尿病は減ったかなどと質問するべきです」と言いました。そうしたらその人が「じゃあ高血圧はどうなんだ、糖尿病はどうなんだ、脳卒中はどうなんだ」と訊いてきたので、私は信頼すべきサイトの年次統計グラフを示して、高血圧も糖尿病も、ある時期を境に日本では減少傾向に転じています。脳卒中はかなり前から、年々減少しています」と説明しました。そうしたらその人の返信が振るっていました。「そうですか、あなたなりのご回答ありがとうございます」。



その人の脳内では、信憑性の高い情報源に基づく専門家の指摘は「あなたなりのご回答」に変換されてしまったのです。

こういう事例はれいわ新選組支持者と会話していると、枚挙にいとまがありません。



専門性を否定し、忌避した社会がたどった実例はいくつか存在します。文化大革命時代の中国、カンボジアのポルポト政権、コロナ禍の日本などです。文化大革命時代の中国では原子物理学者や医学研究者などがこぞって持ち場を外され、地方で畑を耕させられました。ポルポト政権はもっと簡単に、専門家は皆殺しにしました。コロナ禍に於いて日本政府は専門家の具申を無視したり面倒なものとして遠ざけたりしました。どのケースでも、結果は悲惨でした。中国が改革解放に転じた時、資本主義の仕組みを取り入れ、外資を導入したことなどはよく知られていますが、あのとき下放されていた専門家を元の立場に戻し、専門家に専門家の仕事をやらせたことも、実は非常に大きな意味があったのです。



貧困な人が学習の機会を奪われ、知識や知性を磨くことが出来ないのは貧困なるが故の悲劇です。そういう人には収入と同時に学習の機会を与えなければなりません。しかしそういう人々が専門性の高い知識を持つ人間を無視したり敵視したり、系統的な学習を積んだ専門家の知識よりYouTubeやインスタグラムの情報の方が正しいと主張し始めると、これは危険です。そしてれいわ新選組の支持者には、残炎ながらそういう人の割合が際立って高いと言わざるを得ません。そういう人々が支持し、押し上げようとする政治集団というのは、社会にとって危険な存在になり得ます。社会を根底から破壊してしまいます。それが理解出来たので、私は今日を限りにれいわ新選組への支持を止め、むしろ人々にはれいわ新選組というのは危険な政治集団だから支持してはいけませんと話すことにします。



れいわ新選組、さようなら。

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