就労の条件

今日、ある患者さんがあゆみ野クリニックを卒業されました。ハローワークから「就労可能」という診断書を出すよう言われたと言って書いてくださいと頼まれたのです。無論、私はその書類に「現在の状態は完治であり、就労に一切差し支えはない」と書きました。その次に、「発症の原因と経過、及び就業に制限が必要ならそれを記せ」という記載欄があったので、こう書いたのです。



この人はあるチェーンのフランチャイズ店で働いていたが、ある時オーナー店長が夜逃げしてしまった。そうしたらチェーン本部の人間がやってきて、この人に「これからはあなたがこの店の責任者だ」と言い、店の経営を押し付けた。それでこの人は困り果てて、出勤しようとすると動悸、冷や汗、吐き気、眩暈など「心因反応」を生じるようになった。そこで私は「店の経営に責任を持つのはオーナーだけだ。そのオーナーが夜逃げした以上、その店はすでに事実上潰れている。従業員であるあなたがオーナーが夜逃げした店の経営の責任を負うなんていう馬鹿げた話はない。その店はすでに事実上倒産しているんだから、さっさと辞めなさい」と忠告し、本人ははたと気がついてその通り退職した。それでこの人は完治した。つまりこの人はそういう無茶苦茶な職場でなければ、どこでも全く普通に勤務が可能であり、就業に制限をつけるとしたらそれは「まともな職場であること」というだけである。



めでたし、めでたし。

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