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ドットレカ1周年記念インタビュー

こちらはドット絵 Advent Calender 2022、14日目の記事です。
ほかの方の記事も楽しい内容となっておりますので、ぜひ見に行ってみてください🎄

ドット絵好きのみなさん、こんにちは! こぐみと申します。
ドットレカが世に出てから2022年11月で1周年ということで、自身がデザイン参加したときのことも兼ねて記事にしてみたいと思い、製作をとりまとめてくださっている近藤永理さんにインタビューを行いました。
この記事を読めば、ドットレカを知っている人は裏話を、まだ知らなかった人はドットレカの凄さを知ることができる! はず!
(この記事は通しで読み終えるまで約20分かかります。時間がない方は目次を活用してください!
これは読んで〜! なオススメは、「見せびらかしたくなるドットレカ」「コラボじゃないのにコラボ感」「ドッターひとり1作品の理由」「ドットレカの存在とは」です。)


ドットレカについて

あひるひつじ(@ahiru_hitsuji)さん原案、近藤永理さん製作・販売の、ドット絵で構成されたカード。透明のプラスチック素材のカードに印刷し、数枚重ね合わせて作られる。
カードに印刷されるドット絵は、さまざまなドッター(*1)が150px✕90pxという共通のピクセル数のなかで、各々が自由にデザインしており、1作品がだいたい3つのレイヤーから構成されている。
描画部分の透過不透過によって、別の絵と組み合わせて新しい作品を生み出せるという特徴がある。
2021/11/21、東京コミティア138(*2)で初披露。
ドットレカのX(旧Twitter)画像投稿ハッシュタグである #Myドットレカ から、いろんな人のお気に入りの組み合わせなどを見ることができる。
インエデさんのイベント出展時に現地で、もしくはオンラインショップ(Booth)にて購入可能。
▽Boothリンク
(在)さいくろぷす - Booth

*1 ドッター
ドット絵を作成するドット絵師のこと。
この記事ではドット絵メインでなくても、ドット絵を作っている人のことを指す。
*2 COMITIA(コミティア)
年に4回開催される、創作に限定した同人誌即売会。東京以外の都市でも開催されている。

Weblio辞典・Wikipediaより引用

インタビュー

・聞き手
こぐみ(@kogummy593)
単独行動をしがちなドッター。ピクセルパターンや青っぽい絵を得意とする。グミが好き、みかんゼリーはもっと好き。
・話し手
近藤永理(@eiri_kondo)
インターネットエデンさんの中の人。とてもフランク。お散歩をよくしており、ドッターとの交流が深い。歩くドット絵百科事典(こぐみ談)。お笑い好き。
インターネットエデン(@internet_Eden)
近藤永理さんが絵を描くときの姿。来るもの拒まず。

魅力的なドットレカのはじまり

こぐみ(以下:こぐみ)
 よろしくお願いします!
近藤永理/インターネットエデン(以下:近藤/インエデ)
 はい!
こぐみ
 まず、ドット絵に限らずなんですが、デジタル絵は画面上で1枚の絵だけが作品そのものであるところ、ドットレカはそれが数枚のレイヤーに分けられているのが前提で、レイヤー1枚ごとを1つの作品と捉えることもできるし、ほかの作品と組み合わせられるのがすごく贅沢な遊びをしているなと感じていて。重ねると新しい作品になるって言うのが斬新だなぁと。
 確か、ちゃおで連載されていたきらレボの付録で、ドットレカのような仕組みのミルフィーカード(*3)は見たことがあったんですけど。

*3 ミルフィーカード
タカラトミーが2006年から発売している着せ替え遊び用のトレーディングカードの商標。各アイテムが描かれた半透明のカードを重ね合わせて、着せ替え遊びを行う。
きらりん☆レボリューションや劇場版どうぶつの森、アーケードゲームのプリパラなどプリティーシリーズのグッズとして発売されていた。

Wikipediaより引用

近藤/インエデ
 うんうん!
こぐみ
 そのレイヤー1枚だけで見てもさまになるように作っている方が多いんじゃないかなと感じて、それがすごく…いいなぁって。
近藤/インエデ
 えへへ…ありがとうございます。
こぐみ
 デザインを出す側としても、RGBカラーで提出できるっていうのと、自分で在庫を持たずに自分の作品を世に出せるっていうのがすごく手軽で、そういう面でもすごく魅力的だと思って。
近藤/インエデ
 あら、うれしい。
こぐみ
 そんなドットレカなんですが、インエデさんがドットレカを作ることになったきっかけが知りたくて。
近藤/インエデ
 単純に、ドットレカのアイデアを見たとき、現物を見てみたいなって思って。
 ただ、あひるひつじと仲がいいんですけど、それゆえに、あひるひつじ自身が忙しいことがひしひしと伝わってきて。そこにドットレカが入る隙間は絶対ないだろうなって。

こぐみ
 そうですね。
近藤/インエデ
 みんながお願いしたら、もしかしたらやってくれたかもしれないけど、そこで待つことができなくて、ぼくが。じゃあ自分でやったほうが早いんじゃないかと。
 2021年4月から、本業が落ち着いて時間の余裕ができたので、それが大きいかな。
こぐみ
 うんうん。
近藤/インエデ
 でも、ドットレカって名前を後から検索したら、シロス(@shiros_shin)さんが以前ドットレカというものを出していて。

こぐみ
 あ〜、それは私も見ました。
近藤/インエデ
 「あっ、やべー」って思ったけど。ただ、出された後はあまり販売とかされていなさそうだったので、5年前はさすがにその、時効であってくれって思うんですけど。
 なにか問題あれば、ぼく宛てに連絡ください…!
 あと、こちらで出しているドットレカはあまりトレカ感がないので、シロスさんのほうがトレカではあるなって思いながらも。
こぐみ
 まぁ、トレカかと聞かれるとたしかに?
近藤/インエデ
 トレーディング要素がないかわりに、1周年からランダム要素を入れようかなって思って。どれにしようか悩む時間を埋めてもらえるように。
 ちょっとずつ集めてもらうとか、ひとつはお気に入りがあるけど、もうひとつは遊ぶために欲しいとか、いい意味でどれでもいいという人向けに、ちょっとガチャガチャを作ってみて。
こぐみ
 だいたいのドットレカがほかの作品とも相性よくて、ランダムはいいなと思います。
 そういえばリアルガチャガチャ作ってましたね。

近藤/インエデ
 ちょっと脱線しちゃったけど、自分で動かないと、ドットレカは世に生まれないなってうすーく悟ったので、理由はそれだけですかね。自分がドットレカを見てみたいって。
こぐみ
 うんうん。熱意と、余裕ができたからこそ、頭のすみにあったのをやってみようという感じだったんですね。
近藤/インエデ
 ですねですね~。
こぐみ
 おかげでいい作品をたくさんゲットできたので、いや、ありがたいですね。
近藤/インエデ
 よかったです! インタビューまで受けることになるとは…。
こぐみ
 あはは! でも、ドットレカはもっと広まって、たくさん新しいものができてほしいなって思います。
近藤/インエデ
 それは本当にそう思います。

見せびらかしたくなるドットレカ

こぐみ
 最初にできあがってきたときってどうでした?
近藤/インエデ
 「これは天才だ」と思いました。フィジカルってやっぱりすごいなって思いましたね。
 一番最初、コミティアに出すと決めたとき、どういう風に透明の部分が印刷されるかチェックしてみようと思って、あひるひつじに、「お前が言い出しっぺなんだからお前が絵を描け」って言って、とりあえず一種類描いてもらったんですね。やりとりの面では、それを撮って、こういう風なものを作るんですけどお願いできますかってみなさんに見せて頼もうかと。
 それで最初に“工事現場”を書いてもらって、そのドットレカが手元に届いたときに、「あ、作ってよかったな」ってすごい思って。

こぐみ
 あー! あっちが最初なんですね。
近藤/インエデ
 あれが最初なんです。
 本当に、うちら世代だとミルフィーカードに触れてきてたから、なんとなく分かるじゃんって思ってたんですけど、それを見たことある人でも、それを凌駕するフィジカルの空気感とかがあって、カード1枚ずつにプラスチックの厚みがあることで遠近感があるとか、ピクセルの粒感が重なってる感じとか、デジタルのデータで疑似的に体験することはできるけれど、それじゃない! まったく違う、なにかしらの良さを持っていて、なんとも言葉にできない。なんか、「良さ」としか言いようがない気持ちになっちゃって、これはみんなに、ひとりでも多くの人間に見せびらかしたいと思って。
 …言語化できないんだよなぁ、んふふふふ。たぶんみなさんが、ドットレカの実物を手に入れた瞬間と同じ気持ちになりました。「うお~!」っていう。
こぐみ
 「なんだこれ~!」って感じですよね。
近藤/インエデ
 うん。全然知ってたり、頭では理屈を理解したりしているけど、ただただ、愛おしさ的な、愛着みたいな、なんとも言えない気持ちに…。みなさんが思った気持ちと少しもたがわず、手元に来たあの気持ち、今でもちょっと忘れられない。
こぐみ
 やっぱり、自分でも画面上で重ねて想像はしてたはずだけど、実物を見たら私も「わ~なんかすごいのできあがってきた!」って思って。だからこそ、今持ってる5種類以上を手に入れたらどうなっちゃうんだろうって思って全部手に入れちゃった。
 ひとりでも多くの人に見せびらかしたいっていうの、すごい分かりますね。

サイズが150px✕90pxなのはなぜ?

こぐみ
 ピクセル数を決めたのって、なにか基準とかあったんですか?
近藤/インエデ
 あひるひつじに聞いたら、「自分は名刺作るとき150px✕90pxだから、このサイズでいけんじゃない?」って言われて、「お前のことマジで信じるからな? 言ったな? 言ったぞおい」って500回くらい言って。
こぐみ
 めっちゃ言ってる!
近藤/インエデ
 でも、いざ作ろうとしたら、それに合うカードがなくて、いったいお前はどこの会社のどのサイズで作ってるんだよっていうくらい、ちょうどいい印刷屋さんがなくて。これを一体どういう規格で縦横比が合うように調節するかっていうのがすごく難しかったです。
 もう本当にピクセル数はあひるひつじが言ったのをそのまま採用しまして。
こぐみ
 結果的にちょうどいいサイズですよね。
近藤/インエデ
 ただ、人によってはいざ描くとなったときに、「あぁなんか思ったサイズ感じゃない」ということがやっぱりあるみたいで。
こぐみ
 たしかに、このサイズで人物描くのは難しいですよね。
近藤/インエデ
 ですね。大きいサイズで女の子を描く人とかだと、結構工夫して女の子が大きくなっているとかして、そういう魅せ方もあるんだなと。
こぐみ
 あ〜、たしかに。どーんと描かれているドットレカもありますね。
近藤/インエデ
 なかなか面白いですよね、そういうのも。人がいなくなってきたり、構図とかによって女の子が大きくなっていたり、動物だけだったり、いろいろ種類も増えて。
 結果的には、あんまり無駄打ちしなくていいようなサイズ感で、ぼくはすごい気に入っております。
こぐみ
 そうですね、妙な余白が生まれづらいサイズって感じがしますね。
近藤/インエデ
 ですね、ひとつひとつ大事に設定しないと、雑に使うとすぐいっぱいになっちゃうので。

いろんなドッターの作品と組み合わせ

こぐみ
 私が作ったやつは、最初カクテルか人物か迷って、インエデさんにDM送ったじゃないですか。

近藤/インエデ
 はい、はいはい。
こぐみ
 あれ、自分の作品だけとして出すならまぁいいかってなるのが、せっかくドットレカで出すなら、ドットレカの作品として作りたいと思って。
 人によってはいろんな、ほかの作品との相性を考える人もいるだろうし、ばっちり世界観を出してる人もいるし、見てるとなんとなく、あ、これ配置考えたのかなみたいなのが見えるのがあって、そこも面白いなって。
近藤/インエデ
 意外な組み合わせが見つかることがあるので、やっぱりそういうところも大事にしたいから、あんまり「こうしてください!」っていう、取り決め的なことは行わないようにはしてます。たま~にこう、「お? ほんまにそれでいくんか?」っていうこともあって、そういう時だけちょっとお声がけはしてますけど。
 完全にぼくのただのドット宗教なんですけど、ピクセルがそこにしかないと成立しない絵というのが一番好きで。
こぐみ
 うん。
近藤/インエデ
 お絵かきBBS(*4)って呼ばれている掲示板みたいなものが昔あったんですけど、画質を落としてみんなでシェアするっていう特性があって、そのツールとしてドット絵っぽくなっているっていうか、点々で表現されている、雰囲気でいうとよく見たら四角でできているっていうような、ペンのシャッとなってる感じというか、粗さみたいなものが突き抜けているとかっこいいなと感じて、そういう絵柄も好きは好きなんです。
 ただ、ドットレカのピクセルサイズで突き抜けた感じを出すっていうのは難しいと思うんですよね。

*4 お絵かきBBS(お絵かき掲示板)
備え付けの描画機能を用いた、作品投稿が可能な交流掲示板のこと。

ニコニコ大百科より引用

こぐみ
 あ~、うんうんうん。
近藤/インエデ
 そうすると、突き抜けてはいないけど荒々しさが残る絵になってしまって、荒々しさが残る絵も肯定したい自分と、すべてのレイヤーが荒々しすぎると、ほかの作品が入る余地や親和性がなくなってしまいそうな雰囲気だと、ひとこと言わせてもらうことはあります。
こぐみ
 もうそれだけで作品が完結してしまう感じですね。
近藤/インエデ
 ドットレカのコンセプトとして、ほかのものと組み替えて遊ぶっていうのがあるので、そちらをご理解していただいたうえでこちらを提出していただくなら大丈夫です! と一応一声かけさせていただいてはいるんですけど、それでも「出します!」という声があれば、それはその作品に必要なものだと思うんです。
 ただ、「もうちょっと考えてみます」って言って持ち帰っていただいたあとに、すごく素敵なものをいただいて、「これ、これよこれ~! この丁寧さ!」って思って、それは完全に裏回しでリクエストしてるようなものなんですけど。
こぐみ
 ふふっ。
近藤/インエデ
 コンセプトを伝えると、ほかのものに合うようにっていうことをベースに再度考えてもらえているのか、すごくその、2回目に出していただく案を見ると、「あっ、一声かけてよかった」ってなります。
 マジで関係ない話になってしまった。
こぐみ
 いや、超裏話ですよこれ。
近藤/インエデ
 こうやってどんどん逆転してくんですよ。
こぐみ
 かなり興味深いですけどね。でもちゃんとインエデさんから言ってもらえていたからこそ、私みたいにドットレカで遊ぶ人には、「こんな組み合わせできるんだ~!」って楽しみが増えるという。
 ドットレカを作るときにインエデさんに相談しながら、じゃあこうしようかなとか、そういうこともできるんだったらこれやってみようとか刺激を受けて、やっぱりひとりで作ってるんじゃなくて、インエデさんと一緒に作ってるような感覚が私はあって。今後もし「これでいいんか!」っていうのがあったときは、自分がその立場ならやっぱり言ってほしいなと思いますね。
近藤/インエデ
 一応最後に、ポップアップが必要ってことで。

コラボじゃないのにコラボ感

こぐみ
 ドットレカで出ている作品って、ドットレカを前提としたような、全部見てると調和がとれているものが多いなっていうのは感じるので、それはほんとにインエデさんの取り組みとか、声かけの賜物なんだなっていうのは感じてます。
近藤/インエデ
 みなさんがあれに合うように考えてくださってるっていうのが一番大きいです。なおかつ、それで遊べるようにっていろいろやってもらって、そういうひらめきとかアイデアの賜物なので、もうさまさまでございます。
 だいたい驚かせていただいておりますので、「あぁー! まだこんなことができたか!」って。
こぐみ
 たしかにそう、回を重ねるごとに、「こんな表現もあったんじゃーん!」って見ることがある。
近藤/インエデ
 そうなんですよ。こういうやり方がまだあったんだとか、こういう魅せ方があるんだとか、こういう組み合わせを前提として作られてるんだっていう。はたまた何も考えてないけどたまたま合う人たちもいるし、そういう面白さみたいなものっていうのも、なんか、ひとつあるような気がするし。
 あと、コラボとかあんまり好きじゃないっていうと語弊があるんですけど、自分がコラボできるような技量がないので、うらやましいっていうなんか半分妬みの、わしもそのみんなとコラボしたいんやけど、音楽の素養もなければアニメーションの素養もなければ、そういうふうなものがあったりするわけでもないしって。「あぁー! コラボなんてくそくらえじゃー! お前らばっかり○○さんに楽曲提供しましたーて、うあぁぁぁ」ってなるというか。
こぐみ
 思いますね。私も。
近藤/インエデ
 でもドットレカって不思議なもので、一回参加すれば勝手に、全自動コラボカードなので、誰かの作品が、また誰かの作品とコラボされて、でそれにコラボ感はないんですけど、ただ悪い気はしないっていうか。
こぐみ
 “#Myドットレカ”のハッシュタグからほかの人の投稿を見ていると、自分じゃ思いつかない組み合わせもまだあるなぁと思いますね。
近藤/インエデ
 「あ、買ってくれてる〜、手元に私のがある〜ありがとう〜」ってなるくらいの、フランクな感じで、コラボというかほかの人とかかわることができるという。
 でも、ぼく自身はコミュニティとかがあんまり…それはそれで、ぼくがひねくれてる部分ではあるんですけど、この人とばっかり何回もやってずるい! みたいなことにならないようにっていうのもあるし、「オレらドットレカ描いてる側の人間やから」みたいになってほしくないなって。
こぐみ
 あぁ~。
近藤/インエデ
 そんな、そんなやばいやついないと思うんですけど!
 参加した側はそうは思ってなくても、参加できなかった人とか。ぼくの気持ち的に参加できなかった人は全員参加させたいんですけど。ただやっぱり、そういう風に能動的じゃないけど、自信がない人とか、プライド高いけど自信ない人とか、ぼくはそういう野心とか、「こんなことならこうするのに」ってめっちゃ言うわりには自分には自信ないみたいなのがあって。
こぐみ
 いや、わかる。
近藤/インエデ
 そういう人からしたら、ドットレカやってるやつがみんな手垢付けてーみたいな、そういう風に思う人がいないでほしい、ひとりでも。
 そういうふるまいをなるべくしないようにというか、なるべく敷居を低く、でもこういろんな層がいることを証明したくて、だれでも参加してもらえますという雰囲気づくりを努めてはいます。
こぐみ
 それはすごく感じたので、めっちゃ作りやすいです。あとは、セットじゃなくなってさらに、その風通しのよさが強化されるなっていうのをひしひしと感じたので、もうどんどん続いてってほしい、うん。
 そして新しいドットレカをわしにくれと。

ゆるやかに続けていきたい

近藤/インエデ
 あとほんとはね、それこそぼくがもうちょっとお声がけできるとよかったんですが、いかんせんしっかり小心者なので、そろそろ狂人のふりをして頼むのに限界が来ちゃって。
こぐみ
 うーん、キャラクターが、うん。
近藤/インエデ
 でも、全然ね、ぼくも知らないことばかりなので、自薦他薦していただければ、ハッピー!
 それこそ本当にみんなプライド高いかはどうかはあれとしても、自信ない人が多いので、「大丈夫だよ、きみならできるよ~」って言ってあげないと、「いえいえ私なんて…」と言われて。
こぐみ
 手を差し伸べても、「えーできるかちょっと不安です」って人めっちゃいますもんね。
近藤/インエデ
 で、パーン! て手をしばかれて、「ハァァ!」てなる。
こぐみ
 ああぁ! でも、わりと私もそのタイプなんで、わかる~って思いながら聞いてます。
近藤/インエデ
 プライド高くて自信が低いっていうセリフはオードリー若林から来ておりますので。P高J低っていう。
こぐみ
 あっはは! まぁ、今までの作品を見てしまうと、すごいものがいっぱいで、ほんとにできるのかなっていうことを思いはするけど、それを越える、ドットレカの形式で自分の作品が出力されるわくわくが勝るというか。
 あと提出するときの手軽さ、相談できる相手がいるっていうのがいいですよね。ほんと敷居が低いのがもっと広まって、もっとみんな自信持ってやってもらって…自信持ってって自分が言われたら「いや無理やろ!」ってなるけど。
近藤/インエデ
 ほんまに、ほんまにそう。
 でも、一気に来られるとぼくの財布がもれなく死んじゃうから、ちょっとずつ来てほしいですね。わがままだけども。
こぐみ
 まぁ、そうですよね。
近藤/インエデ
 そういう意味でもまぁ5種類が限界かなと。第4弾の時10種類作って、今日からもう白米だけ食べて生活しようって思ったので。ただ、借金とかしてるわけじゃないから、やっぱりみなさんには心ゆくまでドットレカを作って提出してもらって、ぼくが借金寸前になったら、さすがにいったん休止しますけど。
こぐみ
 長く続いていくためにも、私はドットレカを受け取る側にもうなってるから、いっぱい来ると確かに「数の暴力!」っていう感じがする。急に来られると「あぁーお財布が」って。
 ただ、ドットレカ自体の価格はほかのグッズと比べると安いほうだとは感じていて。学生とかでも結構、ひとつのセットが500円っていうのは結構安いんじゃないかと。
近藤/インエデ
 …安いかな?
こぐみ
 手は出しやすいと思いますよ?
近藤/インエデ
 3枚でひとつの絵だから、ひとつの絵を500円で買うって、そうなるとポストカードとかふつうに1枚、高くても200円とかだし、ドットレカは3枚入ってるとはいえ、それ1個では、あんまり楽しむ要素がないから、結局ベースでうん千円いるなって思うと、高いなってなっちゃう気がして。
こぐみ
 あーそうですね、遊び用もだと。
近藤/インエデ
 ぼくが異様にケチなだけというのもある。みんながちょっと引くくらいの距離を、自転車なら全然15・6kmだと行っちゃうとかあって、なのでこのカード3枚で500円って誰が買うんだって最初は思って。
こぐみ
 たしかに、どこに照準を合わせるかで変わりますね。

今後の展望について

こぐみ
 今後もドッターさんがいる限りはずっと出続けるはずとのことでしたが、今後の展望とか、なにかそれ以外のことで考えてることってあるんですか?
近藤/インエデ
 えぇ~、それ以外で?
こぐみ
 んー。なんか前に、「展覧会とかできたらいいなー」って話してたじゃないですか。

伏線回収…しちまったな…(2023年9月追記)

近藤/インエデ
 …あれは言ってるだけなんです。でもせっかくだから、こうズラーっと今までのドットレカを並べたいなという気持ちがすごくあって、できたらいいなっていつも思ってはいるんですけど、実際にそれに向けて動いてるということはいっさい! いっさいございません!
 個展というか展示会みたいなものが、個人的にはすごくハードルが高く感じていて、それを自分の足でどうにか稼ぐっていうのは、なかなか気が引けるというか、気が重いというか、どの日本語が正しいのか分からなくなっちゃう感じがあって、自分の中では。
こぐみ
 とりあえずは、イベントに来てドットレカの現物を見に来てよという感じですよね。
近藤/インエデ
 ですね。なるべくどんなイベントでも、行ける日は頑張って参加しているので。今年は初めてデザフェス56(*5)への出展もしてみました。結局ぼくは、ドット絵なのはドットレカだけで、まぁ缶バッジとか服とかちょこちょこあるけど、本当にイラストの島で大丈夫なのかと。ほんとに何屋さんか分からなくなってきた。

*5 デザイン・フェスタ
年2回、東京で開催されるアジア最大級の国際的アートイベント。オリジナル作品・表現であれば審査なしで、誰でも出展可能。

Wikipediaより一部引用

こぐみ
 もうなんか、インエデさんと近藤さんが作ってるお店って感じですね。待機してるのは近藤さんで、「この人が作りました」っていうのはインエデさん&近藤さんみたいな。
近藤/インエデ
 実際割とそんな感じでいますね。
 あっ、今後の展望ですけど、特にないです。もう、ひとり残らずドッター全員のドットレカを作って。なんかこんなやついたなぁジョジョに。人間の魂を吸い取ってメダルにしていくやつ。そういうタイプの敵です。アッハハハ。
こぐみ
 集め始めたら敵になっちゃった!
近藤/インエデ
 「プラスチックのカード3枚に、お前らの魂を閉じ込めて、俺が収集癖コレクションしてやるぜェ! ハッ!」みたいな。
こぐみ
 ルビ振りたいですね。(振った)

ダニエル・J・ダービーかもしれない

近藤/インエデ
 展望はそんな感じで!
こぐみ
 じゃあ脈々と、余裕がある限りは続けていくという。
近藤/インエデ
 ですねですね。まぁ毎回5種類セットで出してたのを、セット販売ではなくすることで、絶対に5人確保しなきゃいけないみたいなのを、ちょっと取っ払おうかと思いまして。今まではフルコンプセット5種類っていうのを固定してたんで、絶対に5人は埋めなきゃとか、逆に6人目は声かけられないとかで、自分で退路を断ってしまってたんですけど。
こぐみ
 そうですね、私に声かけてもらった時も、ひとりキャンセルが出てどうですかーっていうのが、すごく大変そうだなって思って。
近藤/インエデ
 そうなんですよね、めちゃくちゃ申し訳ないお誘い方法で…。
 実はイベントだとセットで売り上げることがほとんどなくて、こんだけ種類があってそんなに統一感がないけどただ同じ時期に出したってだけで、そうなると、ばらばらに5つ買ったりするほうがみなさんにとって効率がいいのかなと。相談した友達から言ってもらって、「たしかに~」と思って。
こぐみ
 たしかにそうですね。コミティアでゲットしましたって報告ツイートを見た感じもセットではないですよね。
近藤/インエデ
 そうそうそう、完全に体感なんですけど、売れたのもほとんどがばらばらだったので。無理に、毎回5人でどうしてもというのが、ちょっとめんどくさいという。
こぐみ
 たぶん、精神的に圧迫されて、ドットレカ続けられないっていう可能性が出てきちゃいそう。
近藤/インエデ
 や、そう、そうなんですよ。万策尽きたときにどうするんだろうぼくはっていう気持ちになっちゃったので。セットでなくなれば、その分自由に声かけるとか、柔軟に対応できるかなっていう。

ここが大変だったよドットレカ

こぐみ
 あと聞きたかったことが、ドッターを第何弾セットの5人で揃えないとならなかったというのもそうかなと思うんですが、ドットレカを作ってきたこの1年で、これ大変だったなということはありましたか?
近藤/インエデ
 立ち上げが一番大変でした。
こぐみ
 あ~、うんうんうん。
近藤/インエデ
 今はもうみなさんが、むしろやりたいとか言ってくださったり、ドットレカって言うだけで「あ、知ってます!」って反応もらえたりするようになったので安泰なんですけど。
 最初、Adobeをほとんど使わない人生だったので、ちょっとだけ授業でイラレとか触れたくらいで。それでその、依頼してる印刷会社がフォトショップかイラレでの入稿で、決めたピクセル数をどれくらいにして、どうしたらその印刷会社が出してるテンプレートにあてはめられるのか試行錯誤で。引き延ばしだけだとピクセルがずれちゃうので、等倍にしないと、ピクセルパーフェクトではなくなる。
こぐみ
 そうですね。
近藤/インエデ
 せっかく重ねるのに、等倍じゃないっていうのは本末転倒だなと思って、そこはもう諦めきれずにずっとそれと闘っていて。等倍してちょっとずつ位置を合わせて…っていうのを試行錯誤してた時が、2021年の4月から8月までずっと。
こぐみ
 ヒェ~。
近藤/インエデ
 暇さえあれば人のフォトショップ、しかも自分のじゃなくて誰かが「フォトショップ入ってるよー、ちょっと試しに使ってみる?」って言ってくれたら「あっ使う使う使う!」って。「お金払うんですみません、それだけ使わせてください」って言ってフォトショップを1か月分、直接持ち主に納税して、フォトショップを好きにさせてあげる権利をいただき、あーでもないこーでもないって微妙に対策して、今はテンプレートができたので、それに至るまでが大変でした。

ドッターひとり1作品の理由

こぐみ
 ちなみに、ドッターひとりにつき1作品という感じになってるじゃないですか、今のところ。リバイバルみたいなのって考えたりとか?
近藤/インエデ
 ドッターを1周したごとにリバイバルとかあったらちょうどいいのかなぁとは考えていて、実はマイナーチェンジは施し済みでございまして。
こぐみ
 おぉー!
近藤/インエデ
 まぁその、依頼料をお金でお支払いしてない分、けっこう原価ぎりぎりというか、採算が取れないような値段設定というかにはしているんです。
こぐみ
 想像なんですが、すごい量作ったうえで販売が、本当にメタい話になっちゃうけど、はけ切らない状態で持ってるとかのかな? と思ってたんですが。
近藤/インエデ
 在庫はそんなにはないんです実は。その代わりロット数が少ないから、単価も高くなってしまって、本当は1枚100円くらいの気軽さで売りたいんですけど、それだと全然真っ赤になっちゃうんですよ、財布が。
こぐみ
 え、でもさっきも言ったように、結構もう安いような。
近藤/インエデ
 別に、ドットレカでぼくが儲けたいわけじゃなくて。
こぐみ
 もう本当にドットレカというものを広めたい、最高の作品を広めたいっていうことですかね。
近藤/インエデ
 んー、ていうのはある。永久機関に、ドットレカの永久機関になってる。その輪廻の中に完全に取り込まれちゃって、あれなんですけど。基本プラスにはならないんですけど、万が一ドットレカでお金がプラスになってしまっても、次のドットレカの製作費として使わせていただきますっていうのが現状です。
こぐみ
 なんてこった…。
近藤/インエデ
 あんまり言うのもあれなんですけど、儲かる儲からないの話じゃないんだっていう。
 それで、そんなにロットがないので、実は1年前に出した第1弾セットの在庫は、ほとんどはけちゃって。それがなくなっちゃったら、新しく追加するんですけど、第1弾のみなさんには、「もし気に入らなかったり、色味が思ったのと違ったものがあれば直して入稿するので、バージョンアップできます!」ってお声がけしたら、おひとり、ちょっと色味が明るくなりまして。マイナーチェンジという形では、一応入稿していただいております。
 その、作ってから「こんな感じになるんだったらもうちょっとこういう路線でいけばよかったやないかーい」って思ってる人とかもいるとは思うんで、できればそういう機会を設けたい気はするんですが、とにかく新規の人を、増やして、それがちょっと打ち止めになってからかなっていう気がしてます。
こぐみ
 なんとなく4〜5年後って感じがしますね。ドッターとか無限にどんどん増えていってるから。
近藤/インエデ
 でも、150px✕90pxで描きたいっていう人があんまりいなくて。最近の人は、女の子とかを結構凝って描く人とかだと、凝って描く余白とかがないので、このサイズ感だと。
こぐみ
 そう、みっちみちですね。
近藤/インエデ
 たぶん、目を2つ書いたら終わる。いや、2つも描けないかもしんないこのサイズだと。
こぐみ
 あっははは!

超絶すごすぎコラボ!

近藤/インエデ
 2022/11/13にデジゲー博2022(*6)というイベントがありまして、room6(*7)さんのコーナーで、ローグウィズデッド(*8)とコラボしたドットレカが、ローグウィズデッドを試遊した人にプレゼントされたんです。

*6 デジゲー博
同人ゲーム、インディーゲームの展示・頒布をするイベント。ゲームだけでなく、ライブラリや制作ツールの展示・頒布でもOK。
*7 株式会社room6
ゲーム開発会社。主にスマートフォン向けやNintendo Switch等コンソール機向けのゲーム開発/移植/パブリッシュ事業を行っている。
また、インディーゲームレーベルのヨカゼを立ち上げた会社。リリースはroom6より行っている。代表作にアンリアルライフなど。
*8 ローグウィズデッド - 戦略放置RPG
兵士たちを強くして、旅を続けていく、ループ無限進行型の新しい放置RPG。基本無料。
▽ダウンロードリンク
Android → Google Play よりダウンロード
iOS → Apple Storeよりダウンロード

デジゲー博・room6 公式HPより引用

こぐみ
 やばいですね!?
近藤/インエデ
 激熱展開でもう…そのときは大急ぎで、たまねぎ修字(@tamanegi_e)さんが「入稿しまーす!」って言ってて「あっガンバレ…!」って思いながら。
 プラスマークをここに付けていただいて、こうしてもらって、これはピクセルパーフェクトなのですみません、そこは位置設定しっかりお願いしますってお願いしたら、「守ります」ってめちゃくちゃありがたいことに言ってもらえて。なので、room6さんはいつでもドットレカが作れるように。
こぐみ
 新しい道が開けていっている!
近藤/インエデ
 ローグウィズドットレカが余ったらどうするのかなってちょっと思うんですけど。…見本用にでもちょっと1セットずつほしい…。
こぐみ
 そうっすよね…ふふふ。情報共有の、知識料というか。
近藤/インエデ
 や、そう、でもふつうに、欲しいけどなぁ~?
こぐみ
 うん、すごい人達が…というかふつうに、ドットレカを買わせてくれーって感じですね!

※当インタビューはデジゲー博2022の開催以前に行いました。インエデさんはroom6さんよりご厚意でローグウィズデッドのドットレカを全種類いただいたそうです。すごい!

近藤/インエデ
 ワイが大枚はたいて泣く泣くみなさんから500円頂戴しているものを、無料で!?
さすがroom6さんやでぇ…。
こぐみ
 いや…すごい規模が、違う。
近藤/インエデ
 近藤新聞の一番下に、ローグウィズデッドの宣伝があるのはそういうことでした。

デザフェス56より配布している近藤新聞

こぐみ
 なるほど~! 今後ももしかしたら、そういうことが起こりうるってことですよね。

ドットレカの存在とは

こぐみ
 これは絶対聞かないとっていうのが、いちおう考えてた質問はこれが最後なんですけど。
近藤/インエデ
 はい。
こぐみ
 インエデさんにとって、ドットレカってなんですか?
近藤/インエデ
 …プロフェッショナルの流儀やん!
こぐみ
 で音楽が流れ始める。
こぐみ・近藤/インエデ
 ♪ずっと〜さがして〜いた〜
近藤/インエデ
 わーすご、そんな質問。え、でも、かっこいいこと言おうかな!
 いや、かっこいいこと言おうかなって言うやつが一番ださいのか…。
こぐみ
 んふふはは!
近藤/インエデ
 あ、でもそう、どこかで話そうかなと思ってたけど、結局話すタイミングをなくしまくっていたことがあって。ドットレカを見た人に、ドットレカを楽しんでもらうというのももちろんで、それ以外のドットレカをやっている理由のうちのひとつなんですけど。
 こんな絵を描く人がいるんだっていうことに気づいてもらって、もう完全に、だれが言ってんねんって感じの超有名なドッターも、まだ世に知られていないような人たちも結構いらっしゃって。
こぐみ
 そうですね、趣味のドッターとか。私もですけど、お仕事じゃないけど描いてますって人たち。
近藤/インエデ
 そうそうそう、別にそれで名を成してるという感じではないような人たちにも手を挙げてもらったら、もちろんウェルカムで。ぼく自身も、後発的な人がいるんだっていうのを見つけるのも楽しい。それで、お願いして描いてもらったドットレカがすごい良かったら、もっと嬉しくって。
 そういう人がいるんだよっていうのをもっと伝えて、ドットレカを通して、ひとりでも多く「こういうドットの世界があって、こういう人たちがいて」というのを知ってもらって、もし気になる人がいれば、ぼくに話してくれたら、その人にまぁパイプじゃないけど、つなげることもできるし、それでもうちょっとそういう縁が増えたりとか、ドット絵の人になってもらったりとか、ドット絵のことを好きになってもらえたりしたらなって思う。っていうのが、ドットレカ続けてる理由です。あ、違った、「あなたにとってドットレカは」だった。
こぐみ
 んはは。
近藤/インエデ
 ドットレカとは、「人と人をつなげるカード」です!
こぐみ
 最高ですね! うん!

インタビューを終えて

本当は2時間超お話をしていたのですが、ネット上で、ドットレカについて検索したときに引っかかった時のことを考えて、内容は絞り気味に書きました。…のつもりですが、ものすごく長くなりました。
みなさんのわくわく感や創作意欲につながったらいいなと思っています。もちろん、自分のためにも記事にしました。誰かと話すのは楽しいですね!
ドットレカは、まさしく人のつながりがドット絵を通して続いていく、そんな素敵な存在だと感じています。ぜひ、ドット絵(ピクセルアート)好き、特にドッターの方にはドットレカに触れてみてほしいです。
長くなりましたが、ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

今後も楽しみにしてます!

おまけ

近藤さん(インエデさん)の記事

ドットレカも出しているイベントについての記事です!
インタビュー記事と互換性がある内容なので、ぜひ読んでみてね!

裏ドット絵アドベントカレンダー

ドット絵 Advent Calendar 2022は、昨年に続き裏面も実施されています。そちらも表同様に興味深い記事ばかりなので、ぜひ見に行ってくださいね!
ちなみにこちらにも私は記事を載せます。なんて欲深い。
ではでは〜!

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