こぐまは装うことについて考える

こんにちは。久しぶりのnoteですくま。Querieにファッション関連の質問をいただくことが多く、自分にとって装うってなんなんだろなと考えさせられました。ほんと良い機会だな、ありがとうくま。

こぐまこと私はアラフォー二児の父親。ファッションは好きだがファオタということは全くなく、さりとて服装に無頓着でもない、学生時代はラングやアン・ドゥムルメステール、ギャルソン、コスチューム・ナショナル、マーク・ジェイコブス、ミュウミュウとかそのあたりを一通りさらってきた極めて普通の一般的男性である。今回はそんな私がアラフォーにして装いについてどう考えるか、どんなものが好きかを徒然と書いてみようと思う。普通の一般中年男性による等身大のファッション論、皆さんも一緒に装うことを楽しみましょう。それでははじまりはじまり。

1. 人はなんのために装うか


ファッションは自己表現である。他人からおしゃれだと言われたい、格好いいと言われたい、モテたい、そういったモチベーションでおしゃれをする人がいる一方、ファッションなんて自己満足だ、他人からどう言われようが私は気にしないと言う人もいる。私はこのどちらも正しいと思う。

ファッションは自己表現、これは双方に共通することであり、表現する相手が誰かという違いなのだろう。前者は、自分以外の他人に向けて表現している、後者は自分(および自分と考えを同じくする少数)に向けて表現をしているのだと思う。極端なケースを除けば、100:0ではなくて、他人からどう見られるかを気にする人、自己満足の割合が多い人といった感じで強弱があるのが普通で、人はみなどちらの要素も持っているはずだ。

他人にアピールした人たちを左派、究極は自己満と思ってる人たちを右派とでもしようか。モテ重視の人たちは極左で、ガチのファオタは極右となる。私自身、学生時代は少々右寄りだった自覚があるが、いい歳になり子供もできた今は左寄りか。したがって目指すのは、目立ち過ぎることはなく、少しばかり洒脱に見えて、人に不快感を与えることのないスタイルとなる。ちょっといい感じだよねと人に思ってもらえる、これぐらいがちょうど良い塩梅だ。

私にとってファッションは確かに自己表現のひとつかもしれないが、それ以上にセルフブランディングの側面が強い。私はTwitterランドで権勢を振るう諸兄に比べて特段の取柄もないごくフツーの人間だが、自分を上手く見せることで能力対比は恵まれた境遇に自分を置くことができている。ファッションもまたそのひとつの要素なのだ。人は思っている以上に外見、雰囲気、そこからもたらされる印象に影響を受けて相手の評価を行う。

見た目云々ではない実力があれば良い、成果を出せば良いと言う人も多いだろうが、同じ成果を出している2人がいて、かたや清潔感もなく服装に無頓着、かたや自信に溢れ好感の持てる装いだったとしたら、より評価されるのはどちらだろうか。ここで前者の方が愚直に頑張りそうだ等と言うのは天邪鬼か非モテである。絶滅した方が良い。

さて、Querieで質問をいただいて気付いたのだが、今現在好きなブランドが特に思いつかない。コレクションやルックブックを見て、最高にカッコいいなと思うことはあれど、ではそれらは自分にとってのリアルクローズなのかと問うと必ずしもそうではなく、前述したセルフブランディングの観点からも表現者の思想が色濃く反映されたデザイナーズは今の私にとって身に余るアイテムなという結論になる。これが好きなブランドが思いつかない理由なのだろう。

とはいえ、アイテムごとにお気に入りのブランドというのはある。今回はそれを少し紹介しながら各アイテムへの考えを皆さまに伝えたいと思う。今回はオンの装い、メンズのドレスアイテムから行きましょうか。

2. スーツについて


Twitterでも再三言っているが、オンの装いは引き算の美学だと思っている。たとえばタイを締めてスーツを着る時、ストライプのシャツを着るならばスーツ自体は無地が良いし、その時のタイはソリッドや派手すぎない小紋など抑制のきいたものの方が良い。これはオンの装いは本人の自己満足よりも、より他者に好印象を与えるという観点を重視すべきという私個人の思想によるところが大きい。

スーツに柄をもってくる場合、柄はクラシカルである方が良く面積の大きいスーツで遊びすぎるのは好ましくない。クラシカルな柄といえば、グレンチェック、ハウンドトゥース、ウィンドウペーンあたりだかスーツで着る場合、順に難易度が上がる認識だ。私もグレンチェックベースのスーツは持っているがこの手の生地はジャケットでも楽しめるし、少なくとも一着目のスーツには好ましくないだろう。基本的なスーツのラインナップが揃っている人の次の一着だと考える。

またストライプのスーツもショップで見かけることも多く、お持ちの方も多いだろう。定番の柄だと思う。一口にストライプといってもピンストライプ、チョークストライプ、比較的ハッキリしたバンカーストライプ、織り柄で構成されるシャドーストライプなどパターンは様々だ。ちなみに英国の銀行家たちが好んできたことから呼ばれるバンカーストライプは金融機関に就職した若造が厨二病拗らせて一度は通るスーツで私も20代の頃持っていたような気がする。ストライプも次の一着であり、高頻度で着ていると飽きる。スーツにストライプを持ってくるとシャツとタイをシンプルにまとめる必要があり、タイで遊べなくなることも理由だろう。シャドーストライプであればストライプのシャツと合わせられなくもないので、無地は面白くないなあと思う方はシャドーストライプにするのも悪くないだろう。

昨今はガチガチドレスがトレンドではないと思うのでクラシカルな柄生地をスーツにするのであれば作りというか仕立てを柔らかくするのも一興だと思う。バンカーストライプを英国調の構築感のある仕立てにすると、タイを締める人すらマイノリティ化している昨今だと軽くコスプレ感すら出てしまう。後述するがそういった生地を軽く仕上げてカドを取るのは面白い。

さて、スーツの基本ラインナップとして勧めるのはやはり無地あるいは無地に近い織り柄ということになる。ここで言う織り柄はシャークスキン、バーズアイ、ヘリンボーンあたりである。ヘリンボーンはシャドーストライプみがあるが今回は無地織り柄に分類させていただく。個人的に好きなのはシャークスキンとバーズアイだ。どちらもとてもクラシカルな織り柄だと思う。縦糸と横糸で異なる糸を用いてサメ肌のようなテクスチャーを見せるシャークスキンは無地であっても素材感が出てとても良い。鳥の目のように見えることから名付けられたバーズアイも生地に立体感がありとても良い。これはあくまでも個人的な好みだがストライプのシャツを着たいのであれば、バーズアイよりもシャークスキンの方が抑制された雰囲気がありベターかと思う。

織り柄のない無地でも素材によって見え方はかなり変わる。ウールモヘアであればざらついたテクスチャーが一味違う印象を与えるし、打込みの強い目の詰まった英国調の生地と、軽く光沢感がありドレープが美しいイタリア生地ではそれはもう別物である。どちらも良いと思う。

私はあまりこだわりが強い方ではないが、キメキメだとコスプレみが出てしまう昨今のドレス情勢を考えると、打込みのしっかりした生地で柔らかい仕立てを、イタリアの柔らかい生地で少し構築感のある仕立てをするのも面白いと思う。個人的には前者は好きだ。オンのどのような場面でも問題のないキチンと感が出る。

出来ればオーダーが良いが、体にぴったりと合っているなら吊るしでも問題ない。セレクトショップによってパターンは様々だが、オリジナルスーツは企業努力の賜物であるし、ベースのサイジングが合っているのであれば多少の微修正は経験豊富なスタッフがやってくれるだろう。極端に太っていたり痩せていたり筋肉質であったりする場合はオーダーのお世話になる必要がある。

オーダーも通常体型の範囲内で、体型にあったスーツをというこであればパターンオーダーと言われるMTM(Made to Measure)で十分だ。ビスポークやスミズーラと呼ばれるフルオーダーはMTMの延長線上にはなく、趣味の領域だと思っている。自分の着こなし、雰囲気、体型に合っていることがスーツを着こなすということであり、懐に余裕の出てきたオッサンが訳も分からないままビスポークをしてスーツに着られている姿はとても切ない。ビスポークには当然それぞれのテイラーのハウススタイルというものがあり、それが自分の好みか、また自分に似合うかという点を抜きには語れない。有名だから、評判が良いからという理由だけで高いビスポークをしたとしても、他人からの印象は「高そうなスーツですね」の域を超えられないのである。

MTMサービスを行なっているショップやテーラーも数多くあるので、こちらにしてもそのスタイルが自分の好みと体型に合うかというデューデリは必要になる。とはいえ、ビスポークよりは大分お手頃なので失敗したとしても傷は浅い。ビスポーク以外はかすり傷、だ。

セレオリかMTMあたりだと有名・人気ミルやマーチャントの生地を使っても10万円で事足りるだろう。他にも買うべきものはある。スーツだけ張り切りすぎるのは良くない。装いとその人の雰囲気というのはトータルで完成するものである。ことオンの装いについては一点豪華主義はおすすめしない。

3. ジャケットを楽しもう


オフィスでもカジュアル化が進む中、スーツを着る機会が減り、ジャケットを着る機会が増えた人も多いだろう。ジャケパンはスーツとはまた違った楽しさがある。どちらが良いという話ではなく、どちらも良い、気分やTPOに合わせて両方楽しみたい。日本の亜熱帯化が進行し、とてもじゃないが夏のあいだにジャケットを着れる気候ではないのだが。

街中を見るとスーツのジャケットを別布のパンツと合わせている方をよくお見かけするが、それはやめた方が良い。スーツにはスーツの仕立てがありジャケットのそれとは違う。それはポケットの処理であったり、ウェスト位置、パターン、着丈、揃いで着ることを前提としたものなので、そういった微妙な違いが大きな違和感を生むことになる。もともとセパレートでも使うことを意識して仕立てた場合はこの限りではないが、その場合スーツは若干カジュアル感が出たものに見えるだろう。

ジャケットはスーツよりもカジュアルなわけなので作りも軽いものが好みだ。パッドはない方がいいし、毛芯も最低限のアンコンが宜しい。バルカポケットにいせ込みをガンギメしたマニカカミーチャ、パッチポケット、みんなが好きそうなやつだ。バルカポケットは舟のように湾曲した胸ポケットでチェストが立体的に見えやすい。マニカ(袖)カミーチャ(シャツ)はシャツのような袖付けをジャケットに施すことを言い、たとえば身頃サイドのアームホールが57cmで袖ぐりが60cmだった場合、この差3cmの余り(いせ)をギャザーのように寄せて縫い付ける仕立てだ。通常スーツなどでは、いせ込んだギャザー部分をアイロンで目立たなくする(いせを殺す)処理を行うが、これをあえてせずにギャザーを見せる仕立てがイタオジに人気のマニカカミーチャ、別名「雨降らし袖」というわけだ。まあ、みんな好きだからスーツもこれにしちゃうよね、わかる。

ジャケットのポケットはパッチの方がチャーミングで良い、柄物でも柄をちゃんと合わせればそこまでカジュアルには見えない。胸ポケットまではパッチにしないのが個人的には好みだ。ジャケットは柄物を楽しめば良いと思う。スーツで我慢した鬱憤を晴らすかのように楽しめば良い。少し大きめのハウンドトゥースも良いし、差し色が入ったグレンチェックなども面白い。無地にするのであれば素材感のあるものや、少し珍しい色物で遊ぶのも良いだろう。ジャケット、楽しいよね。

春夏であればリネンやリネン混、コットンもありだろう。ウール・リネン・シルク混なんていい感じの生地もある。ジャケットも基本MTMで良いのだが、秋冬は吊るしも見たい。理由は厚手で素材感が際立つものが各ブランドから出ているからだ。大手のセレクトショップに行けば十分迷えるぐらいの種類を見れるだろう。定番でいい、ボリオリ、ラルディーニ、カルーゾ、デ・ペトリロ、リング、ラティーノ、キリがないが、日本ほど気軽に豊富なテーラードブランドを並べて見れる国はない気がする。日本人バイヤーとセレショの勤勉さよ。ワンシーズンにお気に入りのジャケット2着、別布のパンツ2本あればスーツも組み合わせて申し分のないラインナップになるのではないだろうか。ネイビーのジャケットあるいはブレザーは永遠の定番で重宝するので一着持っておいた方が良い。

秋冬はツイードなど毛足の長いジャケットが着たくなる。ウールやカシミヤのタイを合わせても良いし、シャツの上にニットを着ても良い。今年はネイビーのヘリンボーンツイードで柔らかいジャケットにしてカーディガンのような気楽な感じで羽織りたいなと考えている。まあ、どうせ目移りするんだろうけど、バンチ見て。

4. シャツ


申し訳ないが一番手薄、正直手を抜いてるアイテムだ。これについては不思議だなと思うのだが会社でも道行く人々でもスーツのサイジングは微妙、靴に至っては眉をひそめるようなものをお召しであるのにシャツについてはネーム刺繍入り、ということは曲がりなりにもMTMということ、の人が多いのだ。私もスーツを着るようになってから、オリアン、バルバ、フィナモレ、バグッタ、サルバトーレ・ピッコロとかその手のドレスシャツは買ったことあるし、MTMのシャツばっかり着ていた時期もあったのだが、気付けば出張時に必要に迫られてJermyn St.の量販店で買った格安シャツのサイズが合ったもんだからweb経由でまとめ買いしてそればかり着ている。したがって大した拘りがない、ということになる。

シャツは無地かストライプのみ、胸ポケットはなし。そもそもあのポケットが何のためについているのかいくら考えても理解ができない。色は白かブルー、それも少し薄めが好みだ。ストライプもブルー系のみ。ここは私の個人的な好みだが、スーツの色合いや、ジャケットには柄物をもってきたいのでこういったラインナップになる。柔らかい感じが好みなので襟裏のカラーステイは抜く、クリーニングの場合は糊なしが基本となる。そもそもMTMのシャツを白◯舎に糊なしで出しても仕上がりが微妙だったりボタンが割れたりで閉口し、やはり自宅洗濯、自分でアイロンという結論に達したものの、子供も生まれ悠長にアイロンかける丁寧な生活が厳しくなった結果、イージーケアシャツに到達という残念な流れだ。時間に余裕のある諸兄はMTMすれば良いと思う。

シャツはジャケットやコートのような身体に沿う立体的な作りを必要としないのでオーダーの優先順位としては後ろの方なのだが適切なフィッティングが簡単に手に入るのでMTMに手を出す人が多いのだろう。袖丈の左右差を調整できるのは良い。好みの問題だがたとえオーダーでもタイトフィットすぎるのは気分じゃないし、タイトなカフも好きではない。色々試して自分がしっくりするスタイルを探せば良い。一度見つけてしまえば後は楽ですからね。

5. トラウザーズ


スーツではなくジャケパンスタイルをするのであれば、スーツの組み下ではないパンツをいくつか持っておくと良いだろう。結局のところ使えるのはグレーだ。グレーの万能さを超えるものはない。チャコールグレー、少しライトめのグレー、後はすこし茶系のニュアンスがあるトープなどが良いだろう。茶系のパンツを検討するなら通常のブラウンではなくトープをお勧めする。トープであればブラウン系、グレー系どちらのジャケットにも馴染みが良いからだ。もろブラウンのパンツにしてしまうとグレー系ジャケットも合うのだが色合いを少し選んでしまう。

形は人それぞれ好みがあると思うが、私はきっちりテーパードしたものが好みで、すっきりとしたタックレスかクラシカルな2プリーツ、最近は2プリーツが多い。ドレスコードに自由度があるならベルトレスにするのも良いだろう。特に2プリーツにはベルトレスが合う気がする。私はダブルで少し幅広に5cm取り、ノークッションの少し短め仕上げだが、このあたりは個人の好みだろう。私も20代の頃はシングル、ハーフクッション、モーニングカットにしていた。人の好みは変わるものである。

夏はジャケットを着ない人も多いだろう。正直なところ現代の日本の気候は夏に上着を快適に着れるものではない。ジャケットを着ないのであれば、(私はもっていないが)柄物のパンツも選択肢になる。
秋冬はなんといってもフランネルだろう。季節感も出るし、暖かいし、履かない理由が思いつかない。先程のトープも秋冬にぴったりの色だ。春夏であればライトグレーが2本目以降に最適だろう。今年の秋はトープを1本新調したい。

6. ネクタイ


オンスタイルのカジュアル化が進み、ネクタイなぞ最近は締めた記憶がないという方も多いだろう。とはいえ、フォーマルな装いにタイは欠かせないし、なんか意味もなくタイを締めたい日もある、そんな素敵なアイテムであることに変わりはない。タイの柄は大きく分けると無地(ソリッド)、レジメンタル、小紋、ドット、その他(チェックとか)だろうか。

道行く人々を見ると圧倒的に多いのはレジメンタルのようだ。確かにショップのネクタイコーナーもレジメンタルの割合が多く見える。レジメンタル(連隊の)と呼ばれることから分かるように出自は英国における軍装であり、タイのストライプと色でもって所属連隊を判別できたそうだ。所謂本家英国式はストライプが右上から左下に流れており、ブルックスあたりが起源だったか米国式は逆になる。イタリアのタイ専業メーカーを見ても英国式なので、米国式レジメンタルタイを作っているのは米国メーカーのみなのではないだろうか。確かに使いやすく当然私も所有している。非常に発色の良いRODAのグリーンレジメンは某メガバンクなカラーにそっくりだったため、三井◯友タイと呼んで愛用していた。

レジメンタルを締めることは最近ではほとんどなく、ソリッドか小紋、たまにドットといった感じだ。ドットは大きめで水玉感が出ると少しカジュアルになったしまうのてま、ピンドットをお勧めしたい。ピンドットのタイはフォーマルである。

これといってこだわりもないのだが基本的にはタイ専業メーカーのものが好きだ。手持ちを見ると圧倒的に多いのが、ステファノ・ビジになる。締め心地が気に入っているため基本ビジから気に入ったものを探す。それ以外だと、マタビシ、フランコ・ミヌッチ、ルイジ・ボレリ、RODA、シーウォード&スターン、フィオリオあたりがぶら下がっていた。全てではないが圧倒的にイタリアのタイ専業が多い。プレーンノットで小さめに締め、大剣小剣の長さはちょうど同じくらいらディンプルは作る派で、裏ループには通さず、やり過ぎない程度に小剣ずらしという締め方をかれこれ10年以上続けてる気がする。セブンフォールドの加賀氏は本当に洒脱な方だと思うが彼をしてもしばしばアレ?って思ってしまうので、小剣をことさらに長くするのは一般市民にはおすすめしない。むしろあの締め方してるのって故フランコ・ミヌッチ御大と加賀さんとその仲間ぐらいじゃない?

今後買い足すとしたら圧倒的にソリッドと小紋だろうか。ソリッドなら質感の良さと色のラインナップからしてマリネッラになるかなと思う。秋冬はウールやカシミヤなどの素材感のあるタイもお勧めだ。ジャケットの時はニットタイも良い。昔は嫌いだったが、ビジのダークネイビーニットタイを手に入れてから評価が変わった。ドレスダウン、カジュアル化が流れである今こそ、タイを締めることを楽しんでみてはどうだろうか。

7. チーフ


そもそも挿してる人が少ないし、ともすればやり過ぎ感が出るかもしれないが個人的には華やかさがあって好きだ。恰幅の良いおじさまだとタイと同系色でかなり鮮やかな色をされる方をよくお見かけするが、私は控えめにシャツと同系色、あるいはスーツやジャケットと同系色で色馴染みを良くする。目立ちすぎないを基本にしているからだ。スーツであればシャツと同色をTVフォールド、ジャケットであれば柄物をパフドにする。

スーツの場合は無地か無地にパイピング、織り柄のみで仏シモノ・ゴダールのものと決めている。柄物は英ドレイクスだ。特段の理由はないが、自分の中でこのアイテムはここ、と定番があること自体が好きなので気付いたらこうなっていた。ドレイクスのチーフは可愛い柄のものも多く、完全に自己満だが目移りしてしまう。ちなみにクマ柄のものを探しているがまだお目にかかれていない

8. 靴


靴も一瞬沼入りしそうになったが踏みとどまった。元々周りが見えなくなるほどハマり込むたちではないのだろう。そりゃ大成しないわけである。うるさい。作りにこだわりはないが、イタリア靴をほとんど履かない結果としてマッケイよりグッドイヤー、とはいえ柔らかい作りの方が良いのでダブルソールとかイカついのはお好みではなく、コバの張り出しもほどほどが良いのでノルベとかは興味がない。

手持ちはやはり英国靴が多くなり、ロプパリ、グリーン、クロケットが一軍の大半を占めている。変わり種だとノーマン・ヴィラルタ(スペイン)とコルテ(フランス)あたりか。靴も突き詰めるとビスポークという話になるのだろうが、メーカーや職人によってスタイルやラストの癖があり自分の好みに合うか、ここを判断するには相応の経験が必要なように思う。また、自分の足に合っている、履き心地の良い靴=美しい靴、ではない点も悩ましい。結果、生涯履けるピスポークメーカーを探しあてるには自分にも知識と経験が必要で、それらを得る頃には手元に相応の数の良い靴が並ぶことになる。手入れをすればそれらが10年以上履けちゃうんだからこれまた悩ましい。

既成も当然難しく、自分の好みとフィッティングの相性を探る旅になる。たとえばロプパリのPhilip2は既成靴の中では最高峰の完成度だと思うし、グローバルで維持されるロプパリ接客のくそさを勘案しても買う価値ありとは思うが、私はラストが合ってない。美しいシームレスヒール、フラットではなく丸みを帯びたソール、ビスポークっぽいディティールを程良く取り入れた良靴であることに全く異論はないがラストが合わない。じゃあなんで3足も買ったんだよ。全部グリーンにすれば良かったじゃないか。こういった後悔を避けるためにも、靴はフルスピードでハマり過ぎず、時間をかけて自分にとってのベストを探す方が良いと思う。

エドワード・グリーンは私の中で偉大なるグランメゾンだ。あの生産量と品質を両立させていることは素晴らしい。比較的知名度も高い一方で、靴オタからも引き続き高い評価を得ている、私のような一般人にとっては極めてバランスの良いメーカーなのだ。ラストは比較的スリムかつアーモンドトウが好みなので82か915となる。拗らせた靴オタの皆さんはもうちょい捨て寸の短いオールドファッションなラストがお好みなのよね、まあ分かりますよ。グリーンで何買えば良いか問われれば、まあ一足目はチェルシーかバークレーで間違いない。

コルテは所謂フランス靴ABC+2Jの一角をなす遊び靴だ。ABC+2Jは、Aubercy、Berluti、Corthay、John Lobb Paris、J.M.WESTONの5メゾン。ここでグダグダ言ってもしょうがないが、パリ店も雰囲気があるしとにかくカラフルな靴が並ぶ店内は宝石箱のようで美しい。オーベルシーは現状所有してないが好みだ。コルテやオーベルシーは50歳過ぎて仕上がったオッサンみが増してきた時にこそ履きたい。靴以外は極力シンプルに、上質だがシンプルにだ。たまにブランドでキメキメにした上でコルテ履いてる人を見かけるが残念この上ない。靴に履かれることは避けたいものだ。

シューズクローゼットに相応の数の靴があるのでこれ以上買い増すとお叱りを受けそうなのだが、幸いにも靴物欲もかなり落ち着いている。グリーンはラストも合うので今後オン用の靴を買うとしてらグリーンを追加していくのだろう。1周回って普通が一番という捻りのない結論。ビスポークには当分手を出さなそうだな、と今は思っている。

9. まとめ


長々と駄文にお付き合いいただきありがとうございました。興味のない人からは面倒くさいやつだと思われ、ファオタの皆さんからは知識が乏しいとお叱りを受けそうですが、まあ自分にとっての定番や好みというのがはっきりと分かっているのは良いものです。

繰り返しになりますが、外見や装いが他人に与える印象は結構大きいです。特にオンの装いは貴方の能力や才能にレバレッジをかけ、他人からの印象を操作する非常に便利なツールだと思います。貴方が男性であれば、特段おしゃれにする必要もなければ、華やかさを重視する必要もないですが、清潔で自信に満ち、活力に溢れた雰囲気をスーツスタイルで演出してみてはいかがでしょうか。(まあ、私もどれほどできてるか分かんないんですけどね)

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