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021 [教える技術] 教える人はパイクの「90/20/8の原則」を身につけよう

授業や研修を受け持っている人は、90分をひとつのセッションとしてそれを何コマという形で時間が与えられることが多いでしょう。また、テニスやピアノなどのレッスンをコーチから受けるときは、90分(長いときは120分)をワンセッションとして受けることが多いようです。

このワンセッションの内容をどのように時間を区切って構成するかによって効果的なセッションになるかどうかが決まります。パイクの「90/20/8の原則」はそのための有効な技法です。教える仕事をしている人は身につけておいて損のないスキルです。

・授業や研修の組み立てを考える

まず、中村文子、ボブ・パイク『講師・インストラクターハンドブック』(2017) の内容を紹介しましょう。

この本は、研修や授業を行う、講師、インストラクター、トレーナー、教師のために、楽しく、ためになるような研修・授業を設計し、実施するための具体的なスキルとテクニックを提供しています。10人から1000人規模のどんな研修やセミナーでも使うことができます。

すでに講師として活躍している人であれば、実行していることも多いかもしれませんが、自分のセミナー、研修、授業を1から見直してみるためにも、この本を通読する価値があります。

研修・授業のコンテンツの組み立てを考えるには、「KSAフレームワーク」が有用です。これは内容を、Knowledge / Skill / Attitude(知識/スキル/態度)に分けてその最適な教え方を考えるものです。知識を教えるには人の記憶の仕組みについて知っておく必要があります。スキルを教えるにはその練習方法が大切です。また、態度を教えるためには感情に働きかける必要があります。

研修でよく取られる方法は、理論から入るパターンです。しかし、そうでない方法をレパートリーとして身につけておくことが大切です。たとえば「EATフレームワーク」は、Experience / Awareness / Theory(経験→気づき→理論)の順番で導入して行くものです。まずそれぞれの経験から入っていけば、わかりやすいし、身近な問題として考えさせることができます。

参加者に適度なストレスをかけることは、成果を得るために必要なことです。それには、時間的なプレッシャー、役割を与えること、チームに対する責任を感じてもらう、競争的要素を取り入れるなどの方法があります。こうした考えも、参加者をアクティブにするための工夫として身につけておきたいものです。

・設計のフレームワークとしての「90/20/8の原則」

『講師・インストラクターハンドブック』に続いて出版された、中村文子、ボブ・パイク『研修デザインハンドブック』(2018)を紹介しましょう。

この『研修デザインハンドブック』は、前著をより詳細にして、具体例を入れることで、ステップを踏んで研修デザインができるようにしたものです。随所に書き込み式のワークシートも入っていますので、書きながら自分の研修を設計することができます。

設計のフレームワークとしてはボブ・パイクの「90/20/8の原則」を一貫して採用しています。「90/20/8の原則」とは、次のような時間配分の原則です。

(1) 1セッションは90分以内で終える
(2) レクチャーは20分以内で終える
(3) 8分ごとに参加者が何か参加できる機会を作る

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