4-お勧めの本

【本】フレデリック・ラルー『ティール組織』:ミーティングをベースにした自主経営チームを作る

木曜日はお勧めの本を紹介しています。今回はこの本を取り上げます。定期購読者が増えるたびに、感謝を込めてその日の記事を全文公開にしています。

フレデリック・ラルー『ティール組織』(英治出版, 2018)

■要約

第1部では、組織形態の進化について書かれている。

人の集まりである組織の形態は10万年の間に進化してきた。それを7つの段階に分類して、ケン・ウィルバーにならって色を割り当てた。

【無  色】受動的パラダイム:10万年前。家族、血縁による集まり。自他の区別が弱い。
【マゼンダ】神秘的パラダイム:因果律ではなく神秘が世界を支配している。
【レッド 】衝動型パラダイム:1万年前。首長制、王国。力による支配。感情抑制できない。
【アンバー】順応型パラダイム:農業、国家、文明。共感できる。関心を他者に向けられる。
【オレンジ】達成型パラダイム:200年前。理性と革命。
【グリーン】多元型パラダイム:公平、平等、調和、協力、コンセンサス。
【ティール】進化型パラダイム:内的基準。誠実さ、自分らしさの感覚。

第2部では、進化型(ティール)組織の特徴について書かれている。

達成型(オレンジ)組織はトップに権力を集中することによって成果を最大にしようとした。多元型(グリーン)ではその権力を委譲することでメンバーのモチベーションを上げようとした。そして、進化型(ティール)では委譲するまでもなく誰もが強い権力を持つ組織を作ろうとする。その形が自主経営(セルフマネジメント)チームである。

自主経営チームは、上司のいない12人を超えないチームで、ミーティングによってすべての方針とルールを決めて活動する。業務を分担し、特定の人に仕事が集中しないようにする。チームメンバーは毎年相互評価を行う。

プロシェクトチームは自然発生し、仕事が終われば解散する。計画書は作らない。承認も不要。進捗報告もなし。スケジュール管理もない。

「人々は仕事を持つのではなく、多くのきめ細やかな役割を果たそうとする」というホラクラシーの考え方を持ち、人=役職とい考え方を覆す。その代わりすべてをミーティングと同僚間(ペア・ベース)の話し合いで決めていこうとする。

■ポイント

ティール組織を学校に応用した例としてベルリン市の中等学校ESBZが取り上げられている。一斉授業を廃止し、テーマごとに区分けされ、理論、演習、テストをユニットとしたものが提供されている。それを生徒は自分のペースで学んでいき、生徒同士の助け合いが推奨される。生徒は全員日誌を持っていて、日々の成果を記録する。毎週金曜日には担任の先生と個別に面談を行う。

おそらくティール組織の秘密はミーティングにある。本音を隠した「会議」ではなく、本音をさらけだせる安全な場所としてのミーティングを実現しようとする。アルコホリック・アノニマスを例に引いているように、これは話し合うということを原点に戻そうということだ。その意味でアドラー心理学ベースの、家族会議やクラス会議、職場会議に近いものだ。チェックイン、ほめたたえる、誰でも参加可能、といった特徴を見るとわかる。

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