【研究】07 研究のつまずき:レシピ的知識から抜け出せない
水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いています。
前回は、「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」というマズローの言葉をひいて、研究方法や分析方法をひとつ習得すると、そればかり使おうとしてしまう傾向があることを言いました。基本的な研究方法を身につけることは必要なことです。しかし、一通りの研究方法を理解したら、研究対象に合わせて研究方法を考えたり、新たな研究方法を考え出すことが必要になってきます。
今回はレシピ的知識から抜け出せないという話です。
レシピ的知識というのは「こうやって、こうやると、これができます、あるいはこうなります」というような手順や操作についての知識です。日常生活ではレシピ的知識があれば十分役に立ちます。たとえば、電子レンジの操作方法がわかっていれば、電子レンジを使って作り置きの料理を適度に温めることができます。
その一方で、電子レンジの使い方を知っていても、なぜ電子レンジでモノを温めることができるのかというしくみについては必ずしも理解してはいません。もちろん日常生活ではそれでまったく不自由はありません。
その意味で、研究するということはさらに一歩踏み込んで、その「しくみ」について明らかにすることです。そこで明らかにされたことを理論やモデルと呼びます。理論やモデルとして抽象化されると、応用範囲が広くなります。そうなると研究の意義が出てきます。
研究トピックを決めるときは、自分の現場で起こる具体的な事例からスタートします。もしそうした事例が繰り返し起こるものであり、またいろいろなところで観察されるものであれば、それをレシピ的知識にまとめることができます。「このような問題が起こった場合は、こうすれば解決できます」というような知識です。
このような現場の知識から研究はスタートします。しかしそのレシピは十分試されたものではなく、その時点では仮説なのです。したがって条件が変わると必ずしもうまくいかない場合も出てきます。そうすると一段広い目でレシピ的知識を見直す必要がでてきます。その裏側でどのようなしくみが働いているのかということを明らかにするステップに進んでいきます。このようにして研究が進んでいくのです。
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