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(127) 概念/変数/測定法をどう設定するか

2021年3月28日(日)

2020年度の「教える技術オンライン研究会(OGOK)」(全10回)から、研究トピックや研究スキルを紹介するシリーズの第4回目です。今回は研究スキルとして「概念/変数/測定をどう設定するか」を取り上げます。

前回の記事「(023) 研究のネタをどう見つけるか:リサーチクエスチョンのICEモデル」では、リサーチクエスチョンをどう設定したらよいかということについて書きました。

リサーチクエスチョンの形は典型的には次のような形式になります。

・(概念)Xとは何か/Xはどう測れるか
・(関係)XとYはどう違うか/XとYには因果関係があるか
・(応用)Xはこれからどうなるか/Xはどう活かせるか

・科学では概念を扱う

ここでのXやYが、概念あるいは変数というものにあたります。目に見える現象とその裏で働いているものを抽象化したものが概念です。たとえば、Aさんが職場でいつも生き生きと働いているのを観察したときに、そこに「モチベーション」という概念を想定します。モチベーションは現象として観察可能ですけれども、直接手に取ることはできません。したがって「モチベーション」は概念なのです。

そのようなわけで、リサーチクエスチョンを立てるときには、並行して概念を設定することが必要です。概念とは、具体的で観察可能な現象の裏で働いていると想定されるものです。「想定されるもの」ですので、必ずしもそれが実在するという保証はありません。逆にいえば、その概念を想定すると、さまざまな現象をうまく説明できるものと言えます。

たとえば、前回、例として取り上げた「心理的安全性」は概念です。しかし、それはどこに存在するのかはよくわかりません。メンバーの心の中にあるのか、あるいはメンバー間の言葉のやりとりにあるのか、あるいはリーダーとフォロワーの関係性の中にあるのか、どこにあるのかはよくわかりません。しかし、よくわからないにもかかわらず、それぞれの職場で起こる現象を観察してみると、「心理的安全性」という概念を想定することでうまく説明できそうです。そのとき、この概念を想定することで、研究が一歩進むということになります。

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・概念は1つあるいは複数の変数として測定される

注目した現象の裏で動いている概念を設定したら、それを変数として測定できるようにします。ここは人間を対象とする科学ではちょっと面倒なところです。物理学のような自然科学では、たとえば「速度」という概念は「移動距離」を「移動時間」で割ることによって求められます。そして、距離も時間もその単位が決められています。しかし、「心理的安全性」というような人間や社会の中に設定された概念はどのように測ればいいのか、よくわかっていません。しかし、何らかの方法で測り方を決めなければいけません。測り方を決めると、それは「変数」として扱うことができます。

・変数には心理的/行動的/生理的変数がある

人間に関する変数には大きく分けて3つあります。心理的変数、行動的変数、生理的変数です。

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