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(006) 上手な教わり方をする人は上達が速い:その2つの姿勢

エクステンションセンター中野校での「教える技術」講座全6回が進んでいます。今回も40人近くの人に参加していただき、ありがたく思っています。授業が終わるとたくさんの質問をいただきます。その中で「上手な教え方というものがあるのなら、上手な教わり方というものもあるのではないか」という質問がありました。

【ポイント】
・誰かに何かを教えてもらうときに、上手な教わり方をする人は上達が速い。
・学び手には、単に教わるだけでなく、上手に教えてもらうという仕事がある。
・それは教え手に対して素直になり、練習し、上達すること。
・もう1つは、厳しい練習や助言に対して、簡単に傷つかないこと。

・・・・・・

この質問者の言う通り、教える仕事をしていると、教えやすい人と教えにくい人がいることを感じます。教えやすい人とは、教えていてこちらが楽しくなり、教えがいを感じるような相手です。反対に、教えにくい人とは、教えていて楽しくない相手です。その場合は、相手も上達しませんし、その原因が自分の教え方にあるのではないかと考えて教え手が意気消沈することもあります。

もちろん、教え手としては、ベストを尽くして良い教え方をしようとしています。しかし、相手によって、うまくいく場合と、うまくいかない場合があります。そうすると、教え手の教え方だけの問題ではなくて、教え手と学び手の組み合わせの問題であるということになります。

ここでは学び手に注目してみましょう。教わり方のうまい、へたがあるとすれば、それはどういうことなのでしょうか。教わり方のうまい人というのは、次のような特徴を持っています。

まず1つ目は次のことです。

(1) 何かを教えてもらうことについて素直になり、言われた通りのことができる。

教えてくれる人に対して素直じゃない人がいます。こうしてみてください、こう考えてみてくださいという指示に対して、そうしない人がいるのですね。不思議です。できない、というわけではなくて、そうしたくないというのです。もしそうなら、その人から教わるのはやめた方がいいと思います。でも、そうはしないのですね。これは教え手からみると困ってしまうケースです。

逆に言えば、教え手に対して素直にその指示に従うことができるという資質は上手な学び手として重要です。やってみて、やはりこれはだめだ、自分には合わないというのであれば、教え手にそう言えばいいと思います。でも、そのためには一通り受け入れて自分でやってみなくてはなりません。言われたことを素直に受け入れるということは、上手な学び手の第一の資質と言えるでしょう。

教え手に素直に従えないという人には何か理由があるのでしょうか。もし速く上達したいと思うのであれば、赤ちゃんのように何でも吸収する姿勢が必要です。そうできないということは、上達したいということが実は本当の目的ではないのかもしれません。本当の目的は、たとえば、自分がいままでやってきたことが正しかったことを、教え手に承認してもらいたいというようなことです。その場合は、自分が熟達することが目的ではなく、自分の正しさを証明したいわけですから、自分のこれまでのやり方と違うトレーニングを指示されたらそれを拒否するのは当然のことです。

2つ目は次のことです。

(2) 厳しく言ってくれることに対して簡単に傷つかない。それを大切にする。

インストラクショナルデザインでは、何かを学ぶための入門段階では、スモールステップで上達してもらう成功体験を中心として組み立てます。そこでは、学ぶことが楽しいことだと感じてもらうことが重要です。しかし、入門段階から中級段階に入ると、いつでも楽しい体験というわけにはいきません。つらく、単調で、あまり楽しくないハードワークが必要な時期が来ます。

そうした段階では教え手も、常に優しく、にこやかにふるまうわけではありません。必要なときには、学び手に対して厳しい指摘をしなくてはなりません。それは指導の重要な一部分なのです。そのとき学び手はどのようにそれを受け止めるかが問われます。簡単に傷つくことはできます。それは学び手が自分の中の何かを防衛しているのです。それはプライドであったり、信念であったり、あるいは隠してきた劣等コンプレックスであるかもしれません。

どのようなものであれ、自分にとって大切なものに触れるものであれば、それを守ろうとするでしょう。その反応として「傷つく」という姿勢をとるのです。しかし、その大切にしているものを一旦は壊してみることでブレイクスルーを成し遂げることができるかもしれません。その可能性に一度は賭けてみる必要があります。

以上、上手に教わるための2つの姿勢として、教え手の指示を素直に受け入れることと、中級段階以降で簡単に傷つかないことを挙げてみました。

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