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009 [教える技術/おとなの研究] 「深く学ぶ」「深く研究する」ためのICEモデル

私たちは何かを学ぶとき「深く学ぶ」ことを追求しています。表面的な知識しか持っていない人のことを「にわか」とか「付け焼き刃」と呼んだりすることもあります。では、「深く学ぶ」とは具体的にはどうすることなのでしょうか。また、深く学んだ人とはどういうことができる人なのでしょうか。

ここでは、「深く学ぶ」とはどういうことかを「ICEモデル」という枠組を使って説明していきましょう。さらに、ICEモデルは研究するときの出発点であるリサーチクエスチョンを立てるときにも有効です。このことについても触れていきましょう。

■授業と研修でICEモデルを使う

ICEモデルというのは、学習の深さと拡張性を3つのレベルに分類したモデルです。このモデルを使って、授業や研修の中で提示する質問や課題をデザインしたり、ルーブリック評価を質的にしたりすることができます。このことによって、授業や研修全体をよりクリアな構造にすることができるでしょう。

ICEモデルは、スー・F. ヤング, ロバート・J. ウィルソン『「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル』(東信堂, 2013)でわかりやすく解説されています。

「ICE」とは、Ideas(考え)、Connections(つながり)、Extensions(応用)の頭文字を取ったものです。私たちが何かを学ぶとき、教科書的にどの範囲を学んだのかということよりも、それぞれの内容をどれほど「深く」学んだのかということが重要です。

・「深く学ぶ」とはどういうことなのか

では、「深く」学ぶとは具体的にはどういうことなのでしょうか。その深さを示すものがICEモデルです。

個々の知識(Ideas)を単独で持っていることは必要ですが、それ自体は学びの第一歩にすぎません。次のステップは、それぞれの知識のつながり(Connections)を理解することです。つながりとは、因果関係であったり、類似点・相違点であったり、比較することです。そうすることで知識のネットワークが作られていきます。最後のステップは、相互につながりあった知識を応用・拡張(Extensions)することです。

この3つのステップを経て、知識は自分のものとなり、使えるようになるのです。このことを私たちは「深く学ぶ」と呼んでいるわけです。

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