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(136) 混合研究法とそのパターン(後半)

2021年5月13日(木)

2020年度の「教える技術オンライン研究会(OGOK)」(全10回)から、研究トピックや研究スキルを紹介するシリーズの第9回目です。今回は研究スキルとして「混合研究法」を取り上げます。抱井 尚子『混合研究法入門』(医学書院, 2015) を紹介しています。最後には、そのレクチャービデオ(33分)を紹介しています。


・混合研究法のパターン

混合研究法のパターンは大きく分けて次の6つです。

(1) 収斂的デザイン
(2) 説明的順次的デザイン
(3) 探索的的順次的デザイン
(4) 介入デザイン
(5) 社会的公正デザイン
(6) 段階的評価デザイン

このうち(5) 社会的公正デザインを除いて、以下に説明していきます。

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(1) 収斂的デザイン

収斂的デザインは、質的研究と量的研究を独立に行い、そののちにその2種類のデータを付き合わせて結合します。質的と量的な2種類のデータで同じことが明らかになったのであれば、収斂することになります。しかし、2種類のデータがそれぞれ違うことを示唆しているのであれば、発散することになります。

研究例として、「英語非母語話者の英語能力テストの予測妥当性」を取り上げます。量的研究としては、留学生の英語能力テストを100人に行います。そして、そのテストが留学生のGPA(科目の成績の平均評定値)をどの程度予測するかということをみます。その一方で、この留学生の中からインタビューに応じてくれた人とその人を受け持つ教員に対してインタビュー(質的研究)を行います。

英語能力テストとGPAという量的データと、学生と担当教員へのインタビューという質的データを統合・比較していきます。特に、英語能力とGPAに開きがある場合、それはどうしてなのかということをインタビュー内容を検討することで明らかにすることができます。

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(2) 説明的順次的デザイン

順次的デザインには、この説明的順次的デザインと、次の探索的順次的デザインの2つがあります。説明的順次的デザインでは、まず量的な研究を行い、この量的データの結果を説明するために質的な研究を行います。

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