3-コラム用

【研究】良いリサーチ・クエスチョンの要件 “FINER”

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。

前回はリサーチ・クエスチョンを立てる前にクリニカル・クエスチョンを言葉にしていくということを書きました。現場で感じた、悩み、わからないこと、つまづき、問題点、改善が必要なこと、理解できないこと、学んだ知識どおりではないこと、こうしたものすべてがクリニカル・クエスチョンになります。

クリニカル・クエスチョンをきっかけとしてリサーチ・クエスチョンを作っていきます。良いリサーチ・クエスチョンは研究の原動力となります。では良いリサーチ・クエスチョンとはどのようなものでしょうか。福原俊一『リサーチ・クエスチョンの作り方 第3版』では良いリサーチ・クエスチョンの要件として「FINER」を紹介しています。

FINERは次の5つの項目の頭文字をとったものです。

Feasible = 実行可能である
Interesting = おもしろい/興味深い
Novel = 新しく独創的である
Ethical = 倫理的である
Relevant = 切実である

この中では2番目と3番目の Interesting & Novel(おもしろく独創的である)が特に重要です。おもしろいというのは、単に個人的な好奇心を刺激するというだけではなく、その専門領域や社会全体から見て意味があるということを指しています。同様に、新しく独創的だというのも、個人にとってそうであるというだけでなく、専門領域や社会全体から見て新しく独創的だということです。

そうすると自動的に、その領域でこれまでにどのような研究がなされてきたのかということを調べる必要が出てきます。自分の研究が新しいということを主張するためには、過去に同じような研究がないことを示す必要があるからです。こうした研究を探すには、Google Scholar が最も手軽で便利です。次のサイトからキーワードを入れるだけで学術的な文献に限定して検索してくれます。

また、日本の学術文献を探すには J-STAGEが便利です。

こうしたサイトで研究を探してみると、たくさんの文献が出てくるか、まったく出てこないかのどちらかです。たくさんの文献がリストされると「ああ、すでにこんなにたくさんの研究があるのか。私のリサーチ・クエスチョンはすでに研究され尽くされている」と思うかもしれません。しかし、実際はキーワードが一般的すぎるのが原因です。逆に、まったく文献が出てこないときには「やった。このテーマは私が最初に発見したものだ」と思うかもしれません。しかし、実際にはキーワードが特殊すぎるものだということが原因です。

いずれにしても、キーワードを少しずつ変えて文献検索をしていくと、だんだんと感じがわかっていきます。そのプロセスをたどることが研究史を勉強していくことになるのです。

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