1-アドラー19

【アドラーオンライン】27(最終回)親教育プログラムの柱となるもの

月曜日はアドラー心理学のトピックで書いています。しばらくアドラーオンラインの内容で書いています。ビデオと質疑応答で学ぶ「アドラーオンライン(第2期)」は募集中です。2回まで試し読みが下記のところからできますのでどうぞご覧ください。

前回は、ペアレントトレーニング、つまり親になることのトレーニングについて説明しました。アドラー心理学をベースにした親教育のコースには、ドライカースからディンクマイヤーが開発した「STEP」、そこから野田が開発した「SMILE」と「Passage」、ロジャースからゴードンが開発した「PET」、ネルセンが開発した「Positive Discipline」、ポプキンが開発した「Active Parenting」などがあります。

このように開発者によるバリエーションと味付けはあるものの、アドラー心理学をベースにした親教育のプログラムには共通する柱があります。それは以下の4つにまとめることができるでしょう。

1つ目は、子どもとのコミュニケーションの方法について学ぶことです。具体的には、子どもがどのようなことを意図しているのかを想像しながら、共感的に聴くとということです。そして、親が話すときには、子どもを責めずに話す方法を身につけるということです。特に、親が意図しなくても「どうして?」や「なんで?」と問いかけることで子どもは自分が責められていると感じることがあります。こうしたコミュニケーションの方法は、互いに違っていても、人としては対等である(equality)というアドラー心理学の考え方が土台になっています。

2つ目は、子どものしつけについては、親の思い込みによってではなく「結末(consequences)」によってしつけることを勧めています。結末については、自然の結末と論理的結末(社会的結末)の2種類があります。自然の結末とは、子ども自身が何か行動を起こしたら、その結末を自分で体験することによって学んでいくというものです。子ども自身に重大な危険が及ばない限り、自然の結末によって子ども自身が学んでいくのがいいでしょう。論理的結末とは、親と子があらかじめ想定できる状況について話し合ってルールを作っておくということです。このとき、親は子どもが選べる選択肢を与え、子どもに選ばせるのです。このようなしつけの方法をとることによって、子どもは、親の支配下に入るのではなく、自分自身をコントロールするスキルを身につけていくでしょう。これが子どもが自立するために一番重要なことです。

3つ目は、誰の課題であるかということを意識することです。これは「課題の分離」(野田の訳語)としても知られています。何か行動をして、その結末が子ども自身にかかるときは子どもの課題です。それについて心配するのは親の課題です。それぞれを解決するのはその人自身の課題なのです。まず、このように考えてから、その問題が親と子の共同の課題になるかどうかというステップに進んでいきます。

最後の4つ目は、すでに取り上げた家族会議です。家族会議では、以上3つのスキル(コミュニケーション、結末の体験、誰の課題か)をそこで活用することを想定しています。家族会議を継続的に実施することによって、家族の連帯感を高めるという目的が達成できます。

まとめると、自立し、社会と調和した子どもを育てることと、親自身の考え方の育成のためには親教育は必要であると考えられます。親教育プログラムには、アドラー心理学をベースにしたものとそうでないものがあります。その中でも家族会議を核としたドライカースとそこから派生したプログラムは有望なものでしょう。しかし、その効果のエビデンスはまだ不十分です。これからの実践と検証が待たれます。

マガジン「ちはるのファーストコンタクト」をお読みいただきありがとうございます。このマガジンは毎日更新(出張時除く)の月額課金(500円)マガジンです。また「2019年版」ではその年のすべての記事が月額課金よりも割安(3000円)で読めます。テーマは曜日により、(月)アドラー心理学(火)教える/学ぶ(水)研究する(木)お勧めの本(金)思うこと/したいこと(土)経験と感じ(日)お題拝借で書いています。ご購読いただければ嬉しいです。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。