5a-オトナの研究

【連載】アンケート調査の基礎(第6回)質問項目の作り方

金曜日は「オトナの研究」のサブテーマとして「アンケート調査の基礎」の連載をしています。定期購読者が増えるたびに、感謝を込めてその日の記事を全文公開にしています。

前回はアンケートの基本的な構成要素について説明しました。アンケートの構成要素は、(1) 表紙、(2) フェイスシート、(3) メインの質問項目、(4) 自由記述 です。

今回は、質問項目の作り方について説明しましょう。特に複数の質問を組み合わせて特定の信念や態度を測定したい場合の作り方を説明します。このような質問群を心理尺度と呼びます。心理尺度を作るためには、項目を完成したあとにデータを収集して、項目群を精選する必要がありますが、ここでは、最初の一歩としての項目群の作り方を説明します。

質問を作成する手順は以下のステップです。

(1) テーマを設定する

まず、測りたい概念を決めます。たとえば、学生の「大学への満足度」というような概念です。

ここで、概念などと難しいことを言わなくても、「あなたの大学への満足度はどれくらいですか。1(非常に不満)から5(非常に満足)の数字でお答えください」と尋ねればいいのではないかと思う方もいるでしょう。それでもOKです。その場合は大学への満足度を「総合的に」測定したということになります。

しかしこの「総合的に」というのは、内実は曖昧です。回答者によって、授業内容の良さを思い浮かべるか、施設の良さを思い浮かべるか、ゼミの先生の面倒見の良さを思い浮かべるか、就職するときの知名度を思い浮かべるかは、人それぞれになってしまいます。

そこで、これらの各側面について尋ねる質問項目を用意しておけば、より正確に「満足度」を測ることができます。これが、測定したい概念について複数の質問項目を用意することの目的です。

(2) ブレーンストーミングをする

複数の質問項目を用意するためには、ブレーンストーミングという方法を使うのがいいでしょう。ブレーンストーミングは通常複数の人で行いますが、一人でもできます。

ブレーンストーミングでは、お互いに批判することなく、思いついたことを自由に出していきます。できるだけたくさんの内容を出すことが大事です。そのために、その内容の良し悪しについては、評価しません。そうすれば、どんなに突拍子のない内容であっても自由に出していくことができます。

思いついた内容はポストイットなどの付箋に書いていきます。他の人のアイデアに触発されて思いついたアイデアもどんどん追加していきます。こうした相乗効果があるため、複数人で実施すると多くのアイデアを短時間で出すことができます。

(3) KJ法をつかって整理する

たくさんのアイデアがでたら、最後にそれをまとめていきます。そのときはKJ法を使うといいでしょう。KJ法は、たくさんのアイデアを整理し、その背後にある概念を取り出そうとする方法です。ブレーンストーミングの段階でポストイットに書かれたアイデアをひとつずつ読んでいきます。そして似通ったアイデア同士を近くに貼り付けていきます。

このようにしてアイデアをまとめていきます。ある程度まとまったところで、そのグループに対してラベルを考えてつけていきます。ラベルがいくつか生成されると、最初に検討しようとした概念について複数の側面があることがわかります。

(4) 各側面について代表的な質問項目を決める

最後に、KJ法によってまとめられた各側面について代表的な質問項目を決めていきます。最終的な質問項目の数は、概念の広さにしたがって多くなります。しかし、あまりにも質問項目が多いと回答者に負担がかかりますので、多くても50項目くらいに抑えておくのがいいでしょう。20項目くらいであれば、回答者に負担がかかりません。

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