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おとなの研究を始めよう

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普通の大人が「研究」のようなことを始めると、大人の人生は楽しく、意味のあるものになるかもしれない。そういう人たちが増えていくと、社会は全体としてより良くなっていくんじゃないかな。…
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#おとなの研究

講師からのメッセージ

2020/10/30(金)「独立研究者を始める」ビデオシリーズを公開しましたおとなの研究者の皆さん、向後です。 「おとなの研究コース」で第ゼロシーズンのコンテンツとして作成した「独立研究者を始める」ビデオシリーズ全5回を公開しました。 ぜひ視聴してお役立てください! 2020/09/23(水)引用文献と参考文献の違いについて

1. おとなの研究を始めよう:この講座について

「おとなの研究」ってなんでしょうか? 普通の大人が「研究」のようなことを始めると、大人の人生は楽しく、意味のあるものになるかもしれない。そういう人たちが増えていくと、社会は全体としてより良くなっていくんじゃないかな。 こんなことを考えているのです。これが、この講座を開いたきっかけです。 大人は必ず自分の「現場」を持っています。そして、その現場では必ず問題やトラブルが起こっています。仕事の問題、そこにいる人同士の協力とコミュニケーションの問題、非効率的なこと、マンネリにな

2. まず先人の研究を探す

前回は、フツウの大人が「研究」のようなことを始めると、大人の人生は楽しく、意味のあるものになるだろうということを書きました。 つまるところ、現場で「この現象は何なんだろう」とか、「いったいどうしてこのようになるんだろう」と疑問に思ったことはすべて研究のトピックになります。そこから「おとなの研究」がスタートします。 なんでも研究のトピックになるのですが、面白そうなトピックについては、先人たちが研究を積み重ねているはずです。まったく新しい研究トピックというものはほとんど存在し

3. ラボノートを用意しよう

今回は「ラボノートを用意しよう」ということを書きたいと思います。 ラボノートというのは研究の記録に使うノートです。いくつかのメーカーから商品が出ています。これはコクヨの入門用ラボノートです。 ラボノートを使う目的は、研究のプロセスを逐一記録し、その正当性を保証することです。そのためにノートの小口に模様を印刷して、ページの抜き差しができないようになっています。 また、ラボノートの書き方にもいくつかの作法があります。たとえば、空白をあけないように書いたり、空白が空いた場合に

4. 現場で起こる問題のすべてが研究のネタになる

前回は、「ラボノートを用意しよう」と題して、一冊のノートを用意して、そこに自分の研究トピックに関することをすべて時系列順に記録していこうということを書きました。 今回は「研究の視点を持つと現場で頭を悩ませるすべてのことが研究のネタとして見えてくる」ということを書きたいと思います。

6. 自分の現場の問題を社会に還元できる研究にする

前回は、自分の現場の中で、問題だと感じているこの問題は、一体どういう問題なのかということを考え、観察していくことによって「What型の研究」を始めることができるということを書きました。 さて、このように現場の中で問題だと感じたことに目をつけることで研究がスタートします。そうすると、「え? 自分の現場の問題を取り上げることで、それを "研究" と呼んでいいのですか?」と考える人がいるでしょう。つまり、自分の現場の問題は、そこそこ特殊なものであって、それを研究したとしても、それ

7. 現場の観察から要因/変数を見つけだす

前回は、自分の現場の中で「この問題は何なのか」という意識を持つことで「What型の研究」をスタートさせ、それを一般化しようとすると「法則定立的」な研究に、その一回性の中の構造を見ようとすると「個性記述的」な研究に進むということを書きました。もちろんこの両者の視点を持って研究を進めることもできます。 さて「これは一体どういう問題/現象なのか」というWhat型の研究の視点を持って、現場を観察していくと、その現象を起こしている要因が徐々に透けて見えてきます。前々回に「グループワー

8. キーワードの概念を明確にする

前回は、現場をよく観察することによって、そこで起こっている問題の裏側で働いている要因が透けて見えてくることを書きました。それらの要因には、こちら側がコントロールできるものも、できないものもあります。これらすべてのものをまとめて「要因(factor)」あるいは「変数(variable)」と呼びます。 このように、研究の目を持つための最初の一歩は、現場や現象を観察して、そこから働いている「要因/変数」はなんだろうかという視点を持つことです。 たとえば「あの人はメンタルが強い」

9. 「自分だけが気づいている」という幸せな状態

前回は、現場/現象をよく観察することによって、そこで働いている重要な要因/変数を見つけることでWhat型の研究がスタートすることを書きました。興味をひくような現場/現象に名前をつけるとそれが研究のトピックになります。 たとえば「メンタルの強さ/弱さ」ということが私たちの日常会話でよく出てくるとしたら、一体それは何なのかということを追求することでひとつの研究をスタートさせることができます。 研究の第一歩として、まず、同じようなトピックや概念が扱われているかどうかを調査する必

10. 研究論文を読むのは本を読むよりも簡単

前回は、現場で問題を発見して「自分だけが気づいている」という楽しさを一瞬でも味わったら、先行研究の調査に移ろうということを書きました。先行研究の調査は Google Scholar で検索して、関係のありそうな論文を読むところから始めるといいでしょう。 論文を読むというと「とても難しくて私にはできない」と感じる人もいるかもしれません。しかし、そうではありません。 その理由の1つは、論文は短いということです。印刷して10ページ前後というのが平均的な長さです。ですので、ある領

11. すでにある理論が自分の現場でも適用可能か

前回は、Google Scholar で先行研究の調査をして、関係のありそうな論文を探して、その論文を読むことについて書きました。学術論文には共通の形式がありますので、それを把握していれば、読むのは難しくありません。もし難しく感じるとすれば、それは自分にその知識がないだけの話ですので、そこから勉強を始めればいいのです。 さて、自分の研究テーマに関連する論文を集めて読んでいくと、最初は思いつきに過ぎなかったものが、徐々に1つの研究テーマとして形作られていきます。 この段階で

12. テーマからトピック、そしてリサーチクエスチョンへ

前回は、「自分だけが気づいている」と思っているテーマについて研究を探してみると、すでにたくさんの研究がなされていることを発見するだろうということを書きました。 たとえば「子どもへの賞罰」ということを研究テーマとして設定してみると、たくさんの研究がなされていることがわかります。 ここでテーマ(Theme)とトピック(Topic)を使い分けておきましょう。テーマは大きな概念を示すものです。一方、トピックはテーマの中身をより具体的にしたものです。「子どもへの賞罰」はテーマであり、