見出し画像

『烏の緑羽』スピン考察

阿部智里先生が、装丁にもこだわりを持っているのは有名な話ですよね。
明言はされてないので、あくまでわたしの推測した『烏の緑羽』の装丁について。

スピンの色が特徴的だと感じたので、八咫烏シリーズはじめ日本の歴史小説や和風ファンタジーを読む際に役立つ『定本 和の色事典』(視覚デザイン研究所)を引いてみました。

おそらくこれだろうと思われたのは「壺菫(つぼすみれ)」

万葉時代の重ねの色目の一つ。表は紫、裏は薄青で早春に着用。

『定本 和の色事典』
視覚デザイン研究所
p257

でした。

まぁびっくりしましたよ。
薄青と表記されると、現代日本人の感覚ではおそらく 水色やスカイブルー を思い浮かべますけど、違うんですよ。

薄青(うすあお)
系 明るい緑
青色を薄めただけでは空色になるが、平安時代には黄みを加えて、この色みを「薄い」と表した。

同上
p171


薄青=緑色
なんですよ!

つまり
壺菫は 紫×緑 のこと。

紫は宗家の色、つまり長束。
緑は名前のとおり、翠であり翠寛。

このお話は、長束と翠寛について描かれています、とスピンで語っているんです。
胸が震えましたね。
阿部智里先生の造詣の深さにも、細部にまでこだわるプロ魂にも。

なーんて想像してみました。
楽しいですねー。

余談ですが、この本で「香色」を調べると非常に愉快な気持ちになります。ご興味のある方は、ぜひ手に取ってご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?