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デザイン科OBインタビュー みなはむ先輩 前編

都立工芸高校デザイン科の進路学習の一環として行なうインタビュー企画。イラスト・絵画の制作や発表等で幅広く活動されているみなはむ先輩にお話を伺いました。
インタビュアー: OBインタビュー担当生徒3名

みなはむ (MINAHAMU)
1995年生まれ。東京都在住。武蔵野美術大学日本画学科卒業。
大学在学中からCOMITIAで同人誌を制作し発表したり、絵画を展示するなどの活動を続けている。
主に自然や日常の中に少年少女が佇む絵をデジタル・アナログ問わず描いている。
近年は装画を中心にイラスト・絵画の制作依頼を受ける。
作業環境…iPad pro 12inch, macbook
主な使用ソフト…procreate(描画), Illustrator CS6, Photoshop CS6

経歴は以下サイトより参照


―大学で日本画学科への進学を決めたのはなぜですか?

日本画学科は、入試の問題がきちんとした着彩とか、デッサンとかの根本的な画力を問われるものです。自分の絵の表現をするためには、そういった絵画の基礎を知ってからなんじゃないかという思いがありました。

ちゃんと勉強した先で自分が描く絵はどんな風になるのかなという興味がありましたね。中学生の頃から、花などをスケッチするのが好きだったんですが、日本画はそういう絵が多いし似ているんじゃないかなと思って選びました。


―影響を受けた作家さんなどはいらっしゃいますか。

私は誰か作家さん一人からというよりは、いろんなサブカルチャーの作家さんから影響を受けてると思います。

子供の頃は漫画の絵を模写していて、そういう意味では種村有菜さんとか、衛藤ヒロユキさんですね。そういう影響もあれば、イラストレーターでいうと現在ネットで活躍していて風景画などを描いていらっしゃる、くまおり純さんには中学生の頃から影響を受けていました。

あとは洋画、日本画からもいいなと思う作品はたくさんあって、私は画面の中で色彩をどう配置していくかを考えるのが好きなので、マチスやエドワード・ホッパーの絵には影響を受けたと思っています。

日本画だと近代以降の東山魁夷ぐらいの時代の作品が好きです。そういう作品たちから好きなところを少しずつかいつまんでいます。


―お仕事で嬉しかったこと、大変だったことを教えてください。

私は絵を頼まれずに描いてから売ることが多くて、そういう絵は自由に描いてもいいんです。でも、お仕事で依頼される絵はクライアントのイメージと自分のできることをすり合わせて作っていきます。

それがうまく噛み合わなかったり、クライアントさんに丸投げされてしまうと、大変だなと思ってしまいますね。その辺りはコミュニケーションだと思っていますが、私はコミュニケーションが苦手なので探り探りやりながら大変だなと感じています。

楽しかったことは、それらがうまく行って商品が完成したりすると、自分が描いてよかったと思えて嬉しくなります。後はお金がもらえるのはいいなと思います。達成感があるので。


―絵の題材はどのように決めていますか。

だいたいは自分が見た風景です。散歩などに行ったときに、いいなと思った風景をたくさん撮ります。その時なにかにしようと思わなくても、後々その風景が自分の中で勝手に意味付けられたり、空が夕焼けでいい感じだった時は「温かい気持ちの絵に使えそうだな」などの日常の中の気づきとうまいこと組み合わせてパズルのように重なった時に、「あ、これは絵にできるな」と思って絵になることが基本的に多いです。

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―絵を描く時に意識していることはなんですか。

絵を描く気が出なかったり、途中で面倒くさくなってしまう状態って、自分にとっての理想を意識してしまって、今の自分とその理想がかけ離れていることで、その時自分の現段階の絵を見ると、「かけ離れてるな」とか「やる気でないな」とか思ってしまうんです。

描き進めると今の自分が描いたものになるだけなので、今できることをやって、何も考えずとりあえず手を動かすということを大切にしています。


-どのくらいの時間をかけて絵を描いていますか。

大学生の頃はすごく頑張っていて、1日にドローイングを3枚とか4枚、課題があった時は一気に5時間以上描いてた気がします。

最近は描ける時に書こうと思っているのであの頃ほどは描いてないんじゃないかな。今子育てをしているんですけど、子供が邪魔してくるのであまり描けないんです。子供が寝た後とか、描けても4時間ですかね。

最近使っているソフトで作業時間が見れることを知り、一枚にどれくらいの時間がかかったのか、かたっぱしから見ていました。早いものだと2時間、苦労したものだと5時間くらいです。私はあんまり絵に時間かからない方なので、平均3、4時間くらいですね。


―絵を描くとき、画面の中の色彩の配置を考えることが楽しいとおっしゃられていましたが、最近の好きな色はどんな色ですか。

描き込んだ画面に対して白でモチーフを浮き立たすのが好きです。あとは立体物を描いていても、画面を平面と捉えて塗り絵のように塗るのも気に入っています。グレーなどの中間色を広範囲に置いて、最後に一部に青や赤などの色を置くと引き締まったと思えるのが、絵を描くときの醍醐味だなと思いますね。


―みなはむ先輩の絵を見てると、リアルというよりかはデフォルメされた少年少女の絵が多いと思います。そのスタイルはいつからできたんですか。

大学生の時にはもう描いてましたね。高校生の時はオリジナルよりファンアートの方が多かったのですが、大学に入ってから自分の絵を描こうと思ったとき、やっぱりキャラクターを入れたいなと思いました。

けれども急に人間がリアルになるのは違和感がありました。それと、キャラクターっぽいデフォルメされた人間を描くときに、あまり個性を出したくなくて。

私が描く抽象的なテーマのことを考えると、そこに個性的な人間が登場するのは余計な情報だと判断しました。背景が人間の添え物というより、人間が背景に馴染んでいる絵が描きたくて。特徴の少ない少年少女を描くことで、見た人が共感しやすくなると思っています。

-デフォルメされた人間がリアルな環境に馴染んでいたり、奥まで描き込まれていても手前に目が行ったりするのは、どのように描いているからでしょうか。

環境光に馴染ませることができたら、脳が自然に処理してくれる感じがします。あと、私は逆光が好きで、陰の中で影が消えて、ディティールが立体的じゃなくてもいいように見えるので、そういうのもあるかもしれません。

見え方については、ディティールを描く時間に対して、見え方の印象を優先して描く時間を持つといいと思います。

私は感覚で描くタイプですけど、美術館や学校、大学などでたくさん絵を観ていくうちに、自然と培われていくんじゃないかなと思いますね。


後編では、SNSによる作品発表のお話や、今の活動に至る経緯などについてお話いただきます。

後編へ続く

Instagram→ mi_na_ha_mu


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