白紙も模様

白紙も模様のうちなれば心にてふさぐべし

タイトルは、江戸時代を代表する絵師、土佐光起(とさ みつおき)の言葉。
「白紙にも意味があり、余白は観る者の想像力をかきたてる作品の一部」と僕は解釈している。

デザインをする上で白紙(=余白)は重要な要素。
それはグラフィックデザインだけでなく、プロダクトデザインでも同じ。ディテールを盛り込み過ぎると美しくならない。いいデザインには必ず適切な余白がある。

余白があればいいってものでもない。
たまに「視力検査の “Cマーク” ですか?」というほど小さく、白い背景にちょこんと文字が配置されたプレゼン資料を目にする。文字通り間が悪いし、何より見づらい。アラフィフの目には特に厳しい。かっこいいの前に相手に伝わらなくちゃ意味がない。ムダな間は、デザインの質を下げちゃうし、見る人の想像力も奪ってしまう。

生け花でも “間” はとても大切な要素。
敢えて少ない材料で構成し空いた空間を作るそうだ。この間によって花の美しさが際立つという。何もないところに美を感じるのは "わびさび" に通じる、とても日本人らしい美意識だと思う。西洋のフラワーアレンジメントがボリュームを出し、華やかな美しさを表現するのとは対照的なアプローチだ。

“行間を読む” という言葉。
いかにも日本的な表現だと思っていたけど、実は生まれは英語が先で日本語が後だという記事を読んだ。英語の "read between the lines" を直訳したという。昔の国語辞典には、「行間」の項目は「文章と文章の間」とだけ書いてあり、「行間を読む」という用例が、初めて国語辞典に載ったのは1980年代だというのが根拠らしい。そんなに最近なの?と疑問に感じる部分はあるけれど、活版印刷の歴史はヨローッパの方が日本よりも400年も古く「行間を読む」歴史は日本より長いはずだから、僕は妙に納得した。

「行間を読む」を国語辞典で調べたら、こんな説明が書いてある。

文字面には現われていない、
表現主体の真の意図を汲み取る


うん。やっぱり余白だ。
美しいと感じる文章は適切な余白があると思う。
読み手が書き手の思いを汲み取って想像する余白を残してくれている。

今、幸せをテーマに書いてみようという企画で集まった作品を冊子化する準備をしている。メンバーは、リーダーのあきらとさんひな姉ルミ姉たけのこさん、との5人。

集まった作品は約70。
1作品あたり1500文字だとしても約10万字。
本1冊の文字数の目安は10万字と言われているから、ちょうど文庫本一冊くらいの頁数になると思う。メンバーは、子育てに仕事に飲み会、noteへの投稿や好きなドラマや映画にマンガを見たりと忙しい。その隙間をぬって編集するので進みは遅い。編集方針は「無理せず妥協せず」(←今、僕が勝手に作っちゃいました)。リアルな生活を大事にしながら編集は妥協せずに1文字1文字、誤字脱字までチェックしている。

最近、メンバーで頻繁に議論しているのは “改行” のこと。
noteでは、改行の意味は大きい。

一番伝えたいことの前後に入れる改行。
話題を変える為の1行の改行。
読む速度を落とし、間を入れて欲しい2行の改行。

どれも意味ある改行だけどページ数に限りがあるし、WEB画面と紙では見やすい改行数が変わるから削らなきゃいけない改行がある。
これがとっても悩ましい。事前に作者の方々には改行編集の了承をもらっているとはいえ、簡単に修正できない改行ばかり。『改行奥が深い~』とみんなで日々叫んでいる。

改行は、作者の思いが込められた意味ある余白。

みんなから預かった余白を5人で心を込めてふさいでいく。
少しでも作者の意図が崩れないように。


クリスマスまでにはみんなのところへ届けたいと思っていたけれど、もうちょっと時間がかかりそう。
多分、今は編集作業の4合目くらいかな?
もしかしたら、まだ2合目かもしれない。

小冊子を希望されている方々へ
もう少々(もうだいぶ?)お待ちいただけたら幸いです。




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