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おかゆのような文章

いつだかは忘れたが、タイムラインに流れてきた言葉に目がとまった。

「おかゆのような文章だね」

ハネサエ. さんが、だれかの文章をそう表現していた。ぼくは、この「おかゆのような文章」という言葉がとても好きだ。

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風邪をひいて食欲がないとき。なにか食べたいものある?と母から聞かれ、決まって答えたのは「うどんとプリン」。うどんは乾麺でなく、袋入りのゆでうどん。プリンはぷっちんプリン。小学生だったころの定番メニューだ。風邪をひくと、そのスペシャルメニューが食べられると、熱でぼーっとした頭でわくわくしてたっけ。

中学を卒業した頃には滅多に風邪をひかなくなったが、たまには熱をだすこともある。なまじ体力がついてる高校生だから、風邪で倒れたときは症状が重い。なにも食べたくない、でも食べなきゃいけない。

そこで、おかゆだ。だるい体にムチを打ち、気力でベッドに腰かけて食べる。おぼんの上のおかゆに味はない。ただ、食べたという感覚だけが、口から喉へ伝わり胃袋に落ちる。味は残らず、安心感だけが残る。

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おかゆのような文章とは、そういう感覚なんだと思う。こう思わせたい、こう感じて欲しい、という作者の主張がない文章。おぼんの上にちょこんと置いてあり、食べられる分だけ食べてね、と語りかけてくれる文章。

今週、悲しいニュースや強い言葉をたくさん目にしたから、優しい文章を読みたいと思った。音楽や絵で疲れたこころを癒すこともできるけど。強い言葉には、優しい文章が一番効く。ノドにひっかかった小さなトゲも、丸くつつんで流してくれて、体の中にすっと溶ける。読んだという満足と、安心感だけを残してくれる、おかゆみたいな文章を。


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