藍羽放浪記・・・D.S.


物心ついた時から、僕には夢とか好みだとかは無かったんだ。

いつも誰かの背中を追い続けた。
努力も実らないことがほとんどだった。
やる気は人一倍あったつもりだ。
けど「本物」には勝てなかった。

僕の夢は「偽物」いや、「借物」と言った方がしっくり来ると思う。

周りが語る夢をそのまま、自分の夢ということにしていた。

空っぽの僕には、友達がいた。
いつもそばにいた友達。
名前も顔も分からない。
でもその子のことは手に取るようにわかる。

何でもできる、僕のヒーロー。

悩んだ時はいつも彼に相談するんだ。

けれど...「夢」の話をすると彼はいつも分からない顔をしかめて、不服そうな声でこう言う。

「君は死ぬなら早い方がいいよ」

どうして、そんな事を言うの?
僕の味方じゃないの?

「僕は君の味方だよ。でも、君の敵でもあるんだよ。」

矛盾してるだけの大して深くないその言葉は、なぜだか僕の胸に深く突き刺さるんだ。

そうだ、彼に名前をつけなきゃ。

僕が青だから...「藍」...なら....「赤」...

そうだ、名前は僕と同じで苗字は「恭赤(うやらか)」にしよう。

僕の憧れで、僕の映し鏡.....

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