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法制審議会家族法制部会第15回会議議事録7~北村幹事・戒能委員・井上委員・武田委員

今日は、中間試案が発表されるはずだった

 エンディングまではまだ遠い

バグチェックなかんじかな
罠に気をつけたい

議事録を読んでいく

  それでは、先に進みます。
  16ページ以下の「財産分与制度に関する規律の在り方」という部分ですが、まず、この部分につきまして、事務当局の方から説明を頂きたいと思います。

話は財産分与へ

○北村幹事

 事務当局でございます。16ページ以下になります。「財産分与制度に関する規律の在り方」として、まず「財産分与の目的・理念の明確化」、そして「財産分与における考慮事情の明示」、そして「当事者の寄与の程度」につきまして、御提案をさせていただいております。一読での御議論を踏まえつつ、大きくは、一読での議論は平成8年の法制審の要綱と考慮事情は大きく変わっていないという御意見だったかなと思っておりますので、そのような形で、この部会としても進めていくことでどうかということでの御提案でございます。特に、考慮事情の明示、あと当事者の寄与の程度というところにつきまして、2分の1なのか2分の1でないのかについて、いろいろ御議論はありつつも、基本的には現在の実務をベースにし、また、当時の法制審での議論の結果も尊重するということでよいのではないかという御議論だったと理解をしてございます。
 そのほかですけれども、21ページの4の「夫婦の居住用不動産に関する規律」ということで、幾つか御提案をし、御議論いただいたところではございます。賛同する御意見も頂きつつ、慎重な御意見も頂いていたところではありますけれども、改めて検討しつつ、やはり今回の諮問の範囲を踏まえて考えると、なかなか難しい。さらに、相続のように債務も含めて承継されるような場合と、離婚の場合を全く同じように考える、全くと同じとはなりませんけれども、同様に何か強い規律を設けるというところまでは、なかなか難しいのではないか。また、さらに、特に今回、住宅ローンとかへの影響とかも踏まえると、なかなか結論というのは出しにくいのではないかということも踏まえて、慎重な検討をしてはどうかということで、記載させていただいております。
 23ページの5の「財産分与に係る期間制限」ということで、こちら、延ばす方がよいという御議論を一読の方で頂いておりました。いろいろ年数ございますけれども、3年あるいは5年ということで、皆様方の御意見いただきたいということになります。
 25ページの6の財産の開示についても、いろいろ御意見いただいていたところでございます。財産分与に限られるわけではなく、養育費の請求の場面でも同様に問題になってくるかと思いますけれども、こちらについて、今回財産分与のところということで挙げさせていただいております。案①と②、それぞれ挙げさせていただいておりますけれども、①の方は、離婚する際に他方に対して自己の名で得た財産について報告するという義務を、実体法上の義務を課すということにしてはどうか。案②については、裁判手続において、家庭裁判所に対し財産に関する情報を開示しなければならないと、裁判手続上の義務、こちら、案①、②、どちらか一方ではなく、両方ということもあり得るのかもしれませんし、どのような規定が実体法上置けるのかということも様々ございます。新たな規律をどこまで設けられるのか、そして、その義務に違反した場合にどうなるのかというところまで踏まえて考えると、新たな規定を置けるのかということについても、しっかりと議論しないといけないとは思ってございます。
 26ページの7の「共有物分割訴訟との関係」ですけれども、これも、やはり相続、遺産分割の場合と同じように扱うのはなかなか難しいと考えてございまして、そうすると、今回の部会の中でこの点も含めて議論していくというのは、なかなか難しいのかなということで、慎重な検討を要するということでどうかと挙げさせていただいております。
 破産手続についても同様でございます。
 以上でございます。
○大村部会長 ありがとうございます。財産分与につきましては、1から8まで御説明がありましたけれども、一括して、どの部分についてでも結構ですので、御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構です。

事務局の説明


○戒能委員


 ありがとうございます、戒能です。一読目の資料8で、一度この財産分与については議論があったと思います。そのときにも意見を述べさせていただいたんですが、今日は、16ページ、第2の1の財産分与の目的・理念の明確化というところですね、それと、それを受けて、考慮事情の明示で、今回は①から⑥まで具体的に考慮事情について御提案があるわけなんですが、それについて意見を申し上げたいと思っております。
 それで、1のところなんですが、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るためということで、財産分与の目的が書かれてあるんですが、結局衡平というのは何かということになると思うんですよね。そうすると、バランスということだけではなく、やはり日本の社会だけではなくて、世界各国共通している面もあると思うんですが、実際に不公平な結果がもたらされていて、財産分与に至るまでの稼得能力とか、それからキャリアの形成、これは前回も申し上げました。その不公平な結果を是正していくという役割を、この財産分与に明確に理念として持たせるべきではないかということを考えております。
 それで、当事者間の平等という、平等と衡平とはどう違うかとか、難しいかもしれませんけれども、国際条約など、女性差別撤廃条約とそれに基づく一般的勧告などで、経済的な格差が男女間、夫と妻の間で平等ではないということが、この部会での大きなメインテーマである子の利益に直結するということだと思うんですね。そうすると、二つあって、一つは、非正規が多いとか、そこで収入が少ないとか、そういう経済的な差があるということと、もう一つは、ここで言うと、これは補足説明に書かれているんですが、財産分与の機能を三つに分けて、17ページの1段落目にまとめてありますが、その中の補償というところです。高学歴が進めば進むほど、実はギャップが大きくなってしまう。特に日本の場合、結婚ではなくて、子育てによってギャップが大きくなってしまう。稼得能力やキャリア形成とか、それから能力開発というところに差が出てきて、それが非正規の雇用しかないとか、正規の雇用でも昇進、昇格の差というのが賃金に反映されている。それで、その格差をどうやって財産分与という私的な関係で埋めていけるかというときに、やはりこの①、②の中の扶養ないし補償、扶養と補償とないしっていうことでまとめられるのかどうかというのも、更に検討する必要があるとは考えているんですが、少なくとも、理念の明確化ということをまとめるんであれば、一つは補足説明ということではなくて、重要なことなので、きちんと三つの要素を理念1の中に書き込むべきであろうというのが、1点です。
 それで、先ほど申し上げましたように、経済的な格差の是正という問題と、それからキャリア形成とか能力開発のときの、これは寄与というんでしょうか、非金銭的な寄与の問題があるんだということですね。アンペイドワークっていいましょうか、そこに注目しないと、世界における男女格差がどうしてこんなに大きくなってしまって、それがなかなか解決できないのかと。それを、私的な関係においてという限定なんですが、どういうふうに是正できるのかというときに、きちんと理念として書き込むべきだろうというのが、2点目です。
 具体的に申し上げますと、考慮事項なんですが、①から⑥まで書いていただいたんですが、必ずしも明確ではないところがあります。例えば、②のところで寄与の程度といったときに、非金銭的な寄与というのはどういうふうに考えられているのかとか、それから、⑥に職業及び収入とありますけれども、それだけでいいのか、むしろ問題は、雇用形態という問題があるわけですよね。そういうことまできちんと書き込むべきではないかとか、そういうことも含めて、補償という考え方をもう少し、一歩踏み出して明確に示していただきたいと考えています。
 それで、学歴というのもちょっと難しく、学歴があってもという状況がずっとあるわけですね。ですから、そういうことなど、もう少し実態に即して、この①から⑥、プラス、7でキャリアとか能力開発での状況というのも含めて書くというような工夫も必要だと思っております。
 内閣府の、去年の10月の調査で、離婚と子育てに関する世論調査というのを冊子で頂いたんですけれども、離婚後の生活に困窮している原因が、離婚や子育て、それから、仕事を辞めるなどによって収入が低くなっているということが挙げられていまして、どういう場合に相手方が生活費の負担責任を負うべきだと考えるかという設問なんですが、その回答の中でも一番多くて、75%ぐらい占めていて、しかも女性が多いというようなことがあります。そういう調査なども参照しながら、扶養と補償との関係も整理し実態に即して、明確に補償という考え方を打ち出していただきたいと思います。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員から、基本的な考え方としては、財産分与における補償的な要素をもっと強調してほしいという御要望だったかと思います。
 具体的には、財産上の衡平と書かれているところを、現在3要素があると言われているので、これを開いた形で書き込むということをおっしゃっていたかと思います。①、②、③と理解していいかどうかということについては、これまで議論したときに異論もあって、おそらくそれで、これを開いた形にはしないで書かれているということかと思いますけれども、その辺り、再考の余地はないかという御提案かと思います。
 それから、要素の方については様々な御指摘がありましたけれども、具体的に考えやすいものとしては、御指摘があったところでいうと、2の②の各当事者の寄与の程度に、どのような寄与が含まれるのかということを書き加えられるか、あるいは⑥に職業と書いてあるけれども、ここを膨らませて考えることができないか、そうした形で具体的な御提案を頂いたかと思いましたが、そういう御理解でよいでしょうか。
○戒能委員 はい。
○大村部会長 ありがとうございます。
  そのほかいかがでしょうか。

子どものいない夫婦にも財産分与がありうるのに、なぜ一緒に検討しているのか不思議


○井上委員


 ありがとうございます、連合の井上です。2点、意見です。
 まず、先ほど事務局の説明で、4と7と8については、特段の規律を設けないこととしてはどうかという御説明がありました。他の法体系との整合性など、いろいろな問題があって難しいというところは理解するんですけれども、やはりこの部会の中で議論をしたという経過はきちんと残しておいた方がいいと思いますので、何らかの形でそれが残るようにお願いしたいと思います。
 それから、25ページの6、相手方の財産の開示のところですが、相手方が財産について虚偽の報告などをする可能性もあるのではないかと思います。26ページの(注2)に、正当な理由なく財産を明らかにしないときは、家裁が過料に処するものとする方向性も考えられるとの記載がありますけれども、やはりここは、そういうことも踏まえて何かしらの強制力あるいは過料を科すことについて、しっかりと入れ込んだ方がいいのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは、規定を置かないという形で提案がされている4、7、8について、従来の議論の経緯が残るような形を採ることが必要なのではないかという御指摘を頂きました。それから、6の財産開示については、実効性を確保する手段をもう少し立ち入って考えるべきではないかという御指摘をいただいたものと理解をいたしました。ありがとうございます。
 そのほか、財産分与について、何かありますか。

夫婦になるなら、お金の話は透明でありたい
その方が離婚を回避できるかもしれない

○武田委員

 親子ネット、武田でございます。財産分与に関して、1点目の目的・理念の部分と考慮事項の明示、三つ目の当事者の関与の程度という点に関して、意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 1巡目議論における部会資料10、もう一度見直しつつ、再度財産分与に関して当事者の意見も聞きつつ考えてみました。やはり、扶養というと非常に理解されづらいというのが、私が実感したところです。全く会えることもなくて、接点は養育費だけという中で、恐らくこの財産分与の話は、離婚成立後に改めて出てきている話で、そんな中で、やはりこの扶養という言葉に過敏に皆さん感じられるなというのが、当事者の皆さんから意見を聞いた、私の持つ感想であります。戒能先生からも、この扶養と補償というところをもう少し明確にという御発言ございましたが、それはそのとおりだろうと、そんなふうに思っています。
 再度この3点に関して考えまして、清算的要素に関しては、どなたも異論がなく規律化する方向で検討が進むんだろうなと、それに関して異論はございません。扶養、補償の要素はちょっと飛ばしまして、三つ目の慰謝的要素ですね。これも、もう一度、私、考えたんですけれども、やはり一回的解決により父母の紛争の長期化を防止するという考え方、これは、非常に効果としてよい効果が期待できる、そのように改めて感じました。したがいまして、1巡目からここは意見を変えまして、規律化に向け検討を進める方向でよろしいのかなと思います。ただ、部会資料18ページに少し、この重複しない方向を検討しておくという表現ありました。ここはそのとおりかなと、そんなふうに思います。
 やはり、この問題の最後、扶養ないし補償的要素という部分に関してです。ちょっとまだ、消極的と言わざるを得ない部分がございます。冒頭、事務当局の方から、平成8年の答申、これをベースに置いたという御説明がございました。その議論の積み上げそのものは分からないので、それはそれとしてよろしいかと思うんですけれども、やはりその平成8年当時、今から数えると26年前ですか、今これ、女性の社会進出がこれだけ進んでいるというか、進めようとしている中で、女性が結婚を機に離職をしてキャリアが中断する、私、当時、多分婚姻した当時ぐらいだったと思うので記憶にあるんですけれども、当時は、女性が結婚をすると、家庭か仕事かを選択させるような、多分そんな時代だったと記憶しています。
 私は、個人的には、ここ20年以上日本の会社で働いたことがないので、一般の日本企業の実態は分からないんですけれども、少なからず、アメリカ系の企業でこのような考え方というのはありません、いいか悪いかは別です。私も、やはりこういう実態が分からなかったので、少し調べてみました。そうしましたら、内閣府の調査で、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2018というレポートがございました。項目といたしましては、第1子出産前後の女性の継続就業率、要は、結婚を機に仕事を辞めたか否かというデータでございます。このデータによりますと、就業する割合、2004年まではずっと4割前後で推移しましたと。2010年から14年にかけては53%となっていると報告されています。これは数字だけ見ると、増えてはいるんだけれども、それほどびっくりするほどの数字ではないなと思いました。もう一歩踏み込んだデータがありまして、就業形態別です。正規職員の場合の離職率、2010年から14年、約3割、30.9%になっています。1995年は54.5%、半分以上の方が辞めていた。今は、2010年から14年なんで最近ではないですけれども、3割程度と。一方、パート、派遣の場合は、95年から99年の調査でも81%、2010年から14年の調査でも74%、それほど変わっていない、そんな数字がやはりあるんだなと思っています。このデータを見て、正規職員の離職率は明らかに減少している。あわせて、育休を普及させ始めているといいましょうか、今は私はそういう時代だと思っておりまして、現時点、2022年現在ではもっと低いのではなかろうかと、これは推察にすぎませんけれども、これから先はどういう方向に行くのかというと、もっと低下していくんだろうと、こんなふうに思っています。
 繰り返しになりますが、この26年前、寿退職という言葉が当たり前のようにありました。日本企業には、一般職という職種がありました。ちょっと現在とは隔世の感があるなと思っておりまして、このような、女性にこういう、婚姻というのは離職することが前提と捉えられかねないのではと、そういうところにまず違和感を感じるところでございます。本来、この辺りは、私のような当事者団体でなくて、もう少し専門的な方からコメントを頂くのがいいのかなと思います。
 もう1点、これって、補償的要素ってどうやって算出していくんだろうということを、少し、私考えてみました。具体的にはキャリアを中断しましたと、そのような場合にどういう計算をして、1巡目の議論では、月収100万と10万みたいな例も出ておりましたけれども、何かどうもその差分に対してどう算定する、それをどうそれぞれの当事者が納得感を得る、ここは非常に難しいのではないかなということを感じています。昨今、共稼ぎ世帯が当たり前になって、同居時の生活費の支出方法、これも多様化、別会計化が進んでいると思います。今、現時点でのこの部会での議論を見てみますと、基本的には現行の協議離婚制度にのっとって、家裁関与はなく進めていこうという方向で進んでいるものと認識しています。この前提で、当事者間の話合いによってこれを決めるという前提で、この扶養的要素という表現なのか、補償的要素という表現なのかは別にいたしまして、当事者間の混乱、また係争の長期化につながる懸念があるのではなかろうかと、そんなふうに感じています。
○大村部会長 ありがとうございました。武田委員から冒頭に、17ページの中ほどの従来言われている3要素のうちの、②の扶養というのはなかなか理解が得られにくいのではないかという御指摘がありました。その上で、①、②、③を、先ほど戒能委員がおっしゃったように条文化して書き込むかということについて、①、③はよろしいけれども、②については疑問があるということをおっしゃったかと思いますが、それは、①、③だけを書くという御趣旨ですか、それとも、①から③を書くのをやめた方がいいという御趣旨でしょうか。
○武田委員 そういう意味で言いますと、①と③は書いてよろしいと思います。
○大村部会長 わかりました。①と③を書くべきだという御意見として承っておきたいと思います。
 もう一つ、②を書くべきではないということとの関係で、補償というのは計算がしにくいという御指摘も頂いたかと理解をいたしました。

3つの要素

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