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法制審議会家族法制部会第30回会議議事録読む2~沖野委員・戒能委員・武田委員

悪用が心配よねー

養育費問題について何かをひらめく

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○沖野委員

 沖野でございます。ありがとうございます。では、私の方から、この資料につきまして、作成の経緯と扱いについて一言申し上げたいと存じます。
 この資料は、記しております、また御紹介いただきました5名、青竹幹事、石綿幹事、久保野幹事、小粥委員、沖野の5名が、要綱案の取りまとめに向けた審議が進行するこの段階において、部会での審議時間が限られていることなどを考慮しまして、取り上げました項目について、民法の研究者として共に検討し、意見を述べたというものでございます。内容につきましては、部会においてそれぞれ個別に説明させていただくということは想定しておりませんで、今、部会長が御案内くださいましたように、5名の者が各自発言をする際に、適切と考えるときは言及することがあるという、そのような扱いとしていただければと考えております。お読みいただきまして、今後の部会審議の参考にしていただけましたら幸いでございます。
○大村部会長 ありがとうございました。今、御説明がございましたけれども、この資料の内容につきましては、先ほども触れました部会資料30-1の各論点についての御議論に際して、必要に応じて5人の委員、幹事の方からそれぞれ御発言を頂くという取扱いをさせていただきたいと思います。
 それでは、部会資料30-1の第1と第2は関連するところがございますので、まとめて御議論をお願いしたいと思います。どの点でも結構です、また、どなたからでも結構ですので、御発言を頂ければと思います。御発言の際には、どの部分を念頭に置いた御意見であるかということをおっしゃっていただけますと有り難く存じます。それでは、どなたからでも結構ですので、お願いを致します。

民法の研究者に期待しているわよー

○戒能委員

 ありがとうございます。委員の戒能です。声が余りよく出ないので、小さいかもしれません。
 部会資料30-2の方で、先ほど北村幹事からも、最も重要なのは子の利益の観点という御説明がございました。それと同時に、この部会資料30-2では、今まで度々議論に取り上げられてきましたが、先ほども細矢委員の御説明でも取り上げられておりましたが、2ページの(2)DV等ですね、DVや児童虐待等に適切に対応する視点ということで整理を頂いて、大変有り難く思っております。それで、私は7点、一つ一つは短く申し上げますが、対応する場合に留意すべき点を整理しておいた方がいいのではないかと考えまして、今このお時間を頂いたわけです。
 それで、1番目として、これはもちろん子の利益の確保の観点ということは再確認したいところでありますが、そのときに、子の利益とは一体何かということが非常に大事になってくると考えております。それで、安全・安心ということが度々言われておりますけれども、それを一つまとめて、この部会資料30-2では子の人格の尊重というまとめ方をしておりますが、もう一つ、可能であれば子の人格だけではなくて、それと重なりますが、人権の尊重という観点をきちんと入れていただければと思います。
 それから、2番目の留意点として申し上げる点は、DVというのは、DV法が制定、施行されてもう20年経っておりまして、来年の4月1日から改正法の施行になる。今回大きな改正があったことはもう皆さん御存じのとおりだと思いますが、ここで申し上げたいのは、実はその改正に20年も掛かっているのですね。身体的暴力だけではなくて、精神的暴力を核とする多様な複合的な構造を持っているのがDVであるという観点がようやく承認されたとは考えております。DVは幅広く捉える必要があるのだと。精神的暴力は広い概念で、非常に様々な暴力を含みますけれども、精神的暴力が様々な複合的な暴力の中核にあって、そして影響もかなり深刻なものであるという視点が必要だと考えております。
 次に、3番目、DVと虐待との関係です。これはイギリス法の改正などで御存じと思いますが、ドメスティック・バイオレンスという単語ではなくて、ドメスティック・アビューズという単語が使われるようになっております。それと同時に、日本でも2018年、19年に痛ましい野田市事件等が起きたわけですけれども、そのときにこどもの虐待死の背景にDVがあるという視点がなかなか自治体などには浸透していなかったという点があって、事件の報告書を自治体がまとめるときに、ようやくDVと虐待が一体であるという視点を行政の方々も獲得したという反省事項が書かれております。その点から言いますと、やはり同居親の安全・安心が守られなければ、あるいは精神的ダメージがあると、それが同居親に影響を与え、更に子にも影響を与えているという視点がなければ、子の安全・安心が守られる安定的な生活環境は作られないということを今一度確認すべきだと思っております。
 4番目、これも細矢委員のお話にございましたが、暴力、DVといわれるものが必ずしもないという場合ですね、高葛藤の場合、これをどういうふうに位置づけるか。不仲であるとか、もう憎しみ合っているとか、そういうことが子に対する影響も著しく大きいのではないかと思います。高葛藤事例もDV等というときにどこまで含まれるかという議論も必要だと思っております。
 5番目ですけれども、これはここだけではないのですが、ゴシック体の第2の3です。(1)で急迫の事情があればということが書かれておりますけれども、急迫の事情がある場合はどうするのか。単独で行使できるということなのですけれども、こういう事柄は、今後の課題となりますが、条文にきちんと落とし込んでいく必要がある。条文に明記されていないと実効性を持たないと思っております。
 それで、6番目なのですが、現在でも行政、公的な機関が支援をしていますが、十分だとはいえません。それから、今日の資料にも、制度の紹介がありますが、十分周知され機能しているわけではない。さらに、行政が支援をするときに、この親権の問題とつながっている。そして、親権の問題の判断を左右するというようなことを考えた場合に行政が、あるいは本当に当事者の方がということを強調した方がいいかと思うのですけれども、支援を受けることをためらうとか、行政が支援を行うことをためらうとか、認定の基準にされてしまって争いになったらどうしようということを考える行政が結構多いのです。ですから、そういうことも考慮をしておくべきだということを申し上げたいというのが6点目です。
 7番目ですが、これは先ほど沖野委員から御紹介いただいた委員、幹事グループの御意見の中にも取り上げられておりましたが、適切な認定というのは一体どういう基準で誰がやるのか、どこがやるのかということが議論となるかもしれません。その認定というのが、これは大変難しいということを申し上げたいと思っております。
 それで、制度的には、例えば住民票を移動させて、その情報開示については、御存じのとおり支援措置があるわけですけれども、この支援措置を受ける場合にどういう要件があるのかということも参考にはなると思うのですが、基本になるのは、相談をしているかどうか、どういう相談をしているかということがあると思います。それから、客観性もあるかどうかということの問題になるのですが、一時保護されているかどうかということもあるわけです。それから、3番目は保護命令、これは沖野委員等の意見にも書かれていたことです。それから、刑事事件として被害届を出すとか、刑事事件化するというようなことがあると思います。
 しかしながら現状はどうかというと、相談は右肩上がりにずっと増えて、特に最近では内閣府が積極的に動いて、そして民間に委託して、DV相談プラスという新しい相談形態を、LINEも使える、それから同行支援もするというようなことで、大きく伸びたわけなのですけれども、その相談件数がDV相談センターに来る件数だけに限っても17万件から18万件、年間にあったわけです。今、少し落ち着いたと言われております。しかし、では相談をして、安全を守るために緊急避難の場所としてある一時保護につながるかというと、その割合が極めて低いということを認識していただきたい。
 正確な数字は分かりませんが、一般的には1割から2割と言われており、これはある県なのですが、何万件という相談があっても、その中で一時保護に結び付いたのは何百件、だから1%にしか行かないという状況なのです。それは、いろいろな背景があるとは思うのですが、民間シェルターが充実しているとか、そういう背景もあるかもしれません。しかしながら、多くの人は、これは婦人相談員の方のお話を聞きますと、婦人相談員の方が支援をするのは在宅被害者なのだと、だから、みんなが逃げるわけではない、そして、逃げようとしても必ずしも一時保護のハードルが低くなっているわけではなくて、極めて高いということを見るべきだと思っております。
 保護命令も同様に2016年、17年頃から減少の一途をたどっております。一時保護件数も、それまでは1万件ぐらいあったのですが、それ以降は現在だと半減をしているという状況です。DVの被害の方はこどもさんがたくさんいらっしゃる方も多いわけです。ですから、幼い子を中心として、一時保護にいる人というのは、女性とそのお子さんということで、お子さんの割合も大変高いという状況にあります。ですから、支援が必要なのにもかかわらず支援に届かない人がたくさんいるのだと。保護命令も一時保護も重要な制度なのですが、そういう状況があると。刑事事件に至っては、これは身体的暴力優先になりますので、そこまで行く人は少ないということになるわけです。
 という具合に、私が申し上げたいことは、こういう現実をやはり、今までもいろいろな方がヒアリングでお話しなさったと思いますが、それが必ずしもこの審議にいかされているとは個人的には思っておりません。ですから、市民生活に関わる大事な判断を私たちは今、託されているわけですから、やはり現状とか実態とかをよく見ていただいて、それで、その上での判断を是非積極的に、DVや虐待の被害を受けた場合に、単に例外だと言っているだけではなくて、一つ一つ具体的に条文に落とし込んで、実効性のあるものにしていただきたいと考えております。
 以上でございます。ありがとうございます。
○大村部会長 ありがとうございました。戒能委員からは、先ほどの事務当局からの総論的事項に関する補足説明のうち、DV等に適切に対応する視点という御説明に関わる形で、DV等に対応する際の留意点を7点に分けて整理をしていただきました。戒能委員自身がおっしゃっているように、具体的な議論の中で具体的な御指摘を戒能委員、それからほかの委員、幹事からも頂ければと思います。

○武田委員

 親子ネット、武田でございます。最初、質問からいいですか。冒頭の事務当局の説明をきちんと聞き取れなかったので、今日配布いただきましたパブコメの取りまとめがあるではないですか、この280ページのですね。これは今回、ホームページに公開すると発言されたと思っていいですか。
○北村幹事 事務当局です。私の方からはそのように御説明いたしました。
○武田委員 分かりました。すみません、きちんと聞き取れなくて。とはいいながら、まだ暫定版という表題が付いているので、今後まだ加筆修正される御予定があるのか、いかがでしょうか。
○北村幹事 我々としては精一杯集計、整理をして、これを作らせていただきましたけれども、公開することによって、やはり違う、明らかな間違いというのが発見される可能性もありますので、念のため暫定版とさせていただいております。
○武田委員 分かりました。ありがとうございます。
 では、発言をさせていただければと思います。まず、戒能委員のDVを含めた御発言に対してです。同居親の安心・安全は重要だと思います、守らなければいけないと思います。しかしながら、こちらの部会でもDV被害者としての別居親も参加しておりますので、是非別居親の中にもこういったDV被害者がいて、守るべき対象が存在するということは、もう少し関心を持っていただければ有り難いなと、そのように思います。
 では、中身に関してでございます。第1に関して簡単に述べさせていただきます。親子関係に関する基本的な規律に関してです。部会資料30-1、ゴシック記載のとおり、父母の責務を明確化すること自体、ここには賛同いたします。ただ、全体の立て付けの中で、この第1の規律は第2の親権、監護権の権利義務の上位概念として、親権を持たない父母に対しての父母固有の権利義務、これを明記しようという試みではないのかと、そんなふうに私個人的には理解をしています。従来から述べさせていただいておりますが、責務だけではなく義務に加え権利、両面をきちんと明記すべきかなと、このように考えております。今日、民法の先生方が提出資料を出していただきました。フランス法、ドイツ法、父母固有の権利義務に関する規律でも権利に関しても言及があります。ありがとうございます。
 私からは、カリフォルニア州家族法典第3020条B項、ここの文言を御紹介させていただければと存じます。読み上げさせていただきます。立法府は、親が別居又は離婚を解消し、関係を終了させた後、児童が両方の親と頻繁かつ継続的な接触を持つことを確保すること、また、その政策が実施されるために、親が子の養育の権利と責任を共有するように促すことが、子の最善の利益に反する場合を除いて、当州の公共政策であると判断し、宣言する、このように書かれております。カリフォルニア州法でも養育の権利と責任と、このように表現がなされております。
 この要綱案、私も素人なので、どういう書きぶりにすればいいのかというのは判断しかねるところでございますが、より具体的な記載にしていくのか、それとも総論的な書き方にしていくのかと、こういった部分に関しましては、ここには民法の先生方がいらっしゃいますので、先生方の御意見も聞いて、考えていきたいと思います。
 第2に関しては、ほかの先生方の御意見を聞いてからの発言とさせていただきたいと存じます。一旦ここで切らせていただきます。
○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは質問と、戒能委員の御発言に対するコメントのほか、第1について御意見を頂きました。第1のような考え方に基本的には賛成だという前提の上で、ここには責務と書かれておりますけれども、義務だけではなくて権利の方も取り込む必要があるのではないか、ただ、最後の条文の書き方については更に検討するということだろうといった御意見を頂戴いたしました。第2については、また後で伺います。

親の地位を明記ね

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