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法制審議会家族法制部会第29回会議議事録読む2~井上委員・今津幹事・戒能委員

共同親権止まりません

議事録読む

○井上委員 

 連合の井上です。ありがとうございます。まず、第1の法定養育費についてですが、養育費負担の制度化につきましては、政府の第5次男女共同参画基本計画の中でも、貧困など生活上の困難に直面する女性への支援やこどもの貧困対策の観点から、養育費制度を見直すための法改正を検討する必要性が明記をされております。連合も従前から実現を求めてきた課題であります。特に今、大石委員からもありました、ひとり親家庭の貧困が大きな課題であることを踏まえれば、離婚する父母間で養育費について合意がない場合、法定額の養育費負担を義務付ける方策については賛成を致します。
 その上で、(2)エの金額について、2ページの(注3)において二つの考え方が示されておりますけれども、最低限度額を定めることによって確実な履行確保を図る一方で、金額の上乗せに関しては当事者間の協議に委ねるのが現実的ではないかと考えております。
 また、(3)の一般先取特権の付与についてですが、こちらは第24回会議でも発言をしておりますけれども、債務者の経済状況に留意が必要ではあるものの、認める方向で検討すべきだと考えています。
 また、17ページの2の民事執行手続に係る規律の見直しに関してですが、こちらの見直しについても、1回の申立てで差押えが可能となることで当事者の負担軽減にもつながることを踏まえれば、こちらも認める方向で検討すべきと考えております。
○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からも、1の法定養育費については賛成である、金額については最低限度額を定めて、その後は協議による上乗せというのが実際的ではないか、それから、一般先取特権についても基本的にはこれを認めるという方向に賛成する、また、2の手続の面についても基本的には賛成である、こういう御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。

法定養育費は行政が扱えばいい

○今津幹事

 幹事の今津でございます。何点か申し上げさせていただきます。まず、法定養育費制度を導入すること自体に関しては賛成の立場であります。確かに、先日のパブコメの御意見を見ましても、導入に慎重な御意見とか、あるいは、法制化に当たっては債務者の財産権等への配慮といった小さくない課題があるということも承知しておりますけれども、だからといって現状のままでいいかというと、そういうわけにはいかないという認識でおりまして、広報活動を強化する等といった工夫も示されておりますけれども、それによって状況が劇的に改善するとは思えない状況にありますので、今正に苦境にあるお子さんを救済するという意味でも、もちろんそうですし、離婚したからといって法的な親子関係が否定されないのですよと、あるいは養育の義務から免れることはできないのですよというメッセージを発信するという意味でも、こういった新たな制度を設けるということは前向きに検討してもいいのではないかと思っております。
 仮にそうした権利を認めた場合ですけれども、その内容としては、今回の部会資料29の8ページにありますような、本来父母の協議等で決めるものが、できない場合の補充的な、あるいは最低限の保障という理解に賛同をするところです。権利の主体としては、監護費用の分担であるという趣旨からしますと、こども自身ではなくて父母の権利と構成するのが自然ではないかと思われますし、行使の際の便宜からいっても、恐らく父母に権利を認めた方がよろしいのではないかと思っております。
 それから、内容、金額ですね、こちらについては個別の事情、特に収入などを考慮して決定するということになりますと、かなり手続に手間が掛かりますので、実際の救済につながりにくいというリスクがあるかと思いますので、資料の13ページでいうところの①に当たるような、法令で一律に金額を決めるという方式がよいのではないかと思っております。
 さらに、実効性確保という点につきましては、資料16ページにありますような一般先取特権付与という方向性に賛同したいと思っております。この点、従来型のいわゆる養育費に関しても同じような議論がありましたけれども、法定養育費を仮に認めるとすれば、より一層、先取特権を付与するという方向性が望ましいのではないかと思っているところです。制度趣旨として、こどもの健全な養育のために最低限保障するという趣旨であるとすれば、実体法上、優先権を付けるということは不自然ではないかと思いますし、また、従来型の養育費の場合ですと、父母の合意というのが基礎にありますので、実効性確保のためには、先取特権以外にも、例えば、債務名義をより簡易な方法で取得させるといったような別のルートがあり得るのですけれども、法定養育費の場面だと、そうした債務名義を簡単に取らせるという方向性はなかなか難しいのかなと思われるところです。そもそも父母の合意がないというところですので、そういった方策よりも、むしろ先取特権化をするという要請が高いのではないかと思われるところです。
 仮にそういった制度を設けた場合の最大の懸念としては、恐らく債務者への配慮というところがあろうかと思うのですけれども、それとの関係でも、先取特権にした方が、債務名義を新しく、例えば、より簡易な手段で取得させる方向よりも、債務者にとっては、よりダメージが少ないのかなと思っているところです。具体的に言いますと、今回の資料の17ページの冒頭の(注2)というところに記載がありますように、先取特権を付けて担保権の実行という形式で実行していく方が、債務者にとっては、より簡易な方法で実体的な異議を述べる手段が確保されているということがございます。
 さらに、部会資料でいうと、同じ17ページの(注4)にもありますけれども、過酷な執行を回避するための対策というのが既に民事執行法には用意されているところです。直近の執行法の改正でいいますと、給与債権を差し押さえた場合、4週間の猶予が新たに認められたという、そういった改正もされています。この点、現在の仕組みでは扶養義務の場合はこの4週間という猶予はない訳なのですけれども、例えばそちらを、法定養育費の場合は取立権行使までもう少し時間を置くといったような追加の手当てをすることで、もちろん不利益の程度は大小ありますけれども、債務者にとって耐え難い不利益とまではいえないと、制度趣旨としてこどもの利益を実現するというところとのバランスでいうと、甘受できる程度の負担なのかなという評価も可能であると思いますので、私自身はこうした制度に賛成の立場を表明させていただきたいと思います。
 すみません、長くなりましたが、以上です。
○大村部会長 ありがとうございます。今津幹事からも、法定養育費について基本的には賛成の御意見を頂きました。課題はあるけれども、こうした制度が実際上も理念上も必要であるという御意見だったかと思います。具体的には、補充的なものとして最低限の額を一律に定める、権利の行使は父母が行うというのがよいのではないかという御意見で、先取特権を付与するということについては、法定養育費の場合には特にこれが必要ではないかという御指摘があったと思います。また、先取特権の付与が制度としてよろしいということと、あわせて、債務者への配慮については、現在の民事執行法上の対応にある程度の追加をすることによっても対応が図れるといった御指摘も頂きました。ありがとうございます。

あくまで現行法は父母の合意がベースだったのか

○戒能委員

 ありがとうございます。委員の戒能です。先ほど大石委員から資料を基に、国際的な視点も入れながら、全体的な状況を御説明いただきました。それで、やはりひとり親世帯の貧困率が改善されたに見えるけれども、これは貧困線も同時に低下しているという背景事情があるということも認識を新たにしたところですが、ジェンダーギャップ指数というのがありまして、最新のデータでも125位ですか、非常に低い、格差が縮まらないということが報道もされております。その中で、一般的には経済の場面では経営者の割合が低いとか、政治の場面では国会議員の女性比率が低いとか、そういうことがずっと言われておりますが、経済的な面では、やはり所得の格差が縮まらないということが大きいとも報道されております。月にすると、これはいわゆる正規雇用者でありますけれども、月8万円の差がある、年にすると100万円の差まで行くというような状況の中で、離婚等あるいは非婚の場合もありますけれども、母子家庭の貧困というのは状況が改善されていない、というよりも悪化しているという中で、養育費の支払率が極めて低いことが明らかになったと思っております。
 そこで、重要な点だと思うのは、法定養育費自体は今までなかったことでありますし、本当にゼロに近いような、養育費をもらっていないという割合が高いわけですし、もらっていても額が低いという状況がありますから、応急措置として法定養育費をきちんと決めて、その額は必ず保障されるという制度化が行われることは賛成はいたしますが、しかし問題は、金額を決めてもその金額の支払、履行確保の問題ですね、履行確保の仕組みがこの御提案では先取特権というところにとどまっておりますが、それでいいのかどうかということがあります。
 それで、大石委員の今日の資料でも強調されていると私は理解いたしましたが、EU諸国では養育費支払への公的関与を強めつつあるということですね。それから、最後の結論のところでもおっしゃっていますけれども、法定養育費の創設は一歩前進であろうけれども、それだけでは不十分であって、それに加えて公的な立替えシステムの構築ですね、たとえ支払があったとしても中断があったり、継続的な安定的な支払にはなっていないということを見ると、公的な立替えシステムの構築が求められると、そういう国々が少しずつ増えているというお話がございました。ですから、これはもう何回も以前から申し上げていて、民事法の議論をするところだということで、そこでストップしてしまいますが、一歩やはりここで進めなければ、この状況、特に母子家庭の貧困、こどもの貧困の問題は解決しないのではないかと考えております。
 それで、債務者の負担の問題が先ほどから取り上げられておりますけれども、数えましたら、この補足説明には4回も指摘がありまして、非常に強調されておりますが、では一方で、これは15ページの(注2)にこの言葉が出ておりますが、法定養育費制度を真に必要としている者のために検討するのだというようなことが書かれておりますが、その真に必要としている者の立場はどうなのかということが問われなければならないし、支払をしない場合もあるわけですね、支払が可能であるにもかかわらず負担をしないという人も一方にはいると、そういう人たちに対してどういう手立てを用意するのか、確実に履行確保ができるような、民事法の範囲の中でもそういう手立てをどうするのかということを、これは検討しなければいけないのではないのかと思っております。
 今のところはそこまでにしたいと思っております。以上です。ありがとうございます。
○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からも、ひとり親家族の貧困状況についての御説明があり、具体的な御意見としては、法定養育費の御提案に応急措置として賛成する、しかし履行確保の仕組みを考えるということが重要で、先取特権付与だけということでよいのかという御指摘がありました。民事法の範囲で更に考えられることはないかといった問題提起を頂きましたけれども、その点について何か具体的な御意見があれば伺えればと思いますが。
○戒能委員 検討をしていただきたいと思います。
○大村部会長 分かりました、ありがとうございます。問題提起を頂いたというふうに受け止めさせていただきたいと思います。

まずは共同親権だけどね

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