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法制審議会家族法制部会第29回会議議事録読む1~北村幹事・武田委員・大石委員

 松本良かったな〜という写真を添えて、今週新しく議事録読んでいこう!
 
 

法制審議会
家族法制部会
第29回会議 議 事  録
  
第1 日 時  令和5年7月18日(火)  
自 午後1時30分     
至 午後5時28分
 
第2 場 所  法務省大会議室
 
第3 議 題  家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討(6)
 
第4 議 事  (次のとおり)
 
議        事
○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第29回会議を開会いたします。
 本日は御多忙の中、御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催になりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 それでは、本日の会議の配布資料の確認をまず、させていただきたいと思います。事務当局の方から御説明をお願いいたします。
○北村幹事 事務当局でございます。お手元の資料について御確認いただきたいと思います。本日の会議資料として、部会資料29、そして「「家族法制の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要【令和5年7月時点の暫定版】」をお配りしております。
 また、大石委員及び武田委員から資料の提出がございましたので、こちらもお配りしてございます。これらの資料につきましては、追って大石委員、武田委員からそれぞれ御発言の際に御説明いただけるものと承知しております。部会資料29の内容につきましては、御議論いただく直前に御説明させていただきます。
 「「家族法制の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要【令和5年7月時点の暫定版】」は、御議論の際の参考としていただく趣旨で、パブリック・コメントの手続で寄せられました今回の議論に関連する部分についての意見につき、現時点までに集計することができたものを暫定的に御紹介するものでございます。この資料につきましては、前回会議と同様に、パブリック・コメントの手続における全ての意見を御紹介するものではないことや、今後の集計作業における修正の可能性があることに御留意ください。また、今後随時資料を更新させていただく予定です。
 資料の説明は以上になります。
 なお、前回会議と同様、本日も委員、幹事の皆様が会議の前後や休憩時間等に御参照いただくことができるように、パブリック・コメントに寄せられた意見をコピーしてつづったファイルを会議室に御用意しております。
 今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては冒頭でお名のりいただきますようお願いいたします。
○大村部会長 どうもありがとうございました。
 本日の大まかな進行でございますが、全体を二つに区切りまして御意見を頂きたいと思っております。一つ目は、すぐ後で御説明いただきますけれども、部会資料29の第1の養育費に関する論点、これは、法定養育費に関する論点、第1の1ですが、それから、第1の2といたしまして、養育費、婚姻費用の分担及び扶養義務に係る金銭債権の民事執行手続に係る規律の見直し、この二つに分かれておりますが、ここの部分はまとめて御議論いただきたいと思っております。
 そして、二つ目の区切りといたしまして、それに続きます部会資料第29の第2、22ページ以下になりますけれども、親子交流に関する規律の見直しの部分について御議論を頂こうと思っております。この中も1と2に分かれておりますけれども、やはり併せて御議論を頂ければと考えております。
 そこで、まず部会資料29の「第1 養育費に関する規律の見直し」の部分につきまして、事務当局から資料の御説明を頂きたいと思います。

配布資料の確認から
テーマは養育費の検討から

○北村幹事

 事務当局でございます。部会資料29の第1では、養育費に関する規律の見直しについて取り上げております。現行法の下では、養育費に関する取決めをすることは協議離婚の要件とはなっていませんので、養育費の額を定めることなく協議上の離婚をするといったケースが存在し、そのことがひとり親世帯の貧困につながっているとの指摘がこの部会でもされております。この問題に対応するための方策としては、離婚時の養育費の取決めを促進するため、周知広報や様々な支援策を拡充する方向での検討を進めるということも考えられますが、しかし、このような促進策を講じたとしても、様々な事情により養育費に関する協議等をすることが現実的には期待できず、養育費の額を直ちに確定することができない場合があるとも、この部会でも繰り返し御指摘があったところでございます。
 そこで、部会資料29の第1の1では、このような場合に対応するためのある意味、応急の措置として、養育費の取決めがない場合に一定の法定額を請求することができるという法定養育費の考え方及び、法定養育費に一般先取特権を付与することで、債務名義がなくても民事執行手続の申立てをすることができるものとする考え方を提示しています。
 もっとも、このような法定養育費を定めることについては検討すべき課題も少なくないように思います。例えば、先ほども申し上げましたように、養育費の取決めがない場合に一定の法定額を請求することができるということがそもそも許されるのかであるとか、また、法定養育費の額を法令で一定額と定めた場合には、債務者の資力や収入に見合わないような過大な債務を課すことになるのではないかといった懸念や、債務者の手続保障の観点から問題があるのではないかといった懸念などもあり得るかと思います。
 本日の会議では、まず総論的な問題として、法定養育費を認めるべき必要性の観点に加えて、これを認めることへの懸念にも留意した上で、ゴシックの1(1)のとおり、法定養育費の仕組みを設けることの可否や正当化の根拠について御議論いただきたいと思います。その上で、仮に法定養育費の仕組みを認めるものとした場合には、ゴシックの1(2)のとおり、その要件や効果等をどのように規律すべきかが問題となりますし、また、ゴシックの1(3)のとおり、この債権に一般先取特権を付与するかどうかが問題となります。このような各論的な事項についても御議論いただきたいと思います。
 次に、部会資料29の17ページ以下のゴシックの2では、執行手続における債権者の負担を軽減するための仕組みについて取り上げております。現在の民事執行の仕組みでは、民事執行の手続ごとにそれぞれ当事者による申立てが必要となるため、これが養育費等の債権者にとって大きな負担となっているのではないかとの指摘があります。そこで、ゴシックの2では、1回の申立てにより財産開示手続や第三者からの情報取得手続と、それにより判明した財産に対する執行手続をまとめて行うことができるようにするということを提示しております。
 養育費関係の説明は以上になります。
○大村部会長 ありがとうございます。
 ただいま部会資料29の「第1 養育費に関する規律の見直し」の部分について御説明を頂きました。1と2とありますけれども、双方を含めて御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、御意見のある方は挙手をお願いいたします。

逃げ得を許さない仕組みになるのは大事よね

○武田委員 

 親子ネット、武田でございます。大変お暑い中、皆さん御苦労様でございます。第1に関して発言をさせていただければと思います。
 まず、ゴシック1の法定養育費に関して、今年2月に出した弊会としてのパブコメの意見といたしましては、法定養育費といった制度が、取決めが困難なときの救済措置としての位置づけで検討されることに賛成するという意見を、提出させていただいてございます。基本的な考え方といたしましては、部会資料29でいいますと7ページの(注2)、ここの前段記載の考え方に近しいものだと思っております。具体的には、法定養育費の必要性には賛同するものの、要件に関しては、例えばゴシックで記載されております離婚した父母間で養育費の合意がないこと、あと、部会資料29ページ、先ほどと同じ7ページの2段落目ですかね、要件として一定の期間の経過などの要件のみとすることに懸念を覚えるものでございます。
 理由といたしましては、法定養育費の要件を簡便にしすぎた場合、養育費の取決めに関して、かえって取決めが促進されなくなるのではないかということを懸念するものでございます。本日補足資料として配布をさせていただきました。こちらの資料は第2回で配布いただいた協議離婚に関する実態調査結果、これを抜粋したものなのですけれども、これの2ページに二つ表を記載しました。例えば、相手方と話をすることがイヤだった等を理由とする層②の区分のところですね、こういったケースに関しまして、一定の期間の経過などの要件のみとすることが、取決めをしなくてもよいという風潮を生まないかということに懸念を持っているということでございます。
 あともう1点、法定養育費の一定額の検討に当たりまして、義務者側の困窮ケースがあることも念頭に御検討を頂きたいと思います。弊会の会員の養育費支払率は約90%でございます。基本的には会員の大多数が養育費や婚姻費用を支払っていること、これは昨年の第18回会議で御紹介したとおりでございます。しかしながら、中には別居後の過程によって精神を病んで失業に至り生活保護を受給している、このような当事者も事実存在しています。また、当事者になった後、これも最近報告を受けたのですが、がんを発病して、発病した後、併せてこの当事者の父親が亡くなりましたと、以降、毎週、母親の看護に週1回、栃木まで行っております。このがんを発病した当事者は母親ですが、現在、元夫から養育費の増額請求を受けており、今、調停中とのことです。彼女としては自身の事情を話したということでございますが、担当の調停委員からは、同情はするが、最悪、算定表どおりになることを御了承くださいと、このように言われているそうでございます。こういった観点、部会資料29の9ページ、ウでも少し触れていただいておりますが、父母のいずれかに負担能力があるか、このような観点にとどまらず、義務者が困窮している場合に関しましても配慮が必要なケースも存在するということも念頭に検討を頂きたいと思います。
 あと、第1に関しては、恐らく本日、細かな論点が多数出てくるのではないかと思いますので、ほかの委員、幹事の先生方の御意見をこの後は拝聴させていただきたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。武田委員は、法定養育費については基本的な方向については賛成であるという前提の下で、幾つかの点について御懸念を示されたと理解しました。大きく分けて二つあったかと思いますが、一つは、要件が余りに簡便であると、取決めを促進しない、あるいは阻害する効果を持つのではないかということ、それから、額を決めるに際しては義務者が困窮しているというケースを考慮に入れる必要があるのではないかということ、この2点の御指摘を頂いたと受け止めさせていただきます。

生活保護受給者への養育費請求申し立ては却下になったりするのよね

○大石委員

 ありがとうございます。それでは、今日はこうした法定養育費の制度を新設することの可否や正当化の根拠ということが問われているということだそうですので、提出した資料に基づき、少しマクロ的な観点ではございますが、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、ひとり親世帯の貧困と養育費の実態についてお話をしていきたいと思います。ポイントとしましては5点ございます。第1に、日本のひとり親世帯の貧困率は国際的に見ても顕著に高い水準にあるということ、第2に、その貧困率は改善傾向にあるとはいっても、その一因としては貧困線自体が下がっているということがありまして、30年ほど前であれば貧困とされた所得層の人々が今では非貧困となっているということをお示ししたいと思います。また、一つ飛ばしまして、第3のポイントとしては、コロナ禍のシングルマザー世帯を1年間追跡したデータをお示ししています。6割以上が養育費の支払を受けておらず、また、受けている世帯でも、養育費の支払が中断したり、あるいは金額が変動したりするというケースが少なくないということが明らかとなっております。第4に、そうした養育費支払の不調ですとか中断といったものは、こどもにとって必要なものをなかなか買えないという、いわゆる物質的?奪となって表れております。第5に、国際的に見ますと、ひとり親世帯の自助努力に委ねたままでは養育費の確保は難しいという観点から、EU諸国などでは公的関与を強める方向への制度改正を行っているということがあります。
 それでは、グラフを用いて具体的に見てまいりたいと思います。3枚目のスライドですけれども、こちらの図では、△がひとり親世帯にいる世帯員の貧困率、■が二人親世帯にいる世帯員の貧困率を示しています。特記ない限り2018年時点の貧困率となっております。日本は、赤でお示ししておりますけれども、国際的に見てもひとり親世帯の貧困率が顕著に高いということが分かります。2021年には44.5%と改善しましたので、ほかの国とは年次が違いますが、それをピンクで示して入れております。ただ、まだ依然として高い水準にあるということは否めないと思います。
 さらに、次のグラフとなりますけれども、ひとり親世帯のこどもの貧困率が改善したといいましても、必ずしも楽観できない状況にあります。こちらの図ではひとり親世帯の貧困率の推移を■の点でつないでおりまして、また、物価水準を調整した貧困線を赤い線で示しております。貧困線というのは、世帯員数を調整した等価可処分所得というものの中央値の半分に設定されています。ひとり親世帯の貧困率が最も高かった1997年の貧困線の実質値は130万円でした。2021年では、これは108万円となっています。つまり、貧困線が低下していることによって、25年前であれば貧困とされた所得層が、今では貧困ではないということになっているわけです。
 次のグラフは、しんぐるまざあず・ふぉーらむさんがコロナ禍の2020年8月から2021年7月までの12か月にわたって実施されましたシングルマザー世帯の追跡調査のデータを使わせていただいております。調査に協力してくださった528人の世帯について、12か月間の養育費の受給状況を示しています。白く抜けているのは、その月だけ調査に参加しなかったケースとなっています。ピンク色は養育費の受給があった月、黒はなかった月を意味します。一つのブロックが100人ずつのデータを示しており、全体で528人分となっています。厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」では、養育費を現在も受けていると回答した割合は28.1%でした。こちらのデータでは、調査に参加した月のうち全てについて養育費を受給していたと回答した世帯は全体の21.8%となっています。一方、調査に参加した全ての月において養育費の受給がなかった世帯は全体の62.8%となっています。注目したいのは、受給した月としない月がまだらになっている世帯の存在です。全体の15.3%がこれに該当しております。ほんの12か月の間にも養育費の支払いが中断したり、あるいは、詳細は割愛しておりますが、養育費の金額が変動したりする、そういうことが決してまれではないということです。
 次のスライドを御覧ください。養育費の受け取りがないこと、あるいは断続的にしか受け取れないということは、物質的な剝奪に影響します。ここでの物質的剝奪とは、家族が必要とするものを経済的な理由で買えなかったことを意味します。この棒グラフの長さは、必要とするものを買えないと回答した箇月数を表しています。例えば一番上、米などの主食を買えなかったという場合ですけれども、毎月養育費を受け取っていたり断続的に受け取っている世帯では、平均して2か月ほどそうした経験があると回答しています。一方、養育費を受け取っていない世帯では、米などの主食を買えなかったという平均月数は3か月以上となっています。更に物質的剥奪傾向が顕著なのはこども関係の出費です。グラフでは下の二つの項目になりますが、断続的にしか養育費を受け取っていなかったり、あるいは一切受け取っていない世帯の場合、こどもの靴とか服、玩具とか文具や学用品などを平均して4か月から6か月近く購入できないと回答しております。
 結論としましては、次のようなことを申し上げたいと思います。まず、何らかの強制力のある養育費の支払システムの構築が必要と考えておりますので、法定養育費の創設はその一つのステップになるのではないかと考えて、賛成しております。
 また、養育費の支払が中断したり、不定期になるということもまれではなくて、その都度、ひとり親が対応することは非常にハードルが高いと。ですので、一般先取特権を有するようにするといった対応なども重要であると考え、賛成します。
 また、諸外国の動向なのですけれども、法定養育費の創設に加えまして、公的な立替えシステムを構築している国々が増えてきております。例えばエストニアなども2017年に制度改正を行っております。
 また、ここで議論されている法定養育費の金額についてなのですけれども、経済学者の観点としては、やはり物価スライドを行うことが必要であると考えております。
 最後になりますけれども、子育ての費用の一番大きな部分は教育費です。洋服やおもちゃは兄弟の間で融通し合ったりおさがりを使うことができるかもしれませんけれども、教育費についてはそういったことはできません。つまり、子育て費用の一番大きな部分については規模の経済が働きません。したがって、ので、法定養育費はこども1人当たりの金額として設定すべきであると考えております。
 私からは以上となります。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からは4種類のデータをお示しいただき、現在の貧困の状況がなお改善されていないという認識をお示しいただいた上で、今回の法定養育費の提案には基本的には賛成であり、一般先取特権を付与するということについても賛成したいという御意見を頂戴いたしました。金額につきましては、スライド制ということと、それから、教育費に着目して、1人当たりということで計算すべきだという御提案を頂きました。ありがとうございます。

養育費でつまづいたら裁判所っていうより行政の窓口でなんとかできるようになるといいね
その方が単純に近いから!

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