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法制審議会家族法制部会第29回会議議事録読む6~青竹幹事・久保野幹事・畑委員・池田委員・北村幹事

明日また法制審らしい!

議事録読んでおこう
 

○大村部会長 
それでは、時間になりましたので、席に戻っていただいて、再開したいと思います。
 まだ御発言の方々がたくさんいらっしゃいますので、多少スピードアップしてまいりたいと思いますが、青竹幹事、それから久保野幹事、畑委員、池田委員、佐野幹事、棚村委員と、御発言があるということですので、順番に伺っていきたいと思います。

養育費の話の続き

○青竹幹事

 法定養育費の導入には賛成をしておりますが、先ほどから問題点とされていることの一つについて、少し意見を述べさせていただきたいと思います。
 問題の一つとして御指摘されていたのは、法定養育費は一律に一定額となりますので、支払義務を負う親の収入から見て低すぎるという問題でした。その場合には協議や審判でより高い額に修正でき、更にその不足部分を過去に遡って請求できると考えるのではないかと思います。逆に、法定養育費が支払義務を負う親の収入から見て高すぎるという問題も指摘されましたが、その場合には、やはり協議や審判でより低い額に修正し、過払部分は取り戻せると考えるのではないかと思われます。法定養育費の制度を導入する場合には、過去の養育費も遡って請求できる、過去の調整ができるという考えが前提になるように思われました。
 実際に過去の不足部分を調整するのが難しいこともあるかもしれませんし、裁判所からは、理論的な問題にも課題が残るという御指摘がありました。もっとも、理論的な問題については、先ほど沖野委員が御説明されていたように、合意がない場合のデフォルトと見る場合には、合意によって修正されたという説明が成り立つようにお聞きいたしました。
○大村部会長 ありがとうございます。青竹幹事からは、法定養育費については基本的には賛成だという御意見を頂いた上で、その額が後に決定された額との関係で低い場合、高い場合、清算について考える必要があるという御指摘を頂いたかと思います。

あんまりうまみのある話ではなかったのね

○久保野幹事

 ありがとうございます。幹事の久保野です。途中から遅れて参加しまして、ここまでの議論を踏まえずに、気になる点だけ1点、意見させていただきます。
 法定養育費について、6ページの(4)で書かれております検討課題と関わり、1点、気になっておりますのが、請求される側が稼働能力を失って収入がないようなときに、例えば自己の生活も公的扶助によって支えるような状態のときに、養育費支払の義務を、具体的に額が生じるものとして負うということになるのかというところが気になっております。この場合であっても一定額の支払義務を負うと解するのだとしますと、従前の考え方とは異なるということになるのではないかという気もしております。この点、沖野先生の御提示された構成その他、何らかの説明を試みなくてはならないのではないかと思います。
 それで、私自身、まとまった形で構成を御提示できるところには全く至っておりませんけれども、ただ、少なくとも公的扶助や公的給付との関係という、この部会でも従前から指摘が出ております点との関係について、今言ったようなケースを念頭に置いて、少し詰めて考えてみる必要があるような気がしております。すみません、中途半端な意見でございますけれども、以上でございます。
○大村部会長 久保野幹事からも基本的には賛成という方向で、やはり問題の指摘を頂きました。債務者に収入がないという場合にも一定額の請求を認めるというのは、従来の考え方と緊張関係に立つのではないか、何らかの説明が必要なのではないかというのが基本的な問題の提起であったかと理解を致しました。

養育費は下層と上層で別のテーマになっていく

○畑委員

 畑でございます。幾つか申し上げます。まず、一般先取特権の付与です。これは前回も申し上げたかと思いますが、まずは実体法の問題として優先権の付与の可否や、果たしてどの範囲で付与するのかということを考えていただく必要があるだろうということです。その上で、付与するということであれば、手続的には担保権実行の手続に乗せることはできるのではないかというように、申し上げましたし、そのように考えておりますが、その際に、やはり考えるべき点もあるだろうということも申し上げたかと思います。
 一つは、資料の16ページから17ページに掛けて記載されておりますが、債務者側の手続保障の問題というのもやはり考える必要はあるかと思います。これは今回初めて生じた問題というよりは、担保権実行の手続一般の問題という気もするのですが、ただ、恐らく一般先取特権の実行というのは今までほとんど実例はなく、今回の改正によって、もしかすると実際に動き始めるかもしれないということのように思いますので、検討しておく必要はあるのかなという気はしております。
 例えばですが、債務者側の救済方法として、17ページの(注2)、(注3)、(注4)といろいろ挙がっており、こういうことになるのだろうと思いますが、これはかなり複雑な話にもなっておりますので、例えば、債務者の側にある種、手続的な教示をするというようなこともあり得るかなという気はしております。現行法上、既に債権執行において法律上、教示の規定があり、それを受けて裁判所規則の方で一定のことが定められているかと思いますけれども、それを拡充するというようなことも考えられるかなということです。
 それから、(注2)に書かれておりますが、いわゆる実体抗告、執行抗告の中で実体的な異議事由を述べることができるということがありますが、これがどのくらい実効的なものかという問題もありそうで、先ほどの教示の話もありますが、執行抗告の一般的な枠組みですから、差押えがされてから1週間ということで、それで足りるのかということもあるかもしれません。また、異議事由の内容によっては、1週間以内ということだと執行抗告では主張できないということもあり得るように思います。少し細かくなりますが、例えば将来の給与債権が差し押さえられたというときに、後になってその分は支払いましたというような異議事由が生じたとしても、1週間が過ぎていると、執行抗告の枠組みでは主張できないということにもなり得て、それでいいかというようなことも、あるいはあるかもしれません。今の問題などは、どういう手当てがいいのかというのもよく分からないところがありますが、少し考える必要はあるかなと思いました。
 それから、先ほど、実体法的問題だと思いますが、先取特権の額の問題とか、あるいは先取特権を付与する範囲の問題があり、それは実体法の問題として議論していただければいいと思うのですが、執行手続との関係では、それを証明文書の形で出す必要があるということがあります。つまり、状況に応じて法定の養育費の額も決まりますということにした場合、それを直ちに文書で証明できるのかという問題が、執行との関係では出てくるようには思います。
 それから、やや細かいのですが、少し前後して、14ページから15ページに掛けての(注1)の中で、法定養育費の額の変更を求める申立てについての取下げの話が出てきております。ここに書かれているように、申立ての取下げを制限する規律というのも考え得るとは思います。ただ、この種の問題というのは家事事件の別表第2の事件一般についてある問題でもあり、家事事件手続法を作る際にはその辺りも議論した上で、一定範囲に取下げの制限の規律を、財産分与と遺産分割だったかと思いますが、に置いているということがあります。そこに限るという理論的な必然性というのも必ずしもないような気もいたしまして、必要に応じてこの種の取下げの制限という規律を拡大するということもあり得ると思いますが、ではどこまで拡大するのかというようなことについては検討が必要かなという気はしております。
 それから、17ページ以下の2の執行手続の話です。これもなかなか難しい問題だろうと思っており、方向性としてはあり得ると思っておりますが、考えるべきことはいろいろあり、一つには、やはり多少の柔軟性を持った手続にせざるを得ないのではないかという気がしております。先ほど来出ておりますように、対象なども絞ってシンプルな手続というのも魅力的な考え方と思いますが、例えば、資料の20ページにも少し出ておりますが、給与債権を対象といっても、複数の給与を得ているという場合もあるわけです。20ページでは、そういう場合は多くはないと書いてありますが、今、働き方は多様化しておりまして、副業というのもそれほど珍しくはないような気もいたします。そうなってくると、例えば複数の給与の支払先が判明しましたというときに、ではどうしますかというようなことに、ある程度柔軟に対応できるような手続が望ましいのではないかと、あるいはそうせざるを得ないのではないかというような気もしているところです。更に言えば、ある程度柔軟な手続として考えるのであれば、対象も少し広く考えるということも可能かなという気もしております。
 いずれにしてもこの辺りも、手続の仕組み自体もそうなのですが、今度は債権者側に対する手続の教示のようなことも実際には重要になってくるのかなという気もしております。最後の点は法律に書くことではないのかもしれません。私からは差し当たり、以上です。
○大村部会長 ありがとうございます。畑委員からは、ゴシックの1と2について、それぞれ御意見を頂きました。1については、実体法の方で決めてもらえば手続法的には受けられるけれども、考えるべき点は幾つかあるだろうということで、手続保障について、手続的な教示が必要ではないか、あるいは現在の執行抗告の制度が実効的なものなのかという点について考える必要があるだろう、それから、額や範囲については証明文書をどうするのかという問題があるという御指摘を頂きました。2の方については、シンプルなものがいいという御意見が幾つかあったけれども、多少の柔軟性があるものにせざるを得ないという御指摘だったかと思います。給与について複数の給与支払者があるという場合もあるのではないか、そういうことも考えるということになると、他方で対象の方も少し広げることも考えられるかもしれないといった御指摘を頂戴いたしました。さらに、それと別に変更申立ての取下げ制限について言及していただき、これは一般論として受けているところもあるので、それとの関係というのを考える必要があるという御指摘を頂いたと理解を致しました。ありがとうございます。

子育て現場から乖離していく風景

○池田委員

 弁護士の池田でございます。法定養育費請求権について理論的な問題が幾つか指摘されておりますが、私からは専ら実務的な観点から幾つか意見を申し上げたいと思います。
 まず全体として賛成を表明した上で、幾つかの点についての申し上げますと、行使主体ですが、具体的にこの法定養育費が適用されるケースというのを考えたときに、これだけ合意をした方がいいというふうな、恐らく周知もされるでしょうし、そういう世論の中で、それでも合意をしないという父母というのは、養育費に関心がない父母であるという可能性もあるかと思われます。むしろそれが多数を占める可能性も否定できないと思っているところですけれども、そうすると、せっかく法定養育費が発生していても、権利行使すべき親が権利行使をしないという事態もやはり想定しなければいけないのではないかと思います。
 そうしたことを考えますと、こどもを法定養育費請求権の行使主体から排除して、こどもは通常の扶養料請求ができるだけということにするのは、誰のための法定養育費なのかという疑問も出てきかねないところだと思います。確かにこどもを主体とする場合の手続の煩雑さということを考えますと、こどものみを行使主体とするのは適当ではないと思いますので、例えば、主として養育する者又は子というような選択的な行使主体という規律もあり得るのかなと思います。それが1点です。
 それから、後に決まった相当な養育費との差額の調整という問題です。これも少し具体的ケースを想定しますと、離婚時には確かに合意していませんねと、けれども、これは後でしっかりと調停などで話し合って決めましょうということをある程度、示し合わせておいて、果たして離婚直後に養育費の調停や審判をいずれかから申し立てたという場合を考えますと、当事者としてはなすべきことをしているという中で、そのタイムラグ、調停や審判などで相当な額が決まるまでの間、法定養育費が発生してしまうということとの調整という問題が出てくるのではないかと思います。ですから、例えば、審判や調停の申立時点までは少なくとも遡って清算ができるようにしておくと、それは多くても少なくてもですね、そんなことは考えられるのではないかと一つ思います。
 それから、次に先取特権の関係ですが、合意した養育費で先取特権を認める以上、法定養育費の意義から考えますと、同様に先取特権を付与するというのが必要ではないかと思います。ただ、債務者側に立って考えてみますと、いきなり執行の場面に立ち会うということになるわけですね。何か争いたいことがあっても、とにかく執行が始まった段階でしか争えないというのが、それでいいのかというちゅうちょはあるところです。その衝撃を緩和するという意味では、一定期間猶予を置かないと執行の申立てができないとか、そんな制度設計があり得るかなというのが一つあります。あとは、大石委員の方から御指摘があった立替払制度ですね、そのような制度とセットにすると、そこの衝撃がかなり緩和されるのではないかと思います。まずは公的機関が立替払いをして、今度は公的機関と義務者との間のやり取りの中で、義務者が争いがあれば何らかの申立てをしていくということもあって、そういう意味でも立替払いというのは法定養育費制度と相性がいいのではないかという印象を持っています。
 それから、最後ですが、これは質問になるのですが、仮に法定養育費発生要件を合意がない場合としたときに、養育費ゼロという合意をした場合は、やはりこれは合意があるとみなして、法定養育費から排除されるということになるのでしょうか、それはそれでしようがないという制度設計なのでしょうか、というのを伺えればと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、法定養育費及びそれへの先取特権の付与について、基本的には賛成であるという御意見を前提に、幾つか御指摘を頂きました。一つは主体に関わる問題で、親が権利行使をしないという場合に備えて、こどもを行使主体に加えておくことが必要なのではないかという御意見だったかと思います。それから、あと二つ御指摘を頂きましたが、それはいずれも時間の経過というかタイムラグに関わるような御指摘で、一つは調停審判の申立てとの関係でどういう整理をするかということで、どこまで遡って清算するかにつき申立て時点を基準に考えるという形で整理すべきではないかということ、それから、執行に当たって債務者の保護が必要なので、猶予期間のようなものを設けるという案をお示しいただきました。それとの関係で、公的機関の立替えということについての御意見というのも頂戴したと受け止めました。最後に、養育費ゼロの合意がされた場合はどうなるのですかという御質問があったかと思いますけれども、事務当局の方に伺いたいと思います。皆さんの御意見を伺って検討するということかとも思いますが、何かありましたら、事務当局の方でお答えいただければと思います。

下層の話なのよね、法定養育費は

○北村幹事

 事務当局でございます。正にその点は、請求できる要件に関わるところですので、むしろ池田委員の御意見をこの場でお聞かせいただければと思います。
○大村部会長 池田委員は、ゼロというのをそのまま合意があるということで認めてしまっていいのかという方向の御意見だったと受け止めましたけれども、そういった御意見でよろしいですね。
○池田委員 はい。
○大村部会長 ありがとうございます。そこはいろいろな御意見があろうかと思いますので、また御検討いただくということになろうかと思います。

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