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独立の時に選ぶ会計ソフトでその後の運命が決まるかも?


会計ソフトを選ぶ基準


最近、独立直後の方の相談に乗る機会がよくあります。
税理士が開業するに当たって会計ソフトと税務ソフトは必須なのですが、それを選ぶ基準として

  1. 勤務時代と同じシステムを使う

  2. コスパの良いものを選ぶ

  3. 先輩の意見を参考にして選ぶ

  4. 戦略的に選ぶ

などが挙げられます。
4.の戦略的に選ぶ人以外は、どれを選んだところで一緒だと考えているのではないかと思います。

独立時の会計ソフト選びでその後の運命は変わる


しかし、独立の時に選ぶ会計ソフトによって、その後の税理士事務所経営の運命はかなり変わってきます。

前回、noteで書いたように、会計ソフトには、勘定科目コードのある閉鎖系システムと、勘定科目コードのないグローバル系または開放系のシステムが、あります。

閉鎖系システムを選んだ場合には、旧来型の労働集約型事務所になる運命がほぼ決まります。

私は、開業3年目くらいでTKCに入会したことで、泥沼の戦いをすることになりました。

自計化では未来のビジョンが描けない


直近で、相談のあった人は、前の事務所が自計化を推進していたので、自分もそうしようと思うが、まったく未来のビジョンが描けないという話をされていました。閉鎖系システムで自計化した場合、顧客訪問が必須になります。また顧問料を頂いている以上、何か付加価値をつけたり提案をしなければいけないという焦りが生じます。

顧問先が順調に増えても20件から30件で、ほぼキャパは一杯となります。ひとり税理士の場合、自分のキャパが事務所のキャパとなるので、そこで成長が止まります。
パートさんを雇ったところで、自計化している場合には、あまりやってもらう仕事がありません。経験者を雇うしか打開策がなくなりますが、なかなか優秀な経験者はみつからないし、雇用できたところで人件費の負担がのしかかってきます。

またクラウド会計ソフトで自計化すると、超低料金の顧問料なのに修正に時間をとられて採算が合わなくなります。

相談者は、そういう未来が想像できたので、どんよりとした顔をされていたのでしょう。とりあえず付加価値を付けて他と差別化したいので、うちのクラブに入会して来られました。

クラウド会計による記帳代行

私は、「どうしても、自計化じゃないと駄目なんですか?最近は、記帳代行がまた増えて来てるんですよ」と、お話しました。

うちのクラブの若手税理士には、クラウド会計で記帳代行してうまくいっている人がいます。zoomの画面でクラウド会計ソフトの画面を顧問先と共有しながら、その場で疑問点を解消し、不足書類を確認しながら入力を完結するスタイルです。銀行やクレカのデータは自動的に仕訳入力されているのでそれほど面談に時間はかかりません。顧問先さんにとっても、その場で月次が完了するので満足度も高いようです。

この事例を相談者にお話しすると目が輝きだしました。聡明な人なので、将来像がすぐにイメージできたのだと思います。

このスタイルだと、会計入力の話だけができればよいので、属人性が少なく再現性を高めることができます。
マニュアル化すれば、所長が現場から抜け出すことも可能です。
件数が増えても日本中の在宅勤務の人に仕事を依頼することで対応していけます。

相談者は地方都市の人でした。地元では、昔からある大手の事務所がT、J、Mの閉鎖系ソフトで自計化をぐいぐい推進しています。

時々、経営者や奥さんから面倒くさいという苦情を聞いたり、自計化と言いつつ実際は会計事務所のスタッフが顧問先で入力して自計化率を上げる馬鹿げたことが行われているということを見聞きしているとのことでした。

きちんと入力料をいただく


そういう土壌のある場所で、クラウド会計専門で、入力はこちらでやります。あるいはわからないところはこちらで入力します。社長は本業に専念してくださいというマーケティングを展開すれば、圧勝できるのではないかという話で盛り上がりました。
クラウド会計でも、入力した分をちゃんと報酬に転嫁できるような料金表は必須です。クラウド会計=会社で経理完了 クラウド会計ソフトの謳い文句を崩す必要があります。

オンプレミス系は開放系でも少し弱い


同じ開放系のソフトであっても、弥生会計などオンプレミス系は、少し弱くなります。私は、長年、Frontier 21 と弥生会計の組み合わせで擬似クラウド化していました。決算作業は弥生会計でやるのがもっとも効率的です。JDLの税務も弥生会計データだけは取り込めます。
しかし、顧問先でのソフトのインストールやバージョンアップという作業が必要になりますので、完全訪問レスにするのは困難です。
また、金融機関とのAPI連携も弱いです。

閉鎖系ソフトでの記帳代行は労働集約型になる


閉鎖系ソフトで、記帳代行をやるとなると、パートさんを主戦力とした伝統的な労働集約型の会計事務所スタイルとなるでしょう。通勤の便利な場所に、それなりの事務所スペースが必要になります。

2024年10月から51人以上の事業所で、社会保険加入範囲が広がり、106万円の壁ができます。
近い将来人数制限が撤廃されるとも言われています。

そうなると、今以上にパートさんの勤務時間に気を使うことが増え、106万円の壁を超えると社会保険料の会社負担分も発生するようになってきます。恐ろしい話です。

もし私がこれから独立するとしたら


もし、私がこれから独立するのだったら、クラウド会計による記帳代行で、オンライン面談を中心として顧問先訪問を極力減らし、在宅勤務の人をうまく活用していくスタイルを選ぶと思います。

というか今うまく行っている人は既にこれをやっていると思います。

追記:
とはいえ、オンプレミス(インストール型)の会計ソフトで記帳代行する事務所がまだまだ大半です。
ネットバンキングのCSVデータを簡単に入手できれば、それを流し込むことで入力効率は飛躍的に高まります。(通帳をAIOCRで読み取ると摘要の表記が揺れるのでネットバンキングのデータよりも精度が劣り入力効率が悪くなります)

そこで、顧問先さんのネットバンキングのデータを会計事務所側で取得できるような仕組みを現在こがねむしクラブでは構想中です。

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