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連作短歌×写真「ホームタウン」

9月で初めてオーストラリアに来てから10年になる。

あっという間というよりはぼーっと過ごしていたら10年も経ってしまったという感じが近い。10年間でオーストラリアという国にずいぶんと馴染んだとも思うし、外見や言語による疎外感を感じることもある。人種のサラダボウルという言葉があるけどやっぱりどこまで行っても人参は人参でキャベツはキャベツのままなのだ。永住権を取っても市民権を取ってもすり潰してミックスジュースになどならないのだろうなと思う。

とはいえ10年だ。私はこの場所をホームと呼ぶことにした。時には暖かく迎えられ、ときには激しく拒絶されるこの町がホーム。

日本を長く離れているので日本に帰るという感覚がなくなってしまった。日本は行く場所でオーストラリアが帰る場所だ。単純に生活拠点がここにあるのだからそうなのかもしれないが、きっと日本に行っても帰ってきたという感覚はないだろう。かつて私がホームと呼んでいた下北沢や吉祥寺の町も再開発されて私の知っている頃とは地形ごと変わっているらしい。

そのことについて別段悲しいとも思わない。そんなことよりもシドニーに新しい電車の路線ができたことのほうが気になる。そんな感じで私のホームは変わっていく。

オーストラリアに来て感じるストレスもあるけど、日本にいたら潰れていたであろう自分も容易に想像できる。ノースフェイスの70Lのバックパックを背負って英語もわからないままセントラル駅前のホームレスに安宿の場所を聞きまわっていた私が今では家を借りて猫を飼うようになった。いつまでここにいるのかわからないけど、とりあえず今はここがホームタウン。

私は人種のサラダボウルに和風ドレッシングをかけてそれを晩御飯にする。


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