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夢現の国のアリス


☆ ご注意︕ ☆
このSSはメタ的表現を多分に含む、夢現Re:Master本編とは異なる物語となっております。その旨ご理解頂ける方のみ、お読みください。
また、本編オールクリアを前提としておりますので、
まだの方は作品をオールクリアした後にお読みください。



そこは だれも しらないところ
せかい と せかい の あいだ
とおく ゆらぐ ふしぎのくに───



~はじまりのまえ~


アリス「ふぇ︕? あ、あのっ? ここ、どこですか?
 あれっ、わたしなんでこんな格好、青い……エプロンドレス?」

ごきげんよう、アリス。ようこそ、黄金の午後へ。

アリス「あり、す? いえ、あの、わたしは大鳥あいと言って……」

ごきげんよう、アリス!! ようこそ、黄金の午後へ!!

アリス「……は、はい、よろしくお願いします……うう」

相変わらず、押しに弱いなぁ君は。そこがとってもいいのだけどね。

アリス「あの、あなたは?」

ふっ、そうだね、この物語の作者さ。
ルイス・キャロル子とでも名乗っておこうか。

アリス「キャロル子……」

どれほどシュールで不条理で、理不尽な世界だろうと、世界が成り立つにはルールが必要だ。これはルールに則った名乗りだよ。

アリス「わ、わかりません」

まぁ「そういうものだ」と割り切っておいてくれ。
覚えておくといい、大抵の納得いかないことは「そういうものだ」と思うことでケリがつく。

アリス「はぁ……。あの、それで、ここ、どこなんですか?
 ずいぶん立派な……誰かのお屋敷の庭のようですけど……」
三月兎「あたしのおうちだよ︕ あい、じゃなかった……アリス︕」
アリス「あ、こころ︕ ……着ぐるみ?」
三月兎「のんのん︕
 あたしは三月兎、この屋敷の主にして今日のお茶会の主催者だよ︕
 ようこそ、アリス︕ いいよねー、この着ぐるみ︕
 白くて、もふもふしてて︕あたし、こういうの大好き︕」
アリス「え、えと」
三月兎「かわいい? あたし、かわいいかな?」
アリス「もちろん、可愛いけど……ど、どういうことなの、これ」
三月兎「どういうことって?
 あ、なんだ、アリス、まだ理解してなかったの?そろそろ慣れようよ」
アリス「慣れ、る?」
三月兎「ゆリマスター名物、メタものでーっす︕
 ゆリアフター発売記念SSってところ?」
アリス「ああああああああ、また、なんだ……。
 わたし、メタなノリ、苦手なのに」
三月兎「毎回、あい、じゃなかったアリス、大変なことになるもんね」
アリス「うう……」

いじられ主人公の宿命、というやつだね。それだけ愛されているということさ。喜ぶべきことだよ。

アリス「そんなこと言われても喜べません……」
三月兎「ん? 誰と話してんの? アリス」
アリス「え、そ、それは、ほら、この声。聞こえてないの、ここ……三月兎さん」
三月兎「んー? どしたの、アリス・モチーフだからって不思議キャラ押し?
 似合わないよ」
アリス「ええー?」

私の声は君にしか聞こえないのさ。主人公である、君にしかね。

アリス「うう……厄介な……」

それより、ほら、新たなお茶会への参加者が来たぞ!

帽子屋「ちーっす︕ 帽子屋っすー︕
 やー、たまにはメイド以外の格好も似合うっすねー、
 どうっすかどうっすか、お嬢様︕ このタキシード姿」
アリス「な、ななさん」
帽子屋「もー、違うっすよ、お嬢。いや、アリス︕
 ななは帽子屋っす、正確にいうなら“いかれた”帽子屋っす︕」
三月兎「これ以上ないくらい、ぴったりな配役ですよね」
アリス「帽子屋さん……」
帽子屋「そうっす、帽子屋っす、おしゃれっす︕ おしゃれ番長っす︕
 ななにぴったりっす」
アリス「あの、でも、自分のこと『なな』って」
帽子屋「はっ︕ 今、はっとしたっす。ハット、帽子屋だけに︕っすー。うま︕」
アリス「いえ、あの、そういうことではなくて……」
帽子屋「にはは。冗談っす、この『なな』は名前の『なな』じゃないっす、
 ただの記号っす。ななでもなく、にに、でも、ぬぬ、でもいいっす」
アリス「あー……」
三月兎「アリス、アリス。
 このくらいで言葉無くしてちゃダメだよ、アリス。平常運転じゃん」
アリス「そ、そうかな、いつより意味不明さが増してるような……」
帽子屋「『アリス』ネタだけに、な︕(どや)」
三月兎「はいはい、いいですから。席についてください、帽子屋さん。
 そろそろ、時間です。お茶会、はじめますよ」
帽子屋「ん? はじまるっす?」
三月兎「はい、時間ですから。兎は時間を気にするんです」

三月兎は時間に厳しいようだね、間違える人もいるが、原書でアリスを不思議の国に導く白兎と、お茶会を開く三月兎は別なんだ。
彼女はそこを混同してしまってるかもしれないな。まぁそこも可愛いのだけど。

三月兎「なんで、あたし懐中時計持ってないんだろ。変だよ」
アリス「(小声)言わないほうが……よさそう……」

ははは、それがいいだろうね。

帽子屋「やー、はじまるのはいいんっすけど。
 いまいち、キャラが足りてないようなー」
三月兎「そうですか?」
帽子屋「んー………………とやっ︕」
アリス「ど、どうしたんですか、帽子屋さん。いきなり、ポットの蓋を開けて」
帽子屋「いない……中で、ちっちゃい恐竜が寝てるかと思ったんすけど」
アリス「さきさん?」
帽子屋「てっきり、眠り鼠役かーと思ったんすけどねえ、ちっちゃいし、
 寝てるし、ぴったりかと。違うとすればー」
?????「ふ、ふふふふふふ、ふはーっはっはっはっはっはぁ︕︕」
三月兎「こ、この笑い声は︕」
?????「圧倒的高笑いと共に、常に上から目線で現れる謎の美猫︕
 それがっわたしよっ︕︕ ひれ伏せ、跪け、頭を垂れーい︕︕」
アリス「さ、さ、さきさん︕?」
帽子屋「――じゃないっす、お嬢︕
 あれは……あれは『アリス』で一番の人気キャラ、チェシャ猫っす︕
 …………チェシャ……猫? 恐竜? 猛獣?」
チェシャ猫「がうっ︕ 猫よ、猫。どこから見ても、愛らしい猫でしょうが︕
 はーっはっはっはっはぁ︕」
三月兎「猫科の猛獣……サーベルタイガー、とか?」
アリス「チェシャ・サーベルタイガー……どうなんでしょうか、それ」
帽子屋「おかしい︕ 採用っす︕ 面白けりゃ、なんでもありだー︕」
チェシャ「却下よ、却下︕ ぷりてぃきゃっと︕」
アリス「ぷりてぃは、さすがに……」
チェシャ猫「がう︕ 文句ある?」
アリス「きゃ︕ な、ないです……(小声)
 猫は、がう、とか鳴かないと思うんですけど……」
チェシャ猫「じろ」
アリス「いえ、あの、その……」
チェシャ猫「ふはははははははははははーーーーー︕︕︕」
帽子屋「『耳から耳まで届くような』という表現が原書ではされてるっすから、
 本物は、にやにや笑いっすけど、まぁ」
アリス「……あはは、ですね……」
チェシャ猫「ふっ、SF作家でもある、わたしに︕
 チェシャ猫はぴったりね、気に入った︕」
アリス「SF? チェシャ猫がですか?」
三月兎「“シュレディンガーの猫”的な話ですか?それとこれとは、また別な気が……」
チェシャ猫「ふっ、無知︕」
三月兎「むかっ」
チェシャ猫「宇宙よ、もっと宇宙に目を向けなさい。
 チェシャ猫ってのは、あなた達とはスケールが違うの、まさに︕ 銀河級︕
 “チェシャ猫銀河群”でググるがいい︕」
アリス「チェシャ猫――……」
三月兎「銀河群?」


1999年にNASAが打ち上げた、チェンドラX線観測衛星によって発見された銀河群のことだね。
星々が紫に光る、その銀河群の写真は、まさに「猫なしのニヤニヤ笑い」のようだと言われているよ。


チェシャ猫「ふはーーーーっはっはっはっはーだ︕︕」
アリス「へー……」
帽子屋「おー、このお茶うめー」
三月兎「あ、ちょっと勝手にお茶会はじめないでくださいよ、帽子屋︕」
帽子屋「この帽子屋のふたつ名は“いかれた”っす︕常識は通用しないっすー︕」
チェシャ猫「んん、わたしも笑いすぎて、喉が渇いたわ。貰うわね、んぐんぐ」
三月兎「ちょっと︕ そっちも︕
 あーいいですよ、それじゃお茶会はじめますー︕もう︕」
アリス「(小声)こころはどこでも、ななさん、さきさんに振り回されるんだなぁ」



~お茶会のはじまり~


こうして、お茶会ははじまった。
なんだか、まだ人数が足りないような気もするが、まぁいいんだろうさ。アリス、のんびりやろう。

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