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First memory(Hinata)16

「ヒナタ、僕も君が好きだ」
 自分の耳を思わず疑った。彼は、今、何と言ったのだろうか?
 放心していた私をフィリアはそのまま続けざまに抱きしめてきた。
 暖かい確かな温もりに、枯れていた涙が再び頬を伝った。
「君は、君だ。他の誰にならなくても良いんだ。ヒナタはヒナタのままでいて欲しい。僕が好きになったヒナタでいて欲しいんだ」
「本当に?」
 涙が、次々に溢れてくる。これは悲しみの涙ではなく。きっと、、、。
「本当に私、フィリアの傍にいてもいいの? 私でいいの?」
「あぁ、僕には君しか考えられない。だから、もう僕にだけは遠慮しないでくれ」
 溢れ出る感情は次々と言葉になり。私の口から止まることなく飛び出した。
「私、きっとめんどくさい女だよ」
「いいよ」
「嫉妬深いし、わがままだし、甘えん坊だよ」
「構わないさ」
 夢なのかと思った。いや、夢だっていいとさえ思った。
 だって、こんなに幸せなんだもの。

 ヤチヨちゃんやサロスに対しての罪悪感はある。でも、それ以上に私の気持ちは喜びの感情で満たされていた。
「ねぇ、、、んっ」
「えっ?」
「ダメ?」

 フィリアは少し、迷った後に優しく私の唇に自分の唇を重ねた。

 生涯で二度目のキスはあの時と同じく塩辛い味がした。

 キスって塩辛いものなのかなって勘違いするぐらいに。

 でも、なんだか少しだけ記憶の中よりも甘いような気もした。


 それから、数か月後フィリアはアインさんの団から独立し。私とソフィだけを連れて自分の団を発足。


 その数か月後。

 私たちは信じられない偶然を何度も目の当たりにすることになる。


 ここからはまぁ、色々あったのだけど・・・。それは、また今度詳しくお話しようと思うわ。



「ママ―」
「はーい。どうしたの?」
 休憩中に私たちは窓の外から見える親子を見て、私たちは和んでいた。母親と5歳ぐらいの男の子がボールで遊んでいる。こんな平和な朝がたまにはあってもいいなと心から思った。
「かわいいな」
「えぇ」
 二人してマグカップに注がれた飲み物を飲みながら、同じことを思っていた。そして、私の中の悪戯心が急に眼を覚ました。
「フィリアって子供好き?」
 頬杖をついて、フィリアに訪ねる。
「いきなり、なんだい?」
フィリアは、マグカップに注いだコーヒーを飲みつつ窓の外を見て、耳だけをこちらに向けていた。
「ねぇ、フィリアは私との子供何人欲しい?」
「!!!!!!??????」
 ぶっとコーヒーを吹き出しそうになりながらなんとか耐え、フィリアは激しく咳込んでいた。
 私はそんなフィリアを見ながら、マグカップの紅茶を優雅に飲んだ。
「こ、子供!?」
「そう。私とフィリアの愛の結晶。何人欲しい?」
 私は、悪戯な笑みを浮かべつつフィリアに、尋ねた。
「君は、最近アインにも負けず劣らず意地悪になってきたな」
 フィリアはひとつため息をつきながら、私の方を向いた。
「あーら。昔の女の話題を出すなんて、ヒナタちゃん泣いちゃうぞー」
 からかうように泣き真似をしてみせる。
「……君は、本当に強くなったな」
 フィリアが呆れたような声を出して、もう一口コーヒーを飲んだ。
「ねぇ、フィリアは男の子と女の子どっちが良い?」
「ヒナタ……。まだその話を続けるのかい?」
「えぇ」
 フィリアが困った顔を浮かべている。よし、もう一押ししてみよう。




――続く――

作:小泉太良

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