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東京都監査事務局が住民監査請求の結果を公表 4~住民監査請求監査の監査結果の分析その1

住民監査請求監査によって一般社団法人Colaboへの東京都の支出の適正さがみとめられたわけではない事実

 住民監査請求監査に限らず、地方公共団体の監査委員が行う監査全体について「適正」という表現が用いられています。この適正とは、「正確」という程度まで保障したものではなく、法令や会計の基準などに沿って事業が施行されていることを認めたものであることに留意する必要があります。つまり、「正確>適正>適正ではない」の順でちゃんとしているということになり、監査においては正確まで判断することはまれです。
 一般社団法人Colaboと東京都の委託契約に対してなされた住民監査請求監査で監査委員が監査しなければならないものは、監査請求人の主張に沿った違法若しくは不当な公金の支出がなされているかどうかです。仮に、委託契約の中で違法又は公金の支出がなされていたとしても、監査請求人がその部分について主張していなければ監査請求監査において不適正であるという監査結果がなされることはありません。この点をとらえれば、裁判所の判断が原告の請求の範囲内に制限される民事訴訟に似ているといえます。ただ、住民監査請求監査が民事訴訟と異なる点は、裁判所が民事訴訟の判決を言い渡す際に原告、被告が提出した主張や証拠のみで判断しなければならないのに対し、監査委員は自由に監査することができるので請求人の提出した証拠に制限されることはありません。そして、監査委員が必要であると認めれば住民監査請求で監査請求人が請求している主張の範囲を超えて監査することもできます。ただし、監査請求人の請求範囲を超えた部分については、監査請求人が主張していないわけですから請求の認容がなされるわけではなく、監査委員の意見として監査結果報告書に記載されることもありまさ。ただ、監査委員が意見を述べなければならないわけでもありませんから監査結果報告書でまったく触れることがない場合もあります。
 住民監査請求監査に関する結論を申し上げると、今回の住民監査請求監査の監査結果を精査して暇空茜さんがより突っ込んだ住民監査請求を行えば請求が認容される部分が増えるかもしれませんし、増えないかもしれません。ただ、監査委員が非常に突っ込んだ意見を述べていることから考えると、監査委員が問題視している箇所について突っ込んだ住民監査請求を行えばその可能性は高くなるのではないかと思います。

監査請求人の請求のほとんどが棄却又は却下となった理由について

 暇空茜さんの請求のほとんどが棄却又は却下となっているということについてはすでに様々な方が指摘しています。私も有料noteで確認していましたから把握はしていました。
 まず、請求が一部認容された箇所については、人件費のうちの税理士及び社会保険労務士へよ報酬を全額計上している点でした。これについては、すでに具体例を設定して詳細に述べているので、そちらをご覧ください。

 そして、住民監査請求の対象が1年以内ですから1年より前のものについては却下、令和4年度の事業についても事業継続中で支出が確定していないため却下されています。
 そして、個々の費目に関する請求は、税理士及び社会保険労務士報酬を除き、棄却されています。その理由は、その費目に該当する支出があるからというもので、その個々の支出が委託契約の目的外で違法又は不正なものがあるかどうかについては、住民監査請求人が提出した証拠の限りにおいては、断言することができないとしています。今回の住民監査請求監査の監査結果で一般社団法人Colaboが「【弁護団声明】東京都に対する住民監査請求結果について」で高らかに勝利宣言をなしているほど東京都の支出が「白」であると認められたわけではないのです。