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国内の民族の多様性を潰し、「中華民族」という人工的な民族を作ろうとする中国の愚

「中華民族」の精神を損なう「服装」や「言論」を禁止する法改正を検討する中国

 中国が驚くべき法改正を検討しているようです。

中国で今、中華民族の精神を損なう「服装」や「言論」などを禁止する法改正が検討されている。
問題の服装を公の場で着用した場合、最大で15日間拘束され、5,000元、日本円で約10万円以下の罰金を科されるという。
改正案をめぐっては専門家からも、表現があいまいで権力の乱用を招きかねないとの批判があるが、中国に詳しい神田外語大学の興梠一郎教授に、法改正の背景と習近平政権の思惑について聞いた。

恐怖心で“おとなしくさせる”法改正

ーー中国のSNSで日本のコスプレを注意されている動画をよく見るが?
中国には日本のアニメが大好きな若者がたくさんいて、それで日本に留学するケースも多いです。
日本でアニメ由来の場所を巡礼したり、公園で忍者や侍の格好をして写真を撮っている風景は、ずいぶん昔からありました。
今回、それを禁止することを法令化し、違反すれば罰金ないしは拘留といった処罰が課されるという点で、中国国内でも一般の人だけでなく、専門家も反対意見をメディアに出しています。
実際の例として、「漢服」という中国の古典的な衣装を着ている人たちが、日本の和服と間違われて注意されている動画がSNSに流れています。
しかし、この法案は単に日本に向けたものではありません。中国政府はもっと広い意味合いで、治安管理処罰法の中に書き込んで法制化するよう動いています。
ーーSNSを見るとトラブルの対象はほぼ日本の衣装だが?
中国が改革開放政策を打ち出すまでは、裾の広いジーンズを履いていたら注意される時期もありましたが、今は西洋の服装に関してはほとんど話題になりません。
やはり日本がターゲットになるパターンが多いです。
ただ、今回の改正案は、同性愛を想起させるような服装でコンサートに行くと注意されるなど、日本だけに向けられたものではありません。
広く、多元的に踏み込んでいる法案です。
根底にあるのは、「中華民族」というキーワードです。中華民族の“精神”や“感情”を損ねるような服装やシンボル、物品、言論が対象になります。
「中華民族」を強調する背景には、若い人の高い失業率や治安維持の問題があり、以前から「反スパイ法」や、香港の「国家安全維持法」など、習近平政権になってから治安維持関係の法律が相次いで作られています。
今回もその流れの一環です。
一番大事なポイントは、当局がいろいろな理由をつけて拘束したり、罰金を取ることができることです。
こうした法律を中国では「ポケット罪」といいますが、ポケットの中に何でも入ってしまうような感じで、当局の解釈次第で、拘束したり、罰金を取れるという恐怖感を与え、「おとなしくしなさい」という意味合いがあります。
その例として「中華民族」という言葉が使われています。

異質なものは全部排除

中国のSNSでは、ショッピングモールで日本アニメのコスプレをした若者がトラブルに見舞れたり、浴衣を着ていた中国人女性が警察に「君が着ているのは日本の浴衣だ。中国人としてどうなんだ!」と怒鳴りつけられ連行される様子などが多く配信されている。
これらの動きについて興梠教授は、「日本だけに向けられたものではなく、中国政府による統制強化」だと指摘する。
ーー中国政府の狙いは?
外交問題などで揉めた時、中国当局はよく「中国の人民が怒っている」と言いますが、ちょっとそれに似ている感じです。大きな意味でこれは「治安維持」なんです。
要するに、服装を画一化したり、宗教の中国化も進められていますが、新疆ウイグル自治区とかチベット、キリスト教の中国化なども習近平政権になってからキーワードになっています。
ちょっと異質なものを全部排除して、思想も含めて全部統一していこう、ということです。
その中でたまたま日本が引っかかりやすいというのは当然あります。ビジュアル的に和服がやり玉に挙げられるということです。
昔から「精神的日本人」という言葉もあって、若い人たちが日本の文化、特にアニメに憧れて日本びいきになることを政府は嫌がり、批判するわけです。
中国国民を団結させるためには、日本は便利な存在でシンボルなんです。これは過去の戦争の経緯があるからそれをうまく使うんです。
中国の内政が厳しい状況になったり、景気が悪かったり不安要素が高まってくると、日本はサンドバッグ的な存在で利用されます。今のような状況では、親日的なものは外交上は良くないとみているわけです。

FNNオンライン「和装も日本アニメも禁止に?『中華民族の精神を損なう』法改正が物議。言論統制を強化する習政権の狙いを専門家が解説」

 かつて、反差別界隈が企画した「東京大行進」というデモがありました。その初回は菅野完さんが主な企画を担当し、スタッフに男組の故高橋直輝さん、木本拓史さん、作家の清義明さん、ウォッチャーから転向した山梨さんなど個性的な人物が揃い、その打上げの様子を伝えたポストから、当時募金を横領していた菅野完さんのポストが完全に止まったことでもお馴染みです。
 この企画の中で特筆すべき出来事がありました。チョゴリを着て企画を楽しもうとした日本人女性に対し、在日コリアンの女性が明らかに不快感を隠さないポストをなしていたのです。自国の民族衣装を着て楽しむ外国人が増えるということは文化への理解が深まって好ましいことであるように感じるのですが、日本人がチョゴリを着ることが不快なのかコリアン以外がチョゴリを着ることが不快なのかわかりませんが、この在日コリアンの女性は作り笑いをしなければならないほど不快であったようなのです。中国のなす法改正とは反対側のケースですが、このニュースで改めて民族と文化に関連するものとして思い出しました。
 本題に戻りましょう。中国大陸は多くの民族がある時は争い、ある時は共住している地です。大陸を支配した国家が都を置くことが多かった中原の地は漢族が多く居住していますし、満州族、チベット族、ウイグル族など著名な民族をはじめとして、回族、カザフ族、キルギス族、タタール族など多くの民族が混在しています。そして、中華民族という民族は歴史上存在したことがありません。

人工民族「中華民族」

 そのような前提があるにもかかわらず、中国がなしていこうとしているのは、中国の多岐多様な民族を中国が作り上げようとしている中華民族として塗り潰すことです。その中華民族として塗り潰されようとしているのは、チベット族やウイグル族など大陸で比較的少数の民族だけでなく、中原に多くの者が生活している漢族も含まれます。しかも、中国大陸の民族はそれぞれそれなりの人口と独自の文化を持っており、日本やロシアにおけるアイヌのように自然となされる同化によって民族の独自性が時代とともに失われていくようなものではないのです。
 そのような国土ですべての民族の多様性を完全に否定する中国は完全に人類の敵となったと言えるでしょう。